No.12 異界の巫女
出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第十二弾!
今回のお題は「薔薇」「大河」「水着」
11/10 お題出される
11/11 なんとなく書きたい場面を作り上げる
11/12 別作品をうp
11/13 うまく浮かばない
11/15 書いていないことを驚き必死に書きはじめる
11/16 全然進まない
11/17 なんとか投稿
非情に難産でした……
「あ、気が付かれました?」
目を覚ました俺の顔をのぞき込んでいたのは、山羊だった。正確には首から上が山羊の男……だと思う人物(?)だ。
見たことの無い飴色の天井に、白い紙で出来た四角形の提灯が下げられている。どっか中華のような……それでいて和風だ。どこだここ? きっと悪い夢だな。もう一眠り……
「ああ、また意識を失われて……仕方ありませんね。このヤスリムカデを鼻から入れて……」
「おいばかやめろ!」
思わず飛び起きた俺に、山羊頭が笑いながら言う。
「いえ、起きてらっしゃると知ってましたから。みなさん似たような反応なさいますし」
「え? んーと?」
「追って説明いたしましょう。まぁ、あなた方の言葉で言うならまさにこうです」
山羊頭が咳払いを一つ。そして、人差し指を立てて俺に言った。
「あなたは異世界に参りました」
その後、色々と聞かされたが、何より俺は目の前で反応が薄い俺の様子に不満を漏らしながら“くねる”山羊の方が、この世界の内容より驚きと気持ち悪さを覚えた。
この世界は、俺らが居る世界と密接に関係した世界で『妖精界』と言われているらしい。あるいは『まほろば』、『仙人界』、『異世界』。様々に呼ばれてはいるが、現実側の人間が迷い込むことは時折有る事らしい。
で、この『妖精界』では人間は珍しい存在らしい。それ故に丁重にもてなされ、特に技術者はそれだけで待遇が良いらしい。もっとも、高校生の俺はなんの技術も無いから一般的な扱い……とはいえ、客人の様な扱いを受けていた。
ご飯には困らないし、寝床もキレイ。服も毎日変えてもらえる。
ご飯はどういうわけかお米と汁物と少々の御飯の御供。非常に日本的だ。
お米もジャポニカ米っていう奴とそっくりで、もちもちしていながら芯がしっかりしている。
汁物は主にお吸い物。微かに貝の香りがするが、種類は何だろう? アサリかハマグリのように思う。微かに甘みを感じるが、出汁が効いていてこれだけで白米が進む。
御飯の御供は様々だ。魚、肉、豆、野菜、練り物から時には果物まで。基本的に鹹い味付けでこれまた白米に合う。微かに香る風味は醤油や味噌……微かながらに酒。やはり日本風だ。どれもおいしい。
服も毎日のようにきれいな物を用意される。赤地に金の刺繍の物、青地に黒と黄色で彩色された物、緑に乳白色を合わせたもこもこした物もあった。そのどれもが肌触りよく、肌を滑る様な感覚で着れる。絹がこういう物であった気がする。
デザインは多少中国かモンゴル風……どことなくやはり和風の香り。帯などはまさに日本の和服の物だと思う。
全体的に華やかでよい香りがする。この匂いはお香だと思う。伽羅だったかがこんな匂いのはずだ。甘いようでいて奥深く、嗅いでいて落ち着き、それでいて心が躍るような香り。きっと、平安の頃と同じく服をお香で燻しているのだろう。……この世界にも服には虫が付くのだろうか?
部屋の内装も豪勢な部屋に通された。飴色の木材で出来た十畳ほどの寝室のようだ。塩のように白い暖炉と、その中でかすかに赤い光を放つ漆黒の木材とが良いコントラストだ。窓は二か所。一方はベランダに通じており、もう一方は部屋から海岸線と地平線を一望できる。目の前のあれは海……いや、潮の香りがしないから河だろうか?
