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久しぶりの再会

ついに集落へ到着。

怪しげな男ミモリの提案を受け別々に泊まることに。

「あの…… 」

「冗談はやめて早く連れて行きなさいよ! 」

アイミは強気だ。いつも強気だが大人に対して怯まない。堂々としている。

確かに見た目はひ弱そうだが立派な大人だぜ。怒らせたらどうなることか。

「ははは…… 冗談だって。茶を飲んだら連れて行ってやるから心配するな」

大人しく引き下がるミモリ。どうもこの男の考えがよく分からない。

まさか希ちゃんたちが狙われてる? もうこれ以上近づかない方が身のためかな。

怪しげな奴には近づかないが基本。大体こんな隔絶された集落では逃げ場がない。

それに俺のことを知ってる風だったがただ口が上手いだけかもしれないしな。

ここは慎重に。あくまでも慎重に行こう。


「そうだミモリさん。チュウシンコウって分かりますか? 」

無理だとは思うが念のため。ここの者なら多少聞いたことがあるだろう。

「ふふふ…… 知りたければ泊まっていくといい。すべて話してあげるよ」

またそれかよ? しつこ過ぎる。どうしても泊まってもらいたいらしい。

その異常までの執拗さに寒気がする。何を考えてるんだろうこの人?

親切にしてもらったけどイマイチ信用できないんだよね。

「結構です! これ以上迷惑は掛けられません。それより早く案内しなさいよ!」

そう言ってしつこい男を引っ張っていくアイミ。こう言う時頼りになるんだよな。

ただの迷惑ストーカーじゃない。


こうして俺たちは迷いに迷ってどうにか目的地までたどり着いた。

「本当にここでいいんだな? 」

「しつこい! 」

「では俺はここで。もしチュウシンコウを知りたくなったらまたおいで。

歓迎するからな」

ミモリが姿を消す。


さあそろそろ心の準備をするとしようか。

ついに父さんと再会。

五年ぶりの再会と行きますか。

あれ…… ここじゃなかったっけ?

五年前とは異なる。確かここに家があったような気がしたんだけど。

日本家屋の立派な家。お屋敷と言っても過言ではない家があったはずだ。

それなのに見る影もない。ただ雑草が伸び放題。勘違いなのか?

それともただ暗いせい?


「おいお前たち何をやってるんだ? 」

またしても怪しまれてしまう。四人で来れば目立つものか。

「あれあなたはお隣の…… 林蔵さん? 」

前々回に訪れた時に遊んでもらった記憶がある。

確か近くの川で釣りを教えてもらった。

この人教え方上手いんだけど厳しんだよね。

持ち方が違うって。釣りであって野球やゴルフじゃないんだからさ。

確か小さな女の子がいたっけ。うん思いだしてきたぞ。


「あの頃とちっとも変ってないですね」

ちょっと太ってちょっと薄くなってちょっと歯が抜けてちょっと老けた。

「ははは! 海君だっけ? そうか大きくなって。おじさん嬉しいよ」

意外にもこの林蔵さんが一番遊んでくれた。

父さんも母さんも色々と忙しかった頃だからな。

たぶんその頃ぐらいから二人の関係がこじれていったんだろうな。

今になれば何となく分かること。

まさか離婚の理由って二人ではなくこの集落にこそ原因があるのではないか。

そう勝手に想像する。ここに来てそんな思いに駆られる。


「あの…… 家は? ここにあった家はどうしたの? 」

「ああそれは…… 流されたのさ。数年前の水害でここら辺は全部。

だから俺の家も新しく立て直した。照三とこも別の場所にさ。

それでもここは忘れられないのさ。思い出の場所だからな」

林蔵さんの表情が冴えない。相当堪えたのだろう。

「ホラこっちだよ。ついておいで」


引っ越し先は一キロ先。

随分と小さくなった気が。一回りも二回りも小さくなった気がする。

前の家の迫力には遠く及ばない建物。

なぜか自分まで負けたような錯覚に陥る。


「おい! 遅いじゃないか! 心配したんだぞ! 」

父さんは昔とちっとも変っていない。記憶の中の父さんそのものだ。

「父さん…… 久しぶり」

緊張と恥ずかしさと興奮が入り混じる。

挨拶を交わすがこれでも五年ぶりの再会なんだけどな。

「ははは…… そうだな」

あれおかしい? 父さんを見てるとどうも母さんが話してる感じと違う。

親権を失って田舎に帰ったって話だったけどな。俺を捨てたんじゃないのか?

婆ちゃんが吹き込んだ話はどうやら嘘八百だったらしい。


「遅くなってごめん」

「まあいい。それでこちらの方は? 」

そう言えば陸を知らないんだよね。離れてから出会ったからな。

なぜか一言もしゃべろうとしない陸。挨拶ぐらいしろよな。らしくない。

借りて来た猫のように大人しい陸。もう眠いのかな?

違うよな。怖いんだろう。どうもふざけると怒鳴られそうで怖い。

ふざけていい雰囲気じゃない。だから陸は固まってしまっている。


「私は…… 希と言います」

希ちゃんは苦笑いを浮かべる。

それもそうか。迷惑客だとしか思われないから。


「どうもお義父様。私は海さんの婚約者でして。ご挨拶に参りました」

アイミは相変わらず調子に乗って訳の分からないことをほざく。

「ほう本当か海? 」

「えっと…… まだ婚約までは…… 」

「はっきりしろ! どっち何だ? 」

「はい。俺たち付き合ってるんです! ただそれだけです」

アイミの悪ふざけに乗っかる。こうしないと三人来た理由にならないから。


「ではこちらの大人しいお嬢さんは? 」

父さんはまるで値踏みをするようにもう一度希ちゃんを見る。

「希さんはアイミの姉で心配だからとついてきたんです」

うわ…… 希ちゃんごめん。これも訪問の理由をつけるためだから。

「同じぐらいに見えるがな…… 」

「そうなんだ。一つ上のお姉さんで俺もお世話になってるんだ」

事実をそれとなく混ぜる。そうすることで不自然さが緩和されることに。

父さん見てよ? 俺は嘘を吐くのが上手くなっただろ?


「おいおいこんなとこで自己紹介もないものだ。ホラあがれって! 」

なぜか父さんではなく林蔵さんが仕切る。

「そうだな。ではゆっくりして行くといい」

こうしてどうにか四人とも無事に中へ。


                続く

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