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第一村人?

スコールが収まり視界も良好。

ただ足元が滑りやすくなってるので気をつけないといけない。

チーム・桃太郎を引っ張るのはやはりリーダーの俺の役割。

「皆無理するな。ゆっくり進もう」

勝手な行動を取らないように指示を送る。

特に陸がはしゃいで暴走しないか目を光らせる。


ザクザク

ザクザク

おかしな足音がする。

ああ陸の奴がへばったか? だらしない。

もう限界のようだ。荷物を減らしてこれだからな。


奴の荷物のほとんどが宇宙人探しの秘密兵器。要するにゴミだ。

三つもあったものを一つにまとめて残りを駅で無理やり預かってもらった。

これだから都会者はと嫌味を言われながらもどうにか。

何だかんだ言ってやはり優しいんだよな。俺たちがまだ子供と言うのもある。

捨てても構わないような代物だが帰りにはきちんと陸が責任持って……


いや違う…… 奴じゃない。後方から人が近づいてくる。

まさかの地元の人? この時間ならその可能性が高い。

これはラッキー! 話がきけるかな?


「おい大丈夫か坊主たち? 」

どうやって山を登った? 体力が有るとはとても思えないおじさん。お爺さん?

「どこに行くだ子供たち? 学校から帰るとこべか? 」

心配して声をかけてくれたらしい。

「実は俺たち…… 」

「ああん? よそ者だな? 」

挨拶もロクにできずに勝手に決めつけられてしまう。

「お前たち村ん者じゃないな? まったくよそさから来てまあ」

怒ってるのか呆れてるのか? どうもよく分からない。


「そのあの…… 」

「よく見ればお前は照三のとこの坊主やね? 儂のことさ覚えてねえか? 」

俺を認識し父さんの名前まで持ち出した男。

ついに俺の過去を知る者が現れた。

これがまさかの第一村人?

いやここは山奥の集落だから第一落ち人?


「おじさんは帰り? 」

「おう聞くか? 」

どうせ歩いてるだけだからな。集落の話が聞けるならありがたい。

「よし。着いてこい! 」


「照三に会いに来たんだろ? 生憎だが今日は買い物に出掛けたと思うぞ」

どうやらまだ戻ってくることはないらしい。

そうか…… 俺のために準備してくれてるんだな。

歓迎されないのではと不安だったが何だかホッとした。


「それで父さんは? 」

「ああ元気にやってるさ。この集落では若い方でな何でもやってくれる」

どうやらこの集落と言うか地域も例に漏れずに少子高齢化が進んでるらしい。

集落には本当に爺さん婆さんばかりだと。

父さんが一番の若手だとすれば相当進んでることになる。


「それにしても大きくなったな。里帰りとは立派な心掛けだ」

年末年始もお盆も戻ることが普通だった。それは今も変わらない。

ただ父さんが離れる以前から遠方と言うこともありあまり訪れていなかった。

離れてからも爺ちゃんと婆ちゃんが一人ずつになっただけで大した変化はない。

そう勝手に思い込んでいたがここでの思い出が歩けば歩くほど流れて来る。


爺ちゃんはそれはそれは厳しい人だったよな。

今でもきちんと挨拶しないと中にも入れてくれないんだろうな。

陸みたいにふざけてたら一生無理。


嫌な予感。これってまずい展開? 

陸のことだからついでに宇宙人についても聞く気だろうし。

ははは…… サマー部の合宿でもないんだしもう少し肩の力を抜こう。

俺が恐れてどうする? せっかくの帰省。楽しまなければ。


「それでおじさんは今日は何しに? 」

「一週間に一度山向こうの町で集落で取れた野菜や果物を売りに行ってたんだ。

今はその帰り。全部売れたから医薬品を買い足した。

怪我した時は遠慮せずに言うんだぞ」

「それはすごいな」

「ははは…… 少し急ぐぞ! 」

まだスピードを上げるそう。いくら下りでも無茶で危険。

本人は一切気にしてない様子。


「あれそっちは女の子ではないけ。おったまげた」

興味津々のお爺さん。まさか狙ってる? そんなはずないよな?

さっきから見えていたはずだが。目に入らなかったのか?

「まさか婚約の挨拶に来ただか? これはめでたい! 実にめでたい! 」

どう勘違いしたのか…… いや不思議でも何でもないか。

婚約か結婚の挨拶ぐらいにしかこんな集落に近づかないよな。

でも俺たちまだ高校生だしな。

それに本当はその結婚相手を探しにやって来た訳で……

「いえ違います。ただの結婚の報告ですよお爺ちゃん」

希ちゃんは真に受けずにただ首を振るがアイミはそうはいかな。

元ストーカーの自覚があるのかないのか適当なことを抜かす。


「するとこの大人しい女の子でなくこっちの騒がしい方かい。

しかし気をつけるといいよ。奥さんは怖くて…… いや厳しい人だ。

とは言えめでたいな。うん皆に知らせるぞ」

張り切り始めた。俺は何も言ってないのに勝手に。

恋人でもなければ将来を誓い合った仲でもない。


「それよりもさ教えてくれない? 」

アイミが調子に乗る。

出会ったばかりの集落の者に聞くことではないがこれも事前調査。

割り切るとしよう。

「そうだった。チュウシンコウについて何か知りませんか? 」

これさえ分かれば突破口になる。真実に近づけるはずだ。

チュウシンコウの謎が解ければ来た意味もある。

おじさんは思い出そうとするがどうもその辺のことは覚えがないそう。

「全然何も? 」

「済まんな。まったく」

集落の者でもチュウシンコウは知られてないらしい。


「ではな。急ぐから」

そう言って行ってしまう。

もうここまで来れば迷いはしない。



                続く

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