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拷問メニュー

地下牢にて現在脱出計画立案中。

脱出にはやはり仮病が一番。

痛がってる振りをすれば相手にも隙ができるはず。

問題は誰が演じるかだ。

陸やアイミでは難しいので希ちゃん…… やっぱり俺だよな。

お腹も痛くなったことだしちょうどいい。


「うるさいぞお前ら! 静かにできないのか? 」

世話係が大声で制止。

上から文句ばかり。頭には来るがチャンスだ。さあ自然に自然に。

「は…… 腹が! イタタタ…… 」

「うるせいよ! 閉じ込めておいて何を抜かす! 」

陸は怖いものなし。せっかくの腹痛の演技が搔き消されてしまう。

分かっていたこととは言え状況判断ができてないらしい。

これは失敗したかな? 陸にだけでもきちんと作戦を伝えておくべきだった。

それでも我慢できずにあるいは反射的に暴言を吐く。それが奴ではあるが。


「いいか静かにしないと本当に危害を加えることになるぞ? 」

脅しを掛ける世話係。すべては異丹治とこの男の気分次第。

これ以上刺激すれば本気で拷問しかねない。

「まさか俺たちを拷問にかける気か? ムチ打ちだけはやめてくれ。頼む! 」

つい恐怖から口に出てしまう。

どんなにやせ我慢しても怖いものは怖いし痛いものは痛い。

「ふふふ…… ムチ打ちか? それもいいかもしれないな。

しかし生爪剥がしなどいかがかな? 一人三枚ずつぐらいがいいだろう」

拷問メニューを考えるイカレタ拷問狂。さすがは異丹治の右腕。

どうやら思った以上に経験豊富らしい。これはまずいぞ。


「いえ違うんです。この人ムチ打ちされたいだけなんです」

「そうなんだ。特にきれいなお姉さんから」

とんでもないことを言うアイミに合わせる。それが男と言うものだろう。

もちろん俺にそんな趣味はない。だって俺まだ高校生だから。

「どっちでもいい。それよりも生爪剥がしだが。どうなんだ? 」

「それは…… 嫌に決まってるだろう! 」

つい本音が。ここは喜ぶべきなのにそれができずに嫌がってしまう。

「ははは! 冗談だ冗談。言うことを聞かなければ最終的にはやるさ。

でも痛い系よりも恥ずかしい系だろうな。何をするかはその時までのお楽しみ」


「ふざけるなこの野郎! 」

我慢しきれずに陸が吠えてしまう。

「何だその態度は? せっかく昼飯を持ってきてやったのにいらないんだな? 」

世話係が言うように美味そうな匂いを漂わせた昼食がお目見えに。


目の前に置いて戻ろうとする男。

ここからではどんなに手を伸ばしても届かない。

あともう少し。長い棒でもあれば引っ張って来れるのに。

悔しいがあと少しのところでお預けを喰らう。

まさか匂いだけで我慢しろと言うのか?

それこそ拷問。人間のすることじゃない。


そんな刹那ミライを思い浮かべる。

五年前の彼女も同じように弁当を忘れた俺を無視し勝手に一人だけで食べていた。

あれは美味そうだった。確かサンドイッチだと思ったが。

でも不思議なんだよな。匂いはまったく。草や土の臭いに掻き消されたか?

あるいは風上だったか? それだと匂いは漂ってこない訳で。

あの時は美味しそうな見た目だったが今みたいに匂いに釣られることはなかった。

当時だって腹がペコペコだったはずなのに。おかしなこともある。


「うおおお! 食わせろ! 食わせろ! 」

限界の陸はもはや人間をやめてしまっている。ただの餓鬼だ。

近づいたら俺まで食われそうな勢い。ここはどうにかしないとな。

「待ってくれ! 俺たちが悪かった! だから…… 」

謝罪の言葉を述べると意外にもあっさり許しが出る。


「我々も鬼ではない。用意はしてある。だがタダと言う訳にはな」

何と昼飯の代わりに財宝について知ってることを一つ話せと。

しかし財宝については俺たちは本当に何も知らない。

陸にしろアイミにしろただのハッタリ。

それを真に受けて新情報を得ようとするとは何て間抜けなのか。

とは言え追い込まれていくのはこちら側。

言わなければ拷問を加えられるだけ。でも知らない以上無理だ。

これでは拷問され続けることになる。

そして精神を病んでしまい廃人となるだろう。

それは俺だけではない。陸もアイミも希ちゃんもだ。

ないものを得ようとすればどんどん拷問はエスカレートしていくに決まってる。

果たして俺たちは耐えられるのか?


ただこれは逆にチャンスかもしれない。

「教えてもいいがここから出してくれないと」

再び交渉を開始する。

「ははは…… 何度も懲りない奴らめ。立場を弁えろ! 」

一貫して交換条件を呑もうとしない男。圧倒的に優位である以上仕方ないか。


「あなた主人に捨てられるわよ」

希ちゃんが揺さぶる。うまいが逆鱗に触れたらどうする? もう食糧も尽きるぞ?

「異丹治様はそのようなお方ではない」

「どうかしら。これ以上宝について聞き出せなければどうなるでしょうね」

それは我々も同じこと。もしこれ以上粘れば容赦なく拷問されかねない。

「ふん。お前たちだってそうだろうが! 」

「確かにそうですけど。まさか私たちと心中するつもりなの? 」

「うわ…… それはまずいよ希ちゃん。心中を使ったらバレるって」

陸は焦って希ちゃんを止めるが知ったところで大きく進展するとは思えない。


「おいお前らやっぱり何か隠してるな? 早く言え! 」

「だったらそれを寄越しなさいよ! 」

陸に続きアイミも限界。飛び掛かる寸前。


「ほらよ」

こうしてどうにか昼飯にありつけた。

残飯だがそれでもご馳走はご馳走だ。


                 続く

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