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いたずら

地下牢。

拷問をちらつかせつつ昼飯とお宝の情報の交換を持ちかける食えない男。

「おいそれで何を知ってる? 」

「そうだな。デザートがあるといいんだけどな。うん美味い」

飯をがっつきながら男をからかう陸。

「ふざけやがって! 今すぐ教えろ! 」

らしくなく興奮気味の世話係。


腹を満たし余裕のある囚人と交換条件として昼飯を与えた愚かな管理人。

圧倒的に不利なのは俺たちの方だが焦る気持ちもよく分かる。

とは言え食事提供は人道的にも当たり前のこと。

それに条件を付けるのは間違っている。

ただここは山奥の集落だからそんな常識は通用しない。


「これはさっき分かったこと。財宝に繋がる暗号を解読した。その答えは…… 」

相手を焦らし惹きつけるだけ惹きつけて冷静さを失わせ大した情報を与えない。

これが高度交渉術だがそう簡単ではないし提供できるものは提供したい気持ちも。

ただ異丹治にせよこの男にしろ俺たちが財宝に詳しいと誤解している。

そこが大きな勘違いと言うか隔たり。


「答えは何だ? 教えろ! 早くしろ! 」

世話係はどんどん追い詰められ強硬手段も辞さない。脅して喋らせようとする。

「分かったよ。『チュウシンコウ』がその暗号だ。

これが解ければ恐らく財宝にグッと近づくことになる」

ついに敵に極秘情報を漏らす。

これは一種の賭け。これだけではたぶん財宝にも約束の場所にたどり着けない。

後はこのことに詳しい専門家にでも当たるしかない。


「よし昼飯ついでにデザートもを食わせてやる」

交渉成立。これでどうにか今日は乗り切れそうだ。

でもまだ危機は脱せてない。

「食ったら寝てろ! 早くご主人様に知らせなくてはな」

「ちょっと待って。世話係でしょう? もう少し構ってくれてもいいだろう? 」

しつこくする。そうするとどうなるか?

「うるさい! こっちはお前らと違って暇じゃない! すぐに知らせに行くんだ。

大人しくここで留守番でもしてろ! 」

そう言って走って行ってしまった。

本当に大人げないんだから。怒りっぽいのは爺の証拠だぞ。


どうやらこの屋敷には世話係と数名の奉公人しかいないのだろう。

異丹治のカリスマに惚れて忠誠を誓った本物ではなくただの雑用係。

彼らも恐らく命令でしか動かないタイプ。

脱出の時には邪魔になることはまずないだろう。

もちろん侮っては痛い目を見るので慎重に脱出すべきだろうが。

ただ牢を抜ければ屋敷への侵入は不可能でも脱出は可能。

それだけでも希望が持てる。


「ふふふ…… あの人ってばさ…… 」

我慢できずに笑いだすアイミ。陸もたまらずに笑い転げる。

「おい聞こえるって。急ぐぞ! 」

問題はこの地下牢からどう脱出するかだが……

思いつくのは叩き割るぐらい。それには何年掛かるやら。鍵があればいいんだが。

どうせ管理人も不在なんだしこの際開けっ放しで行ってくれよな。

急病人にどう対処する気だ? まさか見殺しにするつもりか?


金属製のスプーンとフォークでガンガンやってもびくともしない。

男が戻ってくるのは早くても二時間後。遅くても夕食には姿を見せるだろう。

監視体制は厳しくはない。

まだガキだと思って凶器や脱出に使えそうなものを回収せずにそのまま。

それが命取りになるとも知らずに。


「しかしアホだろあいつ? チュウシンコウ探してて目を付けられたんだから」

陸はようやく笑い終わると再び含み笑いから大笑い。その繰り返し。

笑い過ぎだって? 少しは手伝えよな。

「そうそう。チュウシンコウですとご主人様に伝えるその顔想像するだけで……」

アイミも止まらない。

「ああ。絶対にお仕置きを喰らうよな。でも待てよ……俺たちまずくないか? 」

ようやく気づいたらしい陸。確かにもし怒り爆発で戻って来たら何されることか。

少なくても晩御飯は抜きだろうな。一日経っても恨みが消えることもない。

だってコケにされたんだからさ。恨みはそれは恐ろしいものだろう。

「大丈夫でしょう? そうしたらとっておきのを教えてあげればいいんだって」

大人と田舎を馬鹿にするアイミ。捕まった憂さ晴らしをしている。

それにしても男が言っていた恥ずかしい系の拷問とはどんなものだろうか?

想像もつかない。とは言え拷問されるような失態は避けねばならない。


ガンガン

ガンガン

「どうしたさっきから無口だなお前? ガンガン響くんだよな」

「うるさい! いいからお前たちも手伝え! 」

「無理でしょう? ここから抜けるには鍵がないと…… 」

よく分かってるじゃないかアイミは。恐らくそのカギはあの男のポケットの中。


そう一か月はかかるだろうな。無駄なことだと思ってる。

しかし絶対に出すとは言ってない。このまま捕まっていては危険。

自ら脱出する術を持っておかなければ最悪餓死させられる。

そして集落の隅の墓地で永眠する羽目になる。想像しただけで恐ろしいこと。


「頑張れ! 俺たちは他の方法を考えるよ」

そう言って目を閉じる。どうせ眠くなったから眠るんだろう?

人にやらせるんだから。少しは手伝えっての。まだ危機感がないらしい。

「希ちゃんどうしよう? 」

こういう時は皆の力を合わせる。そうすれば不可能だって可能になる。

「だったら一つだけ。このスペースを抜けれないかな? 」

「おおそれはいい考えじゃん希。ほらそこのやってみなさい」

アイミが陸を駆り立てる。

すると奴もやる気満々。しかし当然のことながら抜けられない。

肩がつっかえてどうしても抜けない。そのうち嵌りそうになる。


「待て! アイミ交代だ」

渋々従うがいくら細身だとしても抜けられない。

スラっとしてるが見た目よりも筋肉質なのかもしれないな。



                続く

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