……そもそもこの世界でどれだけ俺の常識が通じるか曖昧な気もしないでもないが。
なにせ、この世界に居る人間はだいたい頭が動物の物だ。生物としての機能もわりとそれに近いらしい。
魚の頭の者は水中で呼吸できるらしく、漁師をしているらしいし(それは倫理的に大丈夫なのか問いたいが、それは聞いてはいけない気がするので聞かないことにした)鳥の頭の者のだいたいがメガネを着用しているのは鳥目なのだろうと思う。
そういえばこの世界で人間は珍しいと言っていたが、珍しすぎないだろうか? 外出の自由にかまけて、例の山羊頭、名前は「スピール」というらしいが、このスピールに付き添ってもらう形で街中を見回しても人は見かけない。むしろ、俺がもの珍しそうに指をさされて時には出会った事を祝福される。和歌とか大声で吟じられた時は正直恥ずかしかった。
あとは、この世界での物も割と不思議な物が多く驚かされた。
曰く「泥水でなければ人間でも息ができる」とか「火は危険なので使わない。発行する石を灯りに使っている」とか。手の込んだファンタジーな気がしてならない。
あと、植物は動物のように行動で来て、水や風も擬人化できるというのも驚きだった。街中を普通に歩いているのにも驚いた。
俺が会ったのは、水が擬人化したものらしく、全身が透明で不定形に揺蕩う女性の様なフォルムの……水だった。しかも子連れで、娘?は人にぶつかり液体に戻ってしまっていたが、その後すぐに人の形に戻り、ぶつかった人に謝っていた。その後、親?である女性に巻き込んでしまったのであろうゴミをすくい取ってもらいながら説教を受け、その親子?は去っていた。非常に人間臭いなと感じた。
だが、いくらなんでも人外しか居ない。一番人に近くても、豚の頭か犬の頭、あるいは……
「なにかお困りで?」
窓の外を眺めてため息をついた俺に、部屋の掃除を終えたスピールが問いかけてくる。
あるいは、山羊……か。人は珍しいとは聞いたが、本当に居ないとは思わなかった。
「いや、特に何も」
スピールは首を傾げて部屋を去ろうとする。だがそこでふと立ち止まり、俺に向きなおって言う。
「ああそうだ。今度お祭りがあるんですよ」
「祭り? どんな?」
「巫女様の祭りです。豊穣を祈って河の神にその肌を触れさせる……ちょっとエロチックな祭りですね」
そう言ってスピールは笑う。俺が真顔なのを見て笑うのを止めて続ける。
「あー、まあ、触らせる、と過去はしていたようですが、今ではしてないようです。あ、ですが華やかですよ。それに人間が大勢来ます。特に今回はナズナ様がいらっしゃるはず。あ、我々の世界でも特に珍しい人間の巫女様です。いかがです?」
「ああ……考えてみるよ。何日後にあるんだい?」
スピールは大きくにやけて言う。
「明日です」
翌朝、昼前から太鼓の音が響き渡り汽笛隊が続き、華やかな花吹雪の中を巨大な黄金で飾られた、2tトラックより巨大な神輿が通る。さながらテーマパークのパレードだが、それよりはるかに規模が大きく、街の連中も花吹雪を巻くことで参加しているようである。街道の両脇では様々な物が人垣をつくり、神輿の上に鎮座する者へ手を振る。どうやら、あれが世にも珍しい人間の巫女らしい。
白粉で顔は白く、赤い髪を後ろで束ね、白い狩衣に身を包んでいるが……女性だ。ボディラインがうっすらとうかがえる。白の狩衣の内側には真紅と群青の文様が浮かび上がっており、胸元には群青の組紐があげまき結びで止めてある。
彼女の両脇には人間の男性が二人、両脇から紙垂に似た物を花序の両肩近くに垂れ下げている。この男性二人も城の狩衣だが、内側は鶯色で無地、彼女の付き人であることを暗に示していた。
俺はその様子を遠巻きに見守りながら見送った。確かに豪華で煌びやか、そしてにぎやかだ。
正直俺は早く祭り会場を後にしたかったが、人混みがすさまじく移動もままならない。なぜ移動したいかというと、俺の恰好に理由がある。
