四人仲良く地下牢生活
「ではさようなら」
部屋が閉まると畳と畳が開き一気に地下へと落ちて行く。
うわああ! 助けてくれ!
陸が奇跡の爪立てで抵抗するが逆に危ないので早く落ちるように促す。
今怪我しても多分治療してくれない。そんな甘い奴らじゃない。
落下先は薄暗い地下牢となっていて一泊と言わずに何泊でも可能。
ただこんなところに泊まりたい奴などいないが。
「大丈夫か皆? 」
「ええ…… どうにか」
「希ちゃんは? 」
「痛…… ちょっと腰を打ったみたい」
「どれ見せて! 」
急いで患部の確認をしようとするがアイミにビンタで止められる」
「何するんだよ? 」
「大した怪我じゃないから落ち着いて。私が見てあげるから」
ああ…… 冷静になれば納得。
でもライバルのはずのアイミが希ちゃんを? まさかただの嫉妬?
「大丈夫希ちゃん? 」
「うん。ありがとう。大したことないから。それよりも陸君の方を見てあげて」
うわ。やっぱり優しいな希ちゃん。自分のことよりも陸の心配。
「おい陸? 生きてるか? 」
「へへへ…… 問題ないさ」
「でもその手…… 」
「こんなの舐めておけばいい」
ワイルドでタフな陸。怪我慣れしてるな。
まあいつも暴走してるからこれくらいどうってことないか。
よしとりあえず止血してオキシドールを塗って絆創膏を貼っておくか。
これで様子を見よう。
「なあアイミ…… 喉が乾いたよ。飲み物ない? 」
確認の意味を込めて水を要求。
「あるけどぬるいよ」
「それで構わない」
まずは手を洗ってうがいしてから一口。
口を切ったので微妙にしみる。鉄の味?
「私も飲んでおこっと」
そう言うと奪い取ってごくごく美味しそうに飲む。おい飲み過ぎだ。
これはケチとかではない。
絶体絶命時におけるサバイバル術。
荷物がそのままなのは幸運だった。
できるならここを脱出できるようなアイテムがあったらな。
いやいやそんな都合がいいのがあるはずないか。
「悪い。あったんだけど置いて来ちまった」
宇宙人捜索用に用意したらしい。ただ荷物になるから駅に置いて来たそう。
残念だが仕方ない。今は別の脱出方法を考えよう。
コツコツ
コツコツ
地下牢に足音が響き渡る。
どうやらあの案内役の男が下りて来たのだろう。
「こんばんは。にぎやかですね。もう日も落ちましたよ」
意外にも丁寧で紳士的。もしかしてこっちが本当で最初は作られたものとか?
「ちょっと待ってくれよ! 何で俺たち閉じ込められないといけないんだ! 」
怒りをぶつける。
「それよりも何か食わせてくれ! 」
陸はもう腹ペコだそう。
「どうでもいいけどもっと明るくしなさいよ! 」
アイミは暗闇が怖いらしい。
「もうどっちでもいい」
希ちゃんはもう諦めてる。可哀想にどうにかなってしまったか?
「ちょっと黙っててくれないか。ここの説明をしなければならない」
男は主人に雇われて集落に害をもたらす者を排除するのだとか。
「俺らはただ里帰りに来ただけだ! 」
陸の言う通り。実際仲間たちはほぼ何も知らずにただついて来ただけ。
「お前は黙ってろ! 余計に混乱する」
陸を制して話を一手に引き受ける。
「こいつらは関係ない! せめてこいつらだけでも! 」
懇願する。交渉は苦手だし嘘を言っても逆に悟られたらお終い。ここは正攻法で。
「それではお前は認めるんだな。海君だったかな? 」
「俺にもまったく身に覚えが…… お願いだから捕まった理由を教えてくれ」
頑丈な鉄格子に囲まれて出せるのは足の先と手ぐらいなもの。
まさかこんなところに閉じ込められるなんて。来るんじゃなかった……
いや違う! 俺はそれでも来たことを後悔してない。
そうだよ。ミライはこんな風に閉じ込められるんだ。
俺が迎えに行かず結婚させられたらお終い。相手はとんでもない大金持ちの爺だ。
勝手な想像だが間違いない。
うん。そうだ。ここで諦めるぐらいなら最初から来るべきではない。
「どうした己の愚行を後悔してるのか? まあいいシラを切るなら教えてやる」
そう言うと一人酒を飲む。
どうやら彼には主人に隠れて酒を飲む悪い癖があるよう。
これは何かの時に使えるかもしれない。とにかくよく観察しよう。
「おお済まないなお前たち。喉が渇いたろ。でも食事までは我慢するんだ。
ただ一日一食だから今日はない。悪いな。飲みたければ便所の水でもどうぞ」
長期滞在者用にトイレがあるので水はそこから飲める。
「お客には快適に過ごしてもらいたいと思っている」
「おいふざけるな! これでは死ぬだろうが! せめて二人ずつに分けろ」
狭くはないが四人で? それはあまりに危険過ぎる。
理性が保てるのは持って三日。早ければ明後日には狂ってしまう。
ある意味タイムリミットは四十八時間となる。
そもそもが三泊四日予定の旅。それ以上の着替えも食糧も準備もしてない。
うわああどうすればいい? たとえ助かっても言い訳はできないぞ。
「おい聞いてるのか? 」
「一つしかないんでね。それでお前が正直に吐くなら考えてやらんでもないが」
プレッシャーを与えようと言うのか? どうもおかしな展開になって来た。
これってミライとの悲しき夏の思い出では?
バッドエンドにしろハッピーエンドにしろあまりに遠回りしている気がする。
「正直に言うと俺はミライって子を探しに来た。ただそれだけだ。
ついでに父さんにも会いに来た」
「ウソを吐け! そんなはずないだろう? 」
「おいおい。俺たちはまだ高校生だぞ? それ以上のことがあると思うか?
自由研究か何かだとでも言いたいのか? 」
「確かにそれは…… では宝探しに来たのではないと…… 」
つい口が滑ってしまう男。
もはやごまかせない。
続く