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宝探し

地下牢。

「お前たちは宝探しに来たんじゃないのか? 」

口を滑らす男。さすがに間抜けだがここではマイナスに。


「宝探し? 面白そう! 」

目を輝かすアイミ。さっきまでの大人しさはどこに?

「おいおっさん! その話本当なのかよ? 」

アイミだけでなく陸まで食いついてしまう。

「そうするとお前らは本当に何も知らない? しかし今知ってしまった」

どっちでも同じことと自らの失態を棚に上げて睨みつける。


「お宝って具体的には? 」

「それは言えんな。ただこの土地のどこかにあるとの噂だ。

異丹治様はそれを調べているのさ」

どうやら異丹治は異衛門から宝の話を聞かされて興味を示したようだ。

お宝の魅力に憑りつかれた悪党って訳だ。そこにノコノコ現れた間抜けな俺たち。

やはりもう少し慎重に行動するべきだった。

閉ざされた集落で一度標的にされたら逃げ帰る以外手はない。

仮に今回異丹治から逃れてもチュウシンコウを追う限り狙われ続けるだろう。

まさか本気でチュウシンコウが宝探しに関係するのか?

一体どんな意味があると言うんだ?


「それではそろそろ戻るとするか。大人しくしてろよ。面倒は掛けるな」

男は説明を終えたと逃げるように去っていく。

「待て! 最後に一つだけ教えてくれ! 」

叫んだものだから反響でキンキンする。

「よかろう。早くしろ! 」


「チュシンコウの正体を知ってるな? 」

「それは…… 異丹治様でさえ知らない。ただ宝に関するものらしいとしか。

異丹治様がお父様から聞かされた話だとしか伺っていない。

チュウシンコウは宝に繋がる。チュシンコウを口にした者は排除せよとな。

だからお前らを秘密裏に処理しようとしてる訳だ」

「もう一つだけ。同じようにチュウシンコウを求めここに落ちた者はいるか? 」

ある意味仲間でライバル。先輩みたいな存在。

「ああ二例だけある。一人はここでもう一人は運よく…… 」

濁したが決して楽しい未来が待ってることはないだろう。


これでは異丹治が本気で解放するかさえ怪しい。

秘密裏に捕らえたのだから秘密裏に処理されても何の問題もない。

くそ! もう少し慎重に調査するべきだった。

後悔か…… ただ悔やんでも悔やみきれない。


どうやら俺たち以外にもチュシンコウを調べ上げた人物がいたらしい。

しかも二人もとなるとどこからか漏れていると見ていいだろう。

「まさかよそ者? 」 

「そうだ。観光客に紛れた不届き者さ。

異丹治様はそれ以来よそ者には警戒を怠らない。

だからお前たちも例外ではないのだ。

正式な処分は明日言い渡される。うまく行けばここで数日過ごしたら解放も。

すべてはお前たちの心掛け次第だな」

男は行ってしまった。これで薄暗い地下牢で一日を過ごすことに。

朝になれば少しは光が届くだろうが今はランプの灯りだけ。

何だかレトロで風情があると言っていいがどうかな?


さあこの後のことを決めなくてはな。俺たちは間違ってなかった。

チュウシンコウはミライへ繋がる合言葉。

待ってろよミライ。俺が助けてやるからな。


「近寄らないでよ! 」

まずい。トラブル発生! もう禁断症状が出ている。

陸の奴が盛大にやっちまったから臭いが凄い。

「そうだぞ。大人しく端にいろ! 」

つい叱りつけてしまう。

「それはないだろう? 俺たち親友じゃないか。これくらいお前だって…… 」

陸の奴自分が責められたからって俺の恥ずかしい過去をばらそうとする。

何て奴だ。笑ってごまかしようがない。

アイミはどうにかなっても希ちゃんは本気にするぞ。事実だけどさ。


「気持ちは分かるがここ狭いんだぜ。仕方ないだろう? 」

機嫌を損ねずにどうにか注意で止める。

これからのこともあるからなるべく険悪にならないようにする。

俺だって本当は親友で仲間の陸を邪険にはしたくない。

でもこの臭いをどうにかしないとこっちが鼻がおかしくしちまう。

臭いにやられて吐き気や体調不良につながることも十分あり得る。

一人だけ気持ちいい思いして後の者のことを考えない。


「そうよ! 近寄らないで! 」

アイミが拒否反応を示す。意外にも一番デリケートなのか?

「ほら陸君。我慢してね」

希ちゃんが優しく諭す。ああ癒される。

こんな時でも冷静沈着で尊敬するな。普段通りにしてくれてありがたい。

もちろんアイミも悪気があってやってるんじゃない。少し感情的になってるだけ。

しかもいつもと変わらないような気もする。そうすると皆意外にも打たれ強い?

それとも現実を見てない? 現実逃避でもしてるのか?


俺も学校ではよくしていたがあそこは何と言っても安全だからな。

最悪先生に泣きつけばいい。安全地帯だ。

でもここは違う。父さんには泣きつけない。

今どうしてるんだろう? 異変に気づいて助けに来るといいんだけどな。

あり得ないか。無駄だろうがとりあえず父さんへ念を送ることにしよう。


「ほらあんたもあっちに行きなさいよ! 」

「そんな…… アイミ? アイミちゃん…… 」

アイミは希ちゃんまで排除しようとする。何て奴だ。

こう言う時に本性が出るんだよな。ああ怖い。

「やめろってアイミ! 何をしてるんだ? 」

止めるがまったく聞きやしない。

どうしちまったんだよアイミ? おかしいぞお前?


「ほら私たちの邪魔をしないの希」

そう言って俺に抱き着いて来る。

どうやらいつもと変わらないストーカー気質のアイミだった。


               続く

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