この祭りを見に来た者たちもかなり奇抜なのだが、スピール曰く「人間は目立ってしまうので外見を極力隠すべき」と言われ、山羊用のマスクを俺も着用することになり(顔とマスクの間に布をつめこみ、呼吸のためにストローを口から出している)、その上からフードをかぶり、足元まで覆うマントも着用と俺自身もかなり奇抜な格好だ。息苦しい上に暑苦しい。
そんな事を考えていた時、ふと眼を上げると神輿に乗っている巫女と目が合う。一瞬気のせいかと思ったが、確かに目が合った。そして俺を見て微笑んだ気がした。彼女はすぐに目線を逸らし神輿と共に目の前を通り過ぎる。
その後も多くの神輿が通る。
巫女は様々で、牛、魚、鹿、獅子、梟にシマウマまで居た。そのどれもが様々なデザインの、日本の古風な衣装をまとっている。だがさすがに暑苦しくてそれどころじゃない。俺は何とかして人混みを抜けた。
そんな時、目の前で同じく獣用のマスクをしている人物と目が合った。その人物が言う。声からして女性らしい。
「やっと見つけました。こちらへ。是非あなたとお話ししたいのです」
「あなたは?」
俺の問いにその女性はなにも答えずに先に進む。
「……まず、こちらへ」
そう言って彼女は人ごみから離れ、近場の建物……おそらくホテルの様なものだろうか? その一室へと通される。
その一室で彼女はマスクを取ると、長い赤毛を振り見出して真っ白な肌の少女が現れる。その顔には見覚えがある。あの珍しい人間の巫女、その人だ。
彼女が俺向きなおり言う。
「ごめんなさい。気になったものだから。人間って珍しくて。私はエミーザ」
そういって人間の彼女が笑う。
「いや、俺もこっちにきて初めての人間だ。人間と話せて正直うれしい」
「みんないい人なんだけど、どうしても落ち着かないのよね」
そう言ってまた困ったように笑う彼女に俺は聞いた。
「巫女がここに居ていいのか? まだパレードは続いているようだが?」
「うん。私の神輿は終わり。今日はこの後予定があるの。姉の代役なんだけどね」
「姉? 姉妹で来たのか?」
彼女は首を振って答える。
「いいえ、里親さんのところの……私が厄介になってるところのお姉さんが巫女なのよ。居たでしょう? 牛の巫女、あの人がそう。なんとか神輿には乗ってたけどとても体調が悪いようなの……それでこの後行われる神事を代わりに私がすることになったの。大河に赴いて河の神様にお酒をふるまうのよ」
牛の巫女……とても健康そうだったが、それは言わない方が良いのだろうと咄嗟に理解して口を閉じた。
彼女はそんな俺の反応に気にせず話し続ける。
「できれば、私をお話してくださる? まだ時間はあるから」
「……俺で良ければ。でも他に人間もいたのに」
「ううん。同年代の人って珍しくって。ねぇ、あなたが見てきた元の世界の話とかも聞かせて」
俺は少し悩んだ後、俺の半生とその中で見聞きしてきた事をかいつまんで教えた。
色々と苦労なく生活し、様々な教養を押し付けられてきた。サブカルチャーもまた少々は学ばせてくれる、改めて思うとなかなか良い家だったと思う。
「それじゃあ、お坊ちゃん?」
「まぁ……そうなるか」
彼女は悪戯っぽく聞いてきた。
「それで?」
「……それで?」
彼女は俺に更なる話を要求してきた。結局、俺は幼少の頃の話や両親の話、その仕事を手伝った話、趣味や好きな食べ物の話もした。彼女は淡々と話す俺に相槌を打ち、話をただ聞いてくれた。
今度は俺がこう聞いた。
「それで?」
彼女は疑問に首を傾げた後、言葉の意味を理解して、ああと声を上げた後、彼女は少し黙った後、困ったように笑って言った。
「ごめんなさい。私は物心ついた時にはこっちに居たの」
「そうなのか……すまない」
「ううん。大丈夫。それどころかドキドキするわ。私の知らないことばっかり」
俺はどちらかと言えば箱入りで成長してきた者だ。だからどちらかと言えば俺は世間知らずのはずなんだが……。
俺が更に話を続けようとしたとき、部屋に鷲の頭をした男が入ってきて言う。
「ここに居たのかい? エミーザ」
「ルコル、どうしてここがわかったの?」
「君が居そうな場所を片っ端から来ただけだよ。……おや、珍しい。人間とは」
そう言いながら俺の目の前で巫女に抱き付く鷲頭に俺は軽く会釈をした。そんな俺を無視してルコルと名乗る鷲頭が言う。
