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結成! チーム・桃太郎

それからはボケっと車窓を眺め一人旅情に浸っていた。

「もう疲れた! 水! 水! 」

「おいアイミ! 雰囲気ぶち壊しじゃないか! 」

「うるさいな! 疲れたんだから仕方ないでしょう? 」

元気よく戻ってきたアイミに事情を伝える。


「ええっ! 三人ともお義父様の実家に? それは困りましたね」

アイミは妄想の中に生きる。

「そうだ。だからお前一人で宇宙人探しを続行してくれないか? 」

「はい喜んで! ってふざけないでよ! 」

アイミもついてくることに。

これで結局宇宙人探しの旅から過去の記憶の中で生きる美少女・ミライ探しへ。


ついについに結成された。チーム・桃太郎。

俺が密かに思い描いた夢が叶ったのだ。

それまでの道のりは険しかったし長かった。辛かったでも……

必ず仲間になるって信じてた。うん素晴らしい。


チーム・桃太郎紹介。

まずは桃太郎役の俺。三匹のお供を従えて未知の集落へ。

あまり鳴かないきれいな羽根を持つキジの希ちゃん。

決して賢くない常に引っ掻き回すキーキーうるさいサルの陸。

ご主人様に従順でしつこくついて来る本当はきれいなお姉さんの忠犬アイミ。

お供になった順番で。


それではきびだんごを与えるとするか。

希ちゃんにはただありがとうと感謝の言葉を贈ればいい。

陸には泊まる場所を提供すればいい。

アイミには…… まずい。おかしな妄想を。まあ何もしなくてもいいか。


それにしても結局アイミとは? 正体不明なところが不気味だ。

なぜ在学生名簿にアイミの名前が載ってない? 

一学期の途中から転校してきた訳でもないのに。

アイミ…… うーん。俺はとんでもない間違いを犯してるのか?


陸が言うようにミライのはずもない。

そもそも性格もしゃべり方も顔も…… すべてあやふやだがそれでも違うと。

大体彼女がミライなら俺は何のために山奥の集落へ。もちろん帰省だけど。

言えない事情でもない限り自分から言うだろ? それがアイミじゃないか。

彼女に直接確かめてみるか? いやバカバカしい。

「どうしたの? そんなに見つめないで」

「何でもない。そろそろ終点だ。支度をしろ! 」


駅に着くとバスで山入り口へ。徒歩で山を越えることに。

さあ登山開始と行きますか。

「そうだ。奴らから何か聞けた? 」

登山開始時はまだ足が軽い。でもへばるのは間違いない。

いくら運動部とは言えサマー部だからな。

他の部と違って体力があり余ってるとかではない。


「それがさ…… ロクな情報が集まらなくて。

そうそう今向かってる集落に有名なお婆さんがいるみたい。

一度会ってみたらいいだろうって。

それ以外は自慢でこれがいいとか交信ができるとか。

あんまりにバカバカしいので聞き流してた。馬鹿なんじゃないの? 

後はしつこく誘って来るだけ」

大した情報は得られなかったか。 

でもどうせ宇宙人探しは諦めた訳だしどうでもいいよな。


「悪かったな。よくやったぞ。さすがはアイミだ」

褒め称える。この調子で俺の件も積極的に手伝ってもらえたらな。


登山を開始して三十分。ようやく頂上が見えて来た。

それから十分してついに頂上に到着。

ゆっくり景色を眺めながら軽食でもと思っていたが天気が怪しくなる。

これは一雨来るかな?


後は下るだけ。その時だった。突如雨が降り出してきた。

さっきまであんなに晴れていたのに。山の天気は変わりやすいな。

これは俗にいうスコールだろうか? 激しく降り出した。

急いで雨宿りするとしよう。


雨宿りから一時間。ようやくスコールも収まり晴れ渡る。

晴れ渡ったのはいいが今度は蒸し暑くて堪らない。

夏だから多少仕方ない部分はあるがそれでも汗が滴り落ちて気持ち悪い。


「大丈夫か? そろそろ行こう! 」

収まったように見えたがまだ時々降ったり止んだりを繰り返している。

「おう! 」

一人元気なのが陸だ。

女子二人は無口を貫く。疲れ果てたんだろうな。

でも希ちゃんは別として二人は勝手について来た訳で。

もし宇宙人探索ならバスで近くまで行けたから快適だっただろう。

今回のスコールのような雨は季節もあるし時間帯もあるので仕方ない。

これを避けて行動すれば暑くてかえって危険だ。


「おいどうしたんだよ二人とも? 静かじゃないか」

盛り上げ役の陸が絡む。うっとうしくて仕方ないと表情を曇らせる二人。

「どうしたんだよ。ははは! 」

空気がまったく読めない陸には何を言ったって通用しない。

自分が悪いだなんて思わないんだろうな。


現在頂上を超えて下山してるところ。

もう間もなく集落が見えてくるはずだ。

蘇った昔の記憶。五年前の記憶を頼りに下山を開始する。

あの時は両親がいて疲れたら父さんにおんぶしてもらったっけ。


あの時が一番幸せだったなとガキのように思うことはない。

でも事実悩みも苦しみも痛みも恐怖も何もかもを感じなかった。

だからそう言う意味では比較すると幸せだったのかな。


「なあまだなのかよ? 随分歩いたと思うぜ」

陸までがへばって文句を言いだした。少しは我慢してくれよな。

「今は下山の途中だ。もう少しだ。考えれば分かるだろう? 」

集落は山を下ってから出現するんだから当然まだ見えない。

シルエットぐらいは見えるかもしれないが。


                 続く

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