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改めて挨拶

迷いに迷ってようやく父さんの実家へ。

父さんが五年前とあまり変わってなくて安心した。


挨拶を済まし中へ。

比べては悪いが立派だった屋敷が一回りも二回りも小さくなり狭く感じる。

残念だな。あの解放感がよかったのにな…… 自然災害なら仕方ないか。 

和室と洋室が混在するより現代的な建物。

二階とダイニングは洋で一階は和なのだとか。

さすがにいくら息子であり孫でも全部の部屋を図々しく見て回れない。

もしかしたら開かずの部屋なんかもあるかもしれない。


「離れは? 」

「そう言えば前の家にはあったな。ははは! 」

どうやら離れで泊まる計画は破綻したようだ。

やっぱりミモリの言う通りにしておくべきだったかな?

連絡もせず四人で押しかけるのは非常識。分かってはいたがどうしようもない。

当初の計画とはかけ離れてしまった。


「ねえ父さん。俺たちどこに泊まればいい? 」

「空いてる部屋なら好きに使っていいぞ。後で婆ちゃんに聞くといい。

しかし一人だと思ったのに四人とはな…… しかも女の子まで」

ため息が漏れる。うるさくするなよと無言の圧力を感じる。

やはり機嫌はあまりよくないのかな?

「分かった聞いておく」


和室に通され改めて自己紹介。

「海人の父だ。息子が世話になってる。しかしなぜこんな何もないところに? 」

昔と変わらないな。常にムスっとしてるから機嫌が悪いようにも見える。

これが父さんの自然体。他所の人から見たら少々威圧的に映るだろう。

俺だって久しぶりだから。昔はちょっとでもふざけると叱られたな。

今は遊んでいい時でもふざけていい時でもない。真面目にやれと。

あれ? 父さんとのいい思い出がない?


物心ついてからこうだったからな。すべてにおいて厳しいイメージ。

躾けも。箸の持ち方から風呂の入り方まで。守れないと正座をさせられる。

俺はその辺は慣れっこで今でも正座を続けてたりする。

陸には何か悪いことでもしたのかとからかわれる。

そんな時はいつも姿勢を正すためだと言って適当にごまかす。

癖と言えば癖だけど少し恥ずかしいなと感じる。

父さんとの思い出はこれくらいかなと言うのはもちろん大げさなんだけど。


どうも時が過ぎるとあやふやになっている。

五年近く婆ちゃんと母さんの三人暮らしをして来たからな。もう慣れだな。

俺って本当に父さんを必要としてるの? 

「それであんたらは何しに来た? 」

「もうお父様ったら! 婚約の挨拶に参りましたと言ってるではありませんか」

陸は一言も。希ちゃんはいつも通り静か。アイミは常に嘘つきでいい加減。


「お前の婚約者とその姉は分かった。でももう一人が不明だ。

こんな得体の知れない男を置いておけない。そうは思わないか? 」

緊張して一言もしゃべれない陸を睨みつける。

どれだけ厳しんだよ。さあどうするかな?

陸の存在はどうしたって邪魔になってしまう。

何て説明するのが正しいのだろう? 面倒だからそのままでもいいか?


「ああ俺のこと? 俺は…… 」

「ほれお茶が入ったぞ。照三もそれくらいで」

なぜか人の家に入り込んで茶の用意までしてくれる林蔵さん。

さすがは田舎だな。集落は皆家族ってところだろうか?


「この子は陸って言って新種の動物で今事情があり我が家で預かってるんだ。

留守番は可哀想だから連れて来た」

うん。これくらいでいいだろう。

「冗談はそれくらいにしろ! 」

うわ…… 怒られる。

「ごめんなさい! ごめんなさい! 」


「まあいい。それでこの男はお前の親友でいいんだろ?

前に写真を送ってもらった時に見た覚えがある。確か高校の入学式だったはずだ」

初めから知ってるなら言ってくれよな。息子を試すような真似するんだから。

もうペットって言ってしまった。どうしよう?


今回の帰省でどうしても陸の存在だけが邪魔になる。

友だちの家に一緒に帰省する奴がどこにいるんだ?


「そう。俺は陸って言って海とは中学からの仲なんです」

陸は笑いを引きつらせながら必死に説明する。

やっぱり新種のペットでよかったんじゃないか?


「婆ちゃんたちは? 」

そう父さんもそうだけど婆ちゃんに会いたかったんだ。

また得意の料理を振る舞ってくれるんだろうか?

それが楽しみで来たようなもの。

「ああ婆ちゃんなら祭りの準備の手伝いだ」

「爺ちゃんは? 」

「病気で伏せてる。会っていくか? 」

「はいもちろんです。ぜひご挨拶に行かせてください! 」

アイミは躊躇わずに進む。


一通り部屋を案内してもらってから奥の和室に通される。

「うん? お客さんかい? いや風邪を引いちまってな」

そう言って咳き込むので遠くから声を掛けるだけで留める。

「おお海か? 我が孫が帰って来たか。待っていたぞ!

よしでは儂もそろそろ起き上がるかのう」

病人が無理して起き上がろうとするので父さんが止める。

「ほらここで大人しくしててくれ。こじらせると大変だから」

どうやら微熱らしい。数日前の宴会の席でもらったらしい。


「爺ちゃん。ゆっくりしててよ。俺たちはまだいるんだからさ」

「おう! 回復したら遊んでやるからな」

どうも爺ちゃんはまだ俺のことを小学生だと思ってるらしい。

五年前はでかく恐ろしい爺さんだったが今は病人だからか昔感じた威圧感がない。

丸くなったでいいのかな?


爺ちゃんへの挨拶を終え夕食へ。


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