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罠 地獄への直通路

チュウシンコウの謎に迫ろうと異丹治の屋敷へ。

「俺トイレ! 」

「私も! 希は? 」

「ありがとう。でもここで待ってるから」

こうしていつの間にか予期せず二人きっりに。

つい緊張してしまう。まずい。希ちゃんは最近大胆だからな。


「ちょっといい海君? 」

男がトイレの案内で姿を消すとすぐに耳元に息を吹きかける。

それは気持ち悪い…… いやどちらかと言うと気持ちいい。

「へへへ…… どうしたの希ちゃん? 寂しくなった? 」

「それもある…… でも何だかここおかしい気がする」

警戒心が強いのは決して悪いことではない。特に初めて行くようなところは。

でもここは父さんの生まれ故郷。俺にとっても何度か訪れたことのある田舎。

間違っても俺たちに危害を加えるとは思えない。そこまでする理由が見当らない。


「どこが? いい人たちじゃないか。希ちゃんは気にし過ぎだよ」

「そうだけど何だか違和感が。物凄い嫌な予感がするの」

まさか…… 俺の想像通り希ちゃんがこの村の出身ですべて知っているとしたら?

それなら納得だ。俺よりも冷静で詳しいのも頷ける。

「希ちゃんがそう言うなら警戒はするよ。それでどの辺が怪しいの? 」

ここまで来てただの勘と言われても困ってしまう。具体的に示して欲しい。

「それが全部…… 」

希ちゃんの直感ではすべてが胡散臭いし怪しいのだそう。


「ではこちらです」

笑顔で戻ってきた二人。どうやらトイレは洋風できれいだったらしい。

これなら俺も悩まされることはないだろう。

悩みが一つ解消されたかな。


大きな屋敷を歩いて五分。ようやく和室に通される。

と言ってもほとんどが和で。洋は玄関とトイレぐらい。


「お待たせしました。ではご主人様が来るまでお寛ぎください」

まだ支度が掛かるそう。一体何にそんな時間が掛かるのだろうか?

チュウシンコウについて資料を当たってくれてると信じるしかない。

せっかく招待されたのだから好意は素直に受け取らないとね。

もちろん希ちゃんのように常に警戒するのも間違っていない。

ただそれだと息苦しいからな。警戒は希ちゃんにさせておけばいいさ。


「まったくこっちは忙しいのによ。迷惑なんだから」

陸はお茶菓子を貪りながら文句を言う。食うか文句言うかどっちかにしろよな。

調子に乗ってると痛い目に遭うぞ。

「うん…… なあ何だか傾いてないか? 目の錯覚か? 」

目ざとい陸は異変を感じ取る。

「そんな訳ないでしょう? ここは立派なお屋敷で…… 」

アイミもトイレを済まし気が緩んでいる。


ドンドン

ドンドン

「ダメ…… びくともしない。閉じ込められた! 」

アイミの一言で希ちゃんが震える。

「おい陸何か変だ! 強行突破しよう。このままでは危険だ」

「へへへ…… 任せておけ」

こういう時に何も考えない陸がいると助かる。

でもアイミにしろ陸にしろ突破口が見いだせない。

このままここから抜け出せないのか?


その時だった。

「ははは! 罠だとも知らずにノコノコ付いて来るとはな。所詮はガキの浅知恵」

勝ち誇ったように笑う男。異丹治が姿を見せる。

「冗談でしょう? 招待してくれたんじゃなかったの? 」

アイミがすかさず噛みつく。

「残念ですよ。若い方たちの未来が失われるのは見たくないですからね」

言動不一致が酷い男。やはり初めから信用ならない奴だなと思ってたんだよな。

希ちゃんじゃないけどわざわざ屋敷に招待するなんて怪し過ぎるだろう。


「ちょっと待って! 私たちを閉じ込めてもすぐに気づかれますよ」

希ちゃんの指摘は一見正しいが彼らがそれを知らないはずも見逃すはずもない。

「お父様には今日中に集落を出たと伝えるつもりだ」

とんでもないごまかし方をする。そんなの通るのか? あまりにも杜撰。


「おい冗談じゃない! そんな話が通用するか! 」

代表として俺が異丹治に物申す。

もう怖いとか恐ろしいとか言ってられない。

ここで怯んで堪るか。結局は解放まで交渉を重ねるしかない。

「それが通用するのがこの集落なのさ。ははは…… 

何も取って食おうってんじゃない。ただ今月一杯は我慢してもらうだけだ」

最低最悪だがそれでもまだ人間の心を失ってないだけマシかもしれない。

ただそれだと目的が永久に果たせなくなる。


「質問は? 悪いが一回だけだぞ。よく相談するといい。

お前たちには関わってるほど暇ではないのさ」

俺たちだってここで足止めされてたまるか。

「質問がないならここで止めるが? ではこちらから。どこまで知っている? 」

異丹治は鋭い目つきで睨みつける。もう希ちゃんなど下を向いて震えている。

アイミまで怖がって俺に引っ付く。いやうっとしいからやめてくれないかな。

やはりここは俺が答えるしかなさそうだ。今更隠す必要もない。

「俺たちはほとんど知らない。お前たちが何を隠し恐れているのか知らない。

大体関係ないことだ」

「シラを切るか。すべて白状すれば許してやろうと思ったのに意外と手強いな。

しかし痛めつけるにはこれくらいでないとな。張り合いがないか」

「うるせい! お前ふざけるな! 」

すべてをぶち壊す陸の感情に任せた暴言。


「ではさようなら」

和室は閉まり畳と畳が開いて地下へと落ちて行く。


                 続く

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