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ミモリ

恐らくそろそろ父さんの待つ集落のはずなのに…… おかしいな。

辺りは真っ暗でライトの僅かな光だけでは前に進むのさえ困難。

最悪なことに道に迷ったことで仲間割れを起こしてしまう。

眠気と疲れに恐怖からお互いを罵り合うまでに発展。何て醜いのか。

これが本来の人間の姿。まあ俺たちはまだまだ未熟だけどね。

それでも親友や仲間を傷つけ合うのはたとえ言葉であっても正しくない。

とにかく何とかこの状況から抜け出さなければならない。


ガサガサ

ガサガサ

みっともなく仲間割れしていると肩まで伸びた雑草が揺らめきだした。

「お前らうるさいって! 近所迷惑になるから他所でやってくれ! 」

あれ…… 人の姿が。どうやらもう集落に着いていたらしい。

仲間割れし言い争いした結果運よく発見される。これで遭難と野宿の危機を回避。


「あなたは? 」

「いいから静かにしてくれ! こんな時間にギャアギャア騒ぎやがって! 」

そう言って再び雑草の向こうに消えようとするので制止する。

「待ってよ! 」

「そうそう。あんたこの集落の者だろう? 」

アイミと陸のコンビが強引に迫るものだから根負けして語りだす。


「俺はこの近くのコテージに住み着いてる。

ああここか? 十年以上前にどっかの役人が地域の復興とか言って作らせたんだ。

コテージを作って観光客を呼び込めば他所から大量に客がやって来ると見込んで。

だが数年でコテージは廃業。空き家になったそう。

次はゴミ集積所を作るとなったがそれも途中でプロジェクトの中止が決まった。

俺はその関係者だ。ここにはその時やって来たんだ。

でもとん挫したことで首になってここで自給自足のような生活を送ってる。

当然集落の者との交流もあるよ。以上」


今度こそは寝ると言って去ろうとする男の服を掴む希ちゃん。

うわ…… 強引だな。子供じゃないんだから。

「まだかよ? よし分かった。話だけは聞いてやる。だから放してくれ! 」

渋々協力してもらうことに。これで無事に父さんの元へ行けそうだ。

「ありがとうございます」

希ちゃんがようやく手を放す。男のシャツは伸びてしまったかな?

まあこれくらいの損失で済んで良かったと思わなくもない。


「お前ら若いな。高校生? もしかして照三さんとこの…… 」

どうやらこの集落では隠しごとはできないらしい。良いような悪いような。

「俺たち夏休みを使って遊びに来ちゃいました! 」

ちょっとふざけてみる。余裕が出てきたかな?


「そうすると海君? 」

「はい。海人って言います」

「やっぱりそうか。大きくなって。どうせ俺のこと覚えてないんだろう? 」

「ははは…… 初めまして」

「そう来ると思ったよ。でも俺たちは会ってるんだぜ。

それ以外にも君の重大な秘密を知っている」

意味深なことを言ってからかう。

ふざけてるのか。それとも本気なのかよく分からない。

ただふざけてるなら相当鬱陶しい奴なのは間違いない。

それにしても会った記憶がまったく。ただのイカレタ人に見えるのはなぜか?


「そうそう俺はミモリって言うんだ。改めてよろしくな」

自己紹介を済ます。

「あれ…… 確か一人息子が遊びに来るって話してたな。

何でお前たち四人もいるんだ? 」

もっともな疑問を口にする。

それは俺だってそうしたかったさ。最初は一人で来る気満々だった。

でも成り行きで宇宙人ハンターと共にすることになった。

その辺の事情は複雑かつどうでもいいので省略することに。


「その…… きびだんごに釣られてお供するって言うものだから…… 」

「はあ? 何でもいいが親父さんにきちんと伝えたのか? 」

「それはまだ…… 驚かせようと思って」

「おいおいそんな驚かせ方ないだろう? 四人なら四人って事前に伝えるべきだ。

一人ならまだしも四人かよ。照三さんもびっくりするだろうよ」

「それはその…… 」

俺たちが非常識に見られてしまった。

でも何度も言うようにこれは成り行きで…… 人探しには多い方が何かと便利。

ただそのことを伝えるのも憚られる。


ミモリは薄笑いを浮かべる。何か変だ。

「ここはよ。自給自足に近い閉ざされた山奥の集落。

隣には山を登らないとたどり着けない。

ここにも店はあるが仕入れには山登りが必至だ。

それが苦になることはないだろうがよ。

しかしだからこそお客が来ると大変になる。

ここも前はコテージだったから大変さが身に染みてる。

一人増えるだけならどうにかなるさ。でも四人となると遠慮した方がいい」


「しかしもう来てしまっては…… 」

「何も戻れとは言ってない! 残りをここに泊めればいいだろう? 

ここなら食糧が揃ってるからな。どうだ? 二人までなら歓迎するぞ。

こうしようぜ。海たちは照三さんのところに。女の子二人はこっちで」

ミモリはとんでもない提案をする。せめて希ちゃんと二人で泊まらせて欲しい。

でもアイミもついて行くと駄々をこねるだろうしな。

男の提案を受け入れるしかないのか?


彼だってここで暮らしていけないような真似はしないだろうし。

会ったばかりの男をどこまで信じればいい?

どう考えても何かあるとしか思えない。俺はそこまでバカじゃないぞ。


いや…… ここは信用することから始めるのがいいだろう。

よしさっそくお願いするとしよう。


                   続く

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