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紅心中

地下牢生活二日目。

女子二人が着替え中に振り返り覗く形となってしまった不運な陸。

そのことをアイミにしつこく咎められたことで対立。不穏な空気に。

それでもどうにか二人を仲直りさせ事なきを得る。


「おい! 湿っぽいぞ! 漏らしたのか? 」

「あんたじゃない! ふざけないでよね! 」

「冷たいのが悪いんだろ? 」

「よく言うわ! 手を洗ってないでしょう? 臭うんだからやめてよね! 」

再び険悪な雰囲気に。


仕方なく希ちゃんが間に入る。

「はい喧嘩はお終い! 陸君は何か分かったんでしょう? 」

アイミは分からないが陸は希ちゃんでどうにかなる。そう言う単純な男だ。

逆に言えば希ちゃんでもどうにもならなくなったら危険水域。逃げるしかない。

「へへへ…… ちょっとだけだよ」

デレデレしてもったいぶる。


陸にしろアイミにしろ財宝の話はただのハッタリでまったくのでたらめらしい。

あれだけ強く出たのにまったくのホラとは恐れ入るぜ。

「ほらこれなら分かるんじゃないかな? 」

陸は希ちゃんに例の合言葉を見せて説明する。


『中心紅』


「海君これで本当に合ってるの? 」

確認を怠らないのが希ちゃんの凄いところ。常に冷静だ。

「ああ漢字はこれでいいと思う。今朝の夢ですっかり思い出したんだ。

今まで何でこんな大事なイメージを思い出せなかったのか不思議なくらい」

「中心紅? 漢字に直しても俺には意味が…… 」

陸はまだたどり着けてない。希ちゃんはどうか?

「そんなことないよ。たぶん何らかの暗号だから。

たぶん言葉を入れ替えるアナグラムにすれば…… 」

自信ありの希ちゃん。実は俺もそんな感じがしていた。だが自信はなかった。

ここまで行けば解決も時間の問題だろう。

後は恐れず立ち向かって決して諦めないこと。それがとても大事。


「アナグラム? 俺たちには難しいような…… 」

「待って! そんな難しくない。たぶんこれで合ってると思う」

ついに閃いた希ちゃんはペンと紙を用意するように指示する。


『中心紅』を前から読む。

逆に後ろから読んだらどうなるか?

『紅心中』となる。

これこそが俺が見た演舞の本当のタイトル。


だからと言って決定的な何かになるのではない。

とりあえず引っ掛かっていた疑問を解消できたことに感謝。

「昔の人は左から右にではなく右から左に書いていたの知らない? 

確か昭和の頃にはもう現代の左から右に変わっていたはず。

だから大正あるいはそれより前までは右から左に書くのが一般的だった」

正確なことは分からないけれどと補足を忘れない希ちゃん。

「ああ…… あったなそう言えば古い看板。タバコ屋とか映画館とかに」

陸も頷く。

そうなのか? 俺は地元以外にあまり行ったことがないし興味もないから。

それに陸同様地理も国語も苦手だからな…… 

仮にそんな看板があっても気にせず逆に読んでいたのだろう。


「へえ昔から同じじゃないんだ? 」

おおアイミも俺と似たようなもの。

「馬鹿だな…… そんな訳ないだろう? 歴史は続いてるんだからさ」

「それで社会は? 」

「2だけど」

「何だ私と同じじゃない」

アイミは安心してるようだが俺は地理が苦手だからな。

「では三連覇レジェンドに聞いてみるか」

「ああ呼んだか? いくつかって? それは1に決まってるだろう?

いつも一番を目指してるんだからな」

言い訳が酷い。何だか情けなくなってくる。

奴は地理も歴史も苦手と来てる。それでは仕方ないか。


「ははは! ダメな奴だなお前は? 」

「おいふざけるな! 俺だったらとっくに答えに気づいてたさ。

お前の方が抜けてるんだよ! 」

陸は弱点を突く。

「いや…… そうかな? でもお前だってきっと…… 」

「それはもちろんその当時は気づかないかもしれない。

でも今はそんなことないだろう?

お前がきちんと説明してれば俺が解いていただろう。

だから説明の仕方もなってないんだよ」

陸にそこまで言われるとは思わなかった。

俺がいくら都会的で洗礼されてるからって酷い言われよう。


「どっちも似たようなものでしょう? 張り合わないでよみっともない」

アイミが攻撃を仕掛けて来た。

「はあ? それはアイミだって似たようなものだろう? 」

自分だけ賢い振りして上からは納得できない。同類のくせに。

「そうだぜ。同じだ同じ」

「違う! そもそも三連覇のあんたに言われたくない」

アイミは陸に噛みつく。気持ちも分かるけどさここは落ち着いて欲しいよな。


「もうるさい! 」

希ちゃん我慢できずに大声を出す。

らしくない。あまりにらしくない希ちゃん。一体彼女に何があった?

「希。あんた私たちを馬鹿にしてるでしょう? 」

アイミはバカのくせに嫌がる矛盾。嫌なら勉強すればいいのに?

「おい喧嘩は止そうぜ」

止めに入るが一旦入ったスイッチは容易には消えない。

まあこれくらい。暗号の答えが分かったのだから文句ないか。


ただ俺が難しくしていた部分があるが。

チュウシンコウでは確かにいつまで経っても真実にはたどり着かなかっただろう。

閉じ込められて最悪だったが集中して暗号解読ができたのは大きかった。

さあ後はこの地下牢から脱出するだけ。

ただそれが一番の難問。


考えられる手は一つ。仮病を使うこと。

恐らく陸あたりが腹痛を起こし病院に行けば脱出可能。

でも奴は絶望的な演技力だからやっぱりアイミか?

いやこんな重要な役割は任せられない。ここは希ちゃんが適任かな?

あれ? 何だかお腹が痛くなったような気も。


             続く

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