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休息

異丹治の地下牢から脱出。

コテージ跡でミモリのおもてなしを受けることに。


「よし疲れたら寝てもいいぞ? 少なくても今日は泊って行くんだ」

あれほど厳しかったミモリも表情を和らげる。

どうやらもう本当に追っ手から逃げ切ったらしい。危険はもうないと。


ふう…… これでようやく落ち着けるかな。

まさか招待されてすぐに閉じ込められるとは思ってもみなかったからな。

突然の地下牢生活で疲弊し身も心もボロボロ。

ここに来てようやく今ある現実を理解してるところ。

どうにか恐怖を感じないように我慢していた。でも落ち着くとぶり返す。

怖い…… 何て恐ろしいのか?


ダメだ…… 俺がこんなことでどうする? 強い心を持たなければ。

俺には陸も希ちゃんもアイミもいる。俺がしっかりしないでどうする? 

拷問なんて怖くない。痛くない。痛く…… 嫌だ!

うっかり想像してしまうともう止まらない。やめればいいのにやめられない。


「大丈夫? 」

そう言って抱き着いて来るアイミ。こんな時ばかりは嬉しく思う。

アイミの積極性が俺の心を癒す。本人にその気はまったくないんだろうが。

もはやなくてはならない存在。それは希ちゃんも陸もそうだ。

でもだからこそ決断しなければならない。

これ以上は付き合わせてはいけない。


コテージで一休み。

それにしてもまた再びここに来るとは思わなかったな。

ミモリだってまだ全然信用できない。


「あの…… ミモリさん。どうして私たちを助けてくれたんです? 」

希ちゃんが元気を取り戻し積極的に話を聞く。俺は大人しく耳を傾けることに。

「それは…… 無関係な者を巻き込んではいけない。特に君たちはただの観光客。

まだ子供で無害な君たちを助けるのは当然だろう? 一体何を勘違いしたんだか」

ミモリはもっともらしいことを言う。しかしそのためだけに救世主を演じるのか?

俺たちを匿ってはここでは生きて行けない。それくらい俺にでも分かる。

実際彼もそう言っていた。彼には何らかの思惑がある。だとしたら一体何だ?

ただ宝に引き寄せられたと言う訳でもなさそうだし。


ミモリだけは測り切れない。他の集落の者は単純でただ味方か敵かの違い。

そもそもよそ者が土足で踏み荒らせばいい気分はしないだろう。

それはどの世界でも多少の差はあれど変わりはしない。

俺たちがただ遊びに来ただけなら歓迎されただろう。

しかしついチュウシンコウを口にしてしまったためにこんな酷い目に。

チュウシンコウとは一体? お宝とどうつながるのか?

謎は深まるばかり。


わざわざ五年ぶりに訪れた意味はあった。若干後悔してるが間違っていなかった。

そう俺は間違っていなかったんだ!

改めてチュウシンコウとミライについてじっくり考える時。


「そうですか…… ありがとうございます。でもそれだけではないんでしょう?」

希ちゃんは鋭い。

「ははは…… 何のことだか分からないな。そんなことよりも怪我はないか? 」

「大丈夫っすよミモリさん。それより何か食わせてくださいよ」

陸は遠慮せずに食事を要求する。せっかく良いところだったのに仕方ない奴。

「そうだったな。俺は料理が得意じゃないんで冷凍食品とカップ麺でいいか? 」

ミモリはここで長いのだがコテージのオーナーでも管理人でもない。

ただ居ついたものだからその手のことは苦手としてる。


「ええ? 仕方ないな」

生意気を言うのはアイミ。いくら昼食べたとは言え体が弱っている。

一日や二日ならレトルトや冷凍食品で凌ぐのもあり。


陸はストックされていたカップ麺を二つ。

アイミはカップ麺と冷凍食品とカット野菜を。

希ちゃんは食欲がないとお菓子とカット野菜だけ。

俺はカップ麺とアイスとチョコを。


「美味いよこれ。やっぱりラーメンもいいけど焼きそばも悪くないな」

大喜びの陸。大げさな奴だな。

「ほらコーヒーで体を温めな」

真夏とは言えクーラーもある。ここはホットで。

「皆よく食べたな。デザートもあるぞ。鶴さんのお団子だ」

鶴さんとはミモリに良くしてくれるお婆さんで週に一度はおすそ分けを頂くそう。

どうも鶴さんはいろいろ面倒見の良い方で。気にかけてもらってるらしい。

ただ爺さんの方はそうでもなく隠れていろいろ世話してもらってるのだとか。

そのお爺さんも去年他界し今は離れたところで一人っきりらしい。


集落の者は優しく穏やかで活動的だがよそ者には厳しいと言うより受け付けない。

これはミモリが来た頃から変わらない。

どうやら俺たち家族が遊びに来た頃も同じだったそう。

父さんは大歓迎。母さんはあまりいい扱いを受けてなかったと語ってくれた。

ミモリは俺の幼い頃をよく知る人物。何だか嬉しいような恥ずかしいよな。

昔の俺を知ってるのはやっぱり何だか照れくさい。


「よし晩はソバ屋にでも行くか? 」

ミモリは集落に一軒あるソバ屋にたまに行くそう。

俺もお供したい。でも見つかってはただでは済まない。だから遠慮することに。

「まああのソバ屋は馴染みだから黙ってくれるとは思うけど確かに危険か? 

だったら晩飯も同じになるが我慢しろ」

「分かってるって」

ミモリは買い物に行くと言って出て行った。


こうしてようやく今後のことを話し合える。

ミモリは仲間で恩人でもあるが信じ切ってはダメ。彼が裏切らない保証もない。

ただあえて地下牢から助け出したのだからそれはまずないのだが。


安全が確保され体が休まり心も落ち着いたところで今後を話し合うことに。


                  続く

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