「この街は今危険な状態だ。“薔薇”が出た」
「まあ! それは本当ですか?」
疑問を浮かべる俺にルコルは鼻で笑いながら言う。
「おや、人間は“薔薇”も知らないのか」
「……すみません。無知なもので」
「ああ、そうだな」
そんなルコルを窘めることも出来ず、エミーザは俯いた。
そんなエミーザを他所にルコルが言う。
「“薔薇”とは暴走した植物の総称だ。正常な植物のマリアカラスと似た花弁で覆われた人型を取るため薔薇と呼ばれている。こいつは危険だ。人を襲うからな。僕のフィアンセが襲われたら一大事だ」
「ルコル……まだ私たちは婚約段階で……」
「何を恥ずかしがっているんだ。もう結婚したようなものじゃないか」
この光景を見せられる側にもなって欲しい物だが……
俺はその場から離れるため、ドアへ向かって行った。
「では、俺はお邪魔をしないように去ることにします。巫女様、他愛ないお話しにお付き合い合頂き恐縮恐悦でございました」
背後でエミーザが何か言おうとする雰囲気が感じられるが、何も言ってはこなかった。むしろルコルが何か言っていたが……気にするまい。
街に出るとパレードは終わっていて、人々は近くの屋台などに群がり、街全体が賑わっていた。俺を何人かが指さしたりお辞儀をしてくる。それを俺は軽い会釈で答えながら切り抜けた。
スピークの家に戻ろう。俺は特に屋台を覗くでもなくスピークの家へたどり着いた。だが、たどり着くや否や、スピークは青い顔をして現れた。
「ああ! おかえりなさい、怪我はございませんか? 襲われたりやなんかは?」
スピークの慌てぶりに多少面食らったが、先のルコルの話を思い出した。
「“薔薇”というやつか?」
「はい。どうやら“薔薇”は大河に紛れ込んだのではと言われております。まだ噂の段階ですが……。あれは人を、特に人間を襲いますので、何も知らずにそのまま巫女様の神事を覗きに行かれてたらどうしようと……」
「ちょっと待て、聞いてもいいか? 人間を襲う“薔薇”が、大河に居る場合、大河で行われる神事はどうなる?」
「え? いや、巫女様は牛ですから、遠巻きならば襲われないかと……」
俺はスピークに心配するなと言い残してその場を後にし、一路大河へ駆け出した。
夕刻、朱色で世界が塗り込まれ、大河は赤く煌めいている。
その周囲では更に赤い灯火が焚かれ、その中心に狩衣を来た巫女……やはりエミーザが居た。
エミーザが祈りをささげ、周りの者が太鼓をたたく。観衆はその様子を取り囲んでいる。だがそのうちの何人かがざわつき始め、そして大河を指さした。
指さされた大河は大きくうねり、隆起して巨大な人型になる。知らなければこれが河の神かと言いたいところだが、人々のパニックの様子をみるに、どうやらそうではないらしい。
俺は何ができるとも分からなかったが、とにかくエミーザの元へ急いだ。だが、目の前で大河の巨人は群衆へ分け入り、巫女の護衛であろう魚頭が行く手を阻むのも虚しく跳ね除けられる。
近寄ってみると分かるが、その大河の巨人は体の中に大量の花弁を有している。それがとどまることなく流動し、赤い夕陽がその巨体を突き抜けて赤黒い影と光を乱反射する、奇怪な巨人へとなっていた。
そして、護衛を弾き巨人は巫女を握り込み、飲み込んでしまう。エミーザは泳げないのか苦しがり、口から大きな泡をいくつも吐き出していく。
そんな状態のエミーザを体に入れたまま、巨人は踵を返して大河の中へ潜って行ってしまう。
護衛の魚頭たちはみな一様に持ち場も使命も投げ出して河から離れていく。
それを見て俺は河に踏み入ろうとした。その時、俺は河から声をかけられた。
「お待ち下さい。そのままの服装で水の中に入ってはいけません」
「あんたはたしか……」
河の水の一部が人間台の大きさに隆起し、透明な女性の姿を造りだす。透明な体は今は夕日で赤く乱反射し、一種の芸術作品の様だった。と、そんな事を考えてる暇はない。
「服がダメなのか? ならばどうすれば?」
「水着を、水に潜るための服装を。さすれば、我々水があなたの味方となります」
