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紅色の研究

手掛かりなしで不発に終わったと嘆く陸。

でもよく聞いてみるとチュウシンコウを知る老女がいることを掴んでいた。

貴重な情報じゃないか。ちっとも無駄ではなかった。

比べることもないがこちらなどミモリにいいようにやられた。

まだ不慣れな俺たちを動揺させて楽しんでるらしい。いい性格してるよ。


ただどこまで信用していいものか。 

恐らく集落の歴史を知る偏屈なお婆さんだろう。

何でも知ってるからってチュウシンコウまで? 当てにできるのか?

本人から直接聞いたのでもないし噂程度に過ぎない。

ただその話は前にどこかで聞いたような。


「あのさ…… 説明するのが面倒だから次からは詳しいとこを書いておいてよ」

アイミからクレームが入る。

陸は気にせずに笑っている。困った奴。これは改善されることはないな。

「なあアイミ。そのお婆さんの話は前にもしてなかったっけ? 」

「うん。それなら宇宙人探しをするおかしな人が教えてくれた」

「そうか! ならあのおかしな奴らの情報とも合致するな! 」

「おかしい? 普通だろう? 」

陸が話に割り込む。仲間を庇う形だ。


チュウシンコウの謎。

俺は音だけ。ただチュウシンコウと。

チュウシンコウ。もしそれが表音文字ではなく表意文字ならどうだろう?

「音じゃなくてそもそも何らかの意味があるのか…… 」

つい独り言のように。だがそれを拾ってくれるのが希ちゃん。


「ねえ海君。漢字ってあるの? 」

頭の回転が速い希ちゃん。ここでは一番頭がいいと言うか他がダメなんだが。

閃きでは歯が立たないほど。考えてないようで考えてるのが希ちゃん。

そう言えば…… カタカナでの記憶しかないけど…… 確か幕に書かれていたな。

しかも漢字だったような……

「横書きで…… 漢字三文字だった気がする」

「おいおいそれだけかよ。小出しにするな。俺たち仲間だろ? 」

陸はまるで俺が隠してるみたいに言うが思い出せないから苦労してるのに。

思い出せるならとっくに。ここに来てから記憶が蘇りつつある。

そう言う意味では来たのは正しかった。ただそれだけでは意味がない。

仮にすべてが分かっても期限までにミライを見つけなければ無駄足となる。


「ほら一文字目は? 」

アイミがメモしようとするがまったく出てこない。

たぶん五年前には覚えていたはず。それがいつの間にか抜け落ちてしまっている。

学校の試験でもないんだから無理して暗記してない。

それに漢字に意味があるとはその時は思いもしなかったから。


「ほら一文字目だって? 」

急かしても思い出せるものでもない。

「たぶんチュウが一文字目だと思うの。海君記憶にない? 」

手掛かりがこれしかないとどうしても効率が悪い。


ここは父さんの実家がある集落。だがそれとは直接関りがない。

どんなに聞き込みをしても正解にたどり着かない。

ただ過去や歴史に詳しいお婆さんなら何か知ってるかもしれない。

チュウシンコウと言う暗号めいた言葉を用いたことで余計こんがらがってしまう。

そもそもチュウシンコウに本当に意味があるのか?


とりあえず腹ごしらえ。

「うおおお! 飯だ! 飯だ! 」

一人はしゃぐ恥ずかしい奴。相当腹が空いてたんだろうな。

俺なんか昨日から睡眠も食事も少なめ。緊張からか疲れが取れない。


集落には父さんたちを含め三十世帯六十名近くがいるそう。

五年前に比べ人口が増えてるのはコテージ等の地域復興計画があったからだろう。

ミモリのように集落が気に入って残った者も数名。

独り者が多い。一つにはよそから来た若者が住み着いてと言う場合も。

子供がいなくなって再び故郷に戻ってきた出戻りだとか。

連れに先立たれて独り身だとか。

天涯孤独の流れ者が住み着いた場合も。


「そっちはどうだったんだよ? 」

雑貨屋でそれぞれおむすびとサンドウィッチ等を買い込んで報告をし合う。

しかしこんなにノロノロしてていいのかな? 俺たちにはあと二日しかない。

仮に知ってる者が現れてもタイムアップに。

だからこそ午後はもう少しだけども有意義な時間の使い方すべきだろうな。

「俺たちはコテージでミモリのお遊びに付き合わされた。何を考えてるんだか」

ちっともうまく行かないものだからつい人のせいにしてしまう。


「よし皆。食べたら引き続き情報収集だ! 今度は四人で一緒に」

祭りの会場に行ってみようと思う。人が多ければ何か知ってる可能性も。

「よしお前はチュウシンコウを思い出してろ」

陸は張り切り始めた。暴走の予感。


「それってどんな感じ? 」

アイミが促す。

「そうだな…… 何だか血のイメージがある」

「待ってくれ! 俺殺されるのか? 」

一体どこまで飛躍するんだこの男は?

 

いや待てよ…… その感覚こそが正しい?

そうだよ。俺はたぶん本質的な部分で恐れている。

それはまさしく血のイメージ。そうこれが正しい。

血こそがこのなぞなぞにたどり着ける唯一のアイテム。

血…… ダメだ。どうしても思い出せない。

意味がないものを覚えられないようにただのこじつけだろうし。


食事を終え話を聞いて回ることにした。

さあ急がないといけない。もう時間がないのだから。

俺たちは実家に帰省したのでも観光に来たのでもない。

明確に目的があった。チュウシンコウの謎を解きミライにたどり着く。

ここまで来ればミライは近いはず。


ではまず一人目から当たるとしよう。


                 続く

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