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救世主ミモリとコテージへ

ふうう…… 暑いな。何て暑いんだ?

真夏の猛烈な日差しが容赦なく振り注ぐ。

ただ暑いだけでなく喉は乾くし眠いし痒い。それに加えて眩しい。

薄暗い地下牢にいたものだから眩しくて堪らない。

久しぶりの外。まだ二十四時間経ってないのに随分長くいた気がする。


屋敷の近くの草むらで身を隠すこと十五分。

その間不安で押しつぶされそうになりながらもどうにか正気を保つようにした。

ぐったりしてる陸を支えていつでも逃走できるように準備は怠らない。

ただこの集落で信用できるのは今回助けてもらった彼ぐらいなもの。

父さんだって隣のおじさんだって当てにはならない。

この集落には集落の掟があるのだから。誰だってそれに縛られて生きている。


「おい! おーい! 聞こえるか? 海? 」

救世主が探しにやって来る。どうやら彼も無事に脱出したらしい。

この分だと追っ手も撒いたのだろう。

「待ってました! 」

目を覚ました復活の陸が騒ぎ立てる。

「おいダメだって…… ここでは誰も当てにできない。

いいか? すべて信用するな。彼は救世主かもしれないが味方とは限らない」

一応は釘を刺しておく。

「そうね。ここは慎重になりましょう」

希ちゃんも賛成してくれる。何か思惑があるのかもしれないしな。


「おーい! いるんだろ? これ以上手間を掛けさせるな! 」

救世主で命の恩人にそう言われては大人しく出て行くしかない。

ガサガサと音を立てる。

「おお凄いぞ! 優秀だなお前たち」

叫んで逃げて捕まるのがオチだと。俺たちは冷静で賢いと褒めてくれた。

そんなに評価されると何だか嬉しい気もする。

「よしついてこい! いいか騒がずにゆっくり俺の言うことを聞くんだ。

そうすればきっと逃げ切れる」


あれ…… この男どこかで? 救世主の顔に見覚えがある。

地下牢では暗くて詳しくは確認できなかった。

ただ誰であれ俺たちを助けた救世主だからな。

脱出の時も帽子を目深にかぶっていてマスクまでしていた。

俺たちも同じように帽子にマスクにつなぎと作業員を装った。

似合わなそうなアイミを荷台に乗せ二人で突破。男は男で強行突破した。

それが今回の脱出劇の全容。と言ってもすべて男の指示で動いてたに過ぎないが。

壮大な救出劇が成功したのも男の的確な指示と判断があったからこそ。


「では改めて自己紹介するかな。海は当然で希ちゃんは三回目だよな。

自分はミモリだ。もちろん本名じゃない。お前たちを見守る意味で付けた偽名さ。

そこのコテージの管理を任されている。よろしくなお二人さん」

陸とアイミに改めて紹介する。

集落到着時に一度顔を合わせてるが陸などきっと忘れてるだろう。


「お前らさ…… てっきり二人で行動してると思って……

そしたら三人ぐらいって言うだろ? ああこれは仲間からの情報ね。

そう言えば最初に会った時に余計なのがいたなって思い出した。

でも計画を変更する暇がなかったんでいろいろ工作したって訳だ」

「いや…… 」

何て答えればいいのか迷う。多すぎてごめんなさいはおかしいよな?


「まあ済んだことだからな。それよりもコテージに行くぞ」

誰にも気付かれないように人通りの少ない裏道を通ってコテージへ。

現在祭りの関係で集落の者は一か所に集まってる。

だから遭遇確率は高くないし見つかることもないだろう。

ただはぐれ者から情報が渡る可能性がある。

コテージに逃げたと知られたら厄介だ。


「よし。ここを抜ければ山入り口。コテージも目の前だ」

そう言って姿勢を低く保つように指示する。

ただ今のところ人を見かけない。元々昼間でも人気はなさそう。

見られてるとしたらかなり不自然な格好だろうな。言い訳できないだろうな。

堂々と歩いた方がいいのでは?


「ほら従え! バレたら面倒だ。辛くても我慢しろ! 」

男は少々荒っぽく命令する。

「しかし…… 」

「これはお前たちのため。協力したと知れたら俺だって追い出されちまう」

そう言われては仕方ない。姿勢を低くして歩く。前進あるのみ。


「疲れた! もう嫌! 」

アイミは文句を言う。どうやら身長も高くスタイルがいいから苦しいのだろう。

それに対して陸は足が短く慣れてるから文句一つ言わず楽しんでさえいる。

俺も似たようなもの。これくらいの刺激が冒険にはつきもの。

もっと激しくてもいいかなと思ってるが地下牢の経験もあるかなら。

まだ二十四時間経ってないが三日も四日もいたような気がする。


「よしストップ! ここまで来れば気づかれる心配はないさ。

とは言え複数で入るのはやはり危険。発見されるリスクが高い。

ここは五分おきに一人ずつ入って来るように」

相当警戒してるな。気持ちは痛いほど分かるがもう限界。

一刻も早く安全なところで寛ぎたい。ずっと緊張しっぱなしだったからな。


「よしまずは俺から。続けて陸だっけかそして希ちゃん。

その後にアイミちゃん。最後は海だ」

こうしてコテージ跡に潜伏することになった。

ここからなら最悪そのまま山を登って脱出すればその日のうちに家に帰れると。


二十分経ってようやく室内へ。

こうして地下牢からの脱出は見事成功。

全員怪我もなく無事に安全な場所へ。

                  続く

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