「ふむ……」
困った。水着を持って来ては居ないんだが……。と思っていると背後から息を切らしながらスピールが走ってくる。俺の前で膝に手を置きながら前かがみになり言う。
「お、お客人……これ……必要でしょう?」
そう言って差し出してきたのは、まぎれも無く水着だった。またしても手触りが良い。これも絹のようだ。紺色に薄紫の彩色が美しい……じゃなく、着替えなければ。俺はさっそく自分のシャツを脱ぎ捨てはじめる。それをスピールが咄嗟に拾い上げ、俺の体を隠してくれる。
「ちょ、ちょっと! さすがに怒られますって」
「人命優先だ」
俺は着替え終わるや否やすぐに河に飛び込んだ。
耳元で“河”の声がする。
「本来この世界の水は肺に入れても呼吸ができます。しかし“薔薇”に浸食された物は別です。だから、あの巫女様は溺れてしまった。護衛達も溺れることを怖がって来ません。……息を長く止めるのは得意ですか? 1分ほど止めていただきますが?」
その問いかけに俺は泳ぎながら頷いた。
「解りました。では、水があなたを導きます。……“薔薇”は悲しい物です。“薔薇”が過ちを犯す前に、どうぞ巫女様を……」
俺は漠然と“薔薇”もまた、“河”などと同じ存在なのだろうと気付いた。
いや、正しくは目の前で花弁に追われた人型が話しかけてきたからこそ気づいた。その人型は言う。
「何しに来た、人間! また我々の環境を壊す気か!」
俺は少ない酸素を使って自分の声で話しかけた。空気中ほどではないにしろ、音は伝わるはずだ。
「この娘を助けに来た」
「うるさい! 人間は私たちの住処を汚した。汚し続けてる! そんなの許せない。自分たちの住みよいように変えるなんて許せない!」
やはり“薔薇”も心があるのだと、俺は確信を得た。だが流暢に話していられない。俺はエミーザを捉まえ、その場を後にしようとした。だが多くの花弁が行く手を遮る。
「待て! その女もお前も殺す! お前ら人間を許さない!」
俺はその花弁を押しのけ乍ら進む。“河”がある程度守ってくれているが、俺やエミーザの体を花弁が傷つける。だが何とか水中から飛び出すことに成功する。
ぐったりとしたエミーザを他の者や“河”に任せて、俺は“薔薇”に向きなおった。
「環境に手を加えることの何が悪い!」
「な、おまえ……何を言っている。悪いに決まってるじゃないか、自然に反する……」
「鹿とて増えすぎれば森を絶やす勢いで樹の皮を食べるぞ」
「それは……」
「狼とて増えすぎれば他の生き物を殺し続けるだろう。人間だけが自然云々というのは、いささか押しつけがましいと俺は思う」
「う、うるさい!」
“薔薇”の混じった水の巨人が拳を大きく振り上げる。
俺はそれに対して続けて言う。
「だが、そこで加減をしたり、自然の再生に手を貸せるのも俺たち人間だ。人間の技術と頭脳だ」
巨人の動きが止まった。
「頼む。俺たちの未熟さは今に始まった話ではない。だが……待っていてほしい。お前の様なものがもう二度と出ないように、人間同士で話し合ってみることにする」
巨人は徐々に縮小化しながら、俺に言った。
「良いだろう……今しばらく、おまえの言葉を信じるぞ。人間……」
気が付けば“薔薇”はもうどこにも居なかった。
その後発覚したことだが、ルコルはエミーザの牛姉と不倫関係にあり、あの時も逢瀬を図ろうとしていたらしい。婚約者の一大事にそんなことをしていたのが発覚し、鷲頭は婚約解消されたようだ。
そして俺は……
病室のドアを開け、花瓶に花を生ける。ベッドで寝ているエミーザに対し、俺は今日も話をする。今日で祭りから約三日になる。医者の話ではまだ目覚めないとの話だが、それでもかまわない。俺は人間と話がしたかった。
今回は雰囲気重視でした
兎に角綺麗な描写を心掛けましたがいかがでしょうか?
如何せん
話しの流れがうまく文章化できず苦労しました
なんだろう
この説明不足感……
話しが唐突に跳躍してしまってる感じがしてなんとも不満を感じてしまう……
うーん
機会があったら書き直したくなる作品な気もします
ともあれ
ここまでお読みいただきありがとうございます