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救世主?

やはりアイミでも無理らしい。

「中学では何の部活に? 」

「テニス部だよ。サマー部やめて一緒にやろうか? 」

「遠慮する。一人で勝手にどうぞ。それで希ちゃんは? 」

「ごめんなさい。私もデブデブで」

その全体的に丸っこい体形がデブデブ? いや標準よりは小柄で痩せてるだろう?

男の俺には本気なのか謙遜なのか判断がつかない。もしかしてこの体形が嫌なの?

コンプレックスでもあるまいし。

まさか冗談とか? それでもデブデブはないよな。 


「そんなことないよ。かわいらしいよ。いや実際かわいいよ」

念のためにフォローしておく。ショックを受けても困るから。

「ありがとう。でも気にしてないんだ…… 」

希ちゃんは体重や体形に特別こだわりがある訳ではないらしい。

自然と今の体形になったそう。

そうするとスタイル抜群のアイミ以外特に気にしてないのか。 


うわ…… なぜかアイミが睨んでる。 

「私には? 希だけ…… 」

「うん。スタイル抜群だね。さすがテニスをやっていただけあるな。憧れる」

そう関心して見せるがそれでは納得してくれない。

「それだけ? 」

「かわいいよ」

「嘘? そこまではっきり言わなくても…… スタイル抜群でかわいいだなんて」

大喜びのアイミ。しかし無理やりだろうが。言わせてるじゃないか。

「うん。俺もかわいいと思うぜ」

陸まで煽てたらこいつは……


「ごめんなさい。でも私は彼のもの」

そう言って抱き着いてきやがった。

「おいやめろって! 暑苦しい。そう言うのは夏じゃなくて冬にでも…… 」

まずい。余計な一言だった。


希ちゃんの手前もありアイミが求めようと拒絶する。

でもストーカー気質のアイミはそんなのお構いなし。

どれだけ文句言おうと超プラス思考のアイミの前ではどうにもならない。

もしかして俺って拒絶してるつもりでも心の奥では受け入れてるのかな?

スタイル抜群で顔も悪くない。俺にはもったいない女の子。

グイグイ来るアイミにドンドン惹かれている自分がいる。


俺にはその手の奴が寄って来るんだよね。陸がいい例。

勝手に懐かれていつの間にか仲良くなっているパターン。

うん。これはお友だちだな。親友だな。そして仲間だ。

だから恋愛感情とかではなくただ隣にいてくれると助かる存在。

それ以上に迷惑を掛ける存在ではあるが。


ともかく俺のためにこんな山奥の集落まで。感謝の気持ちはある。

だからアイミにしろ陸にしろ厳しくできずについ甘やかしてしまう。

特にここは隔絶された集落でその上囚われてるのだから。

なるべく仲良く冷静に。皆の力を合わせて乗り切る。それが冒険であり旅だろう。


「ごめんアイミ。ちょっと言い過ぎた」

「ううん。そうだよね…… クリスマスにでも」

「いや…… 興味ないし」

「だったらお正月はいいでしょう? 」

我がままを言う。これ以上長引かれても困るので頷く。でも決して言葉にしない。

と言うかここを抜け出さない限りクリスマスも正月も冬だってない。

それを理解してるのかな? 頭悪いからなきっと無理だろうな。


アイミといつの間にか良い感じになったので希ちゃんの顔がどうしても見づらい。

いや違う違う。俺はミライだけ。希ちゃんは関係ない。

愛も夢も希望も捨てて明日に生きる。それが俺の生き様さ。

そんな風に格好をつけてると足音が。


まさかもう戻ってきた? しかし三十分と経ってないはずだが?

それにしてもあまりに早い。確か主人の異丹治は祭りに出掛けてるはず。

昨日も祭りの準備で忙しくしていた。もう報告を済ました?


「ねえ誰か来る」

アイミもすぐに感じ取る。

まさか悪ふざけに気づいた男が戻って来たのか?

それだと相当まずいよな。追及されてしまう。一気に追い込まれる。

子供のちょっとしたイタズラだと笑って許してくれるはずない。

さあここからが本当の勝負の時。皆で力を合わせるしかない。


カンカン

カンカン

まるで俺たちを試すかのようにわざと強くはっきりと音を立てる。

まさか現在地を知るため? しかし閉じ込めた張本人がすることか?

足音を派手に立て手すりを叩く。それを何度か繰り返す。

まさか恐怖を与えるためにあえてやってる?


「おいふざけるな! 何がしたい? 」

陸が反応してしまう。

「ちょっとダメだってば」

アイミは冷静だが陸を抑えられない。

どうせ逃げも隠れもしない。ただ閉じ込められてるだけ。


「もしかして…… 」

希ちゃんが閃いたらしい。しかしこれは決して愉快なものではなさそう。

「何だって言うのよ希? はっきりお願い! 」

恐怖からかアイミはお願いと言うよりは強制しているようにも。

緊張からか汗が止まらない。それは皆同じだ。


「もう下ったのかもしれない」

「何が? お腹でも下った? 」

こんな時でも陸はふざけて笑いを取ろうとする。ただ誰も笑ってないが。

「処刑命令でしょうね」

希ちゃんは無表情でつぶやく。

たぶんそうだろうけど俺は認めない。絶対に最期まで諦めない。

ここでやられて堪るか。俺は何としてもミライに会いに行くんだ。


「そうでしょう? あれだけふざけた真似されたら私だって許せないもの」

希ちゃんは相手の立場になって考えろと言う。しかしそれでも処刑するか?

俺たちはまだ子供。高校生だぞ。

「関係ない。たぶん邪魔者はいずれ消すつもりだったんだと思う」

「あの…… ただ思っただけで何も言ってないんですけど? 心が読めるの? 」

「それは模範解答だから。私だってさすがに約束は守ると思ってた。

でも無事に帰すつもりがないのは事実。その壺を見て。あれが何だか分かる? 」

暗くてよく見えないが隣の現在使われてない牢には確かに壺が。そこには何かが。

「たぶん骨でしょうね。後は想像するしかない。なぜここに骨があるのか? 」

希ちゃんの観察眼の鋭さに驚かされる。俺はそこまで気が回らなかった。


「はい正解! このまま行けばお前たちは一週間でお陀仏だな」

男が姿を見せる。どうやら足音の正体は彼のよう。


              続く

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