表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/148

お仲間登場 希ちゃんのおしるこ

せっかくのいい雰囲気をぶち壊そうとする陸。

中学からの仲だから大体のことは分かってるし対処法だって。

怒りから悲しみに変わったら危険なサイン。

周りの迷惑も考えずに泣きながら突っ込んでくる。


「だから希ちゃんが無理やり…… 」

何とか言い訳して興奮する陸を宥める。

「ええっ…… 希ちゃん? 」

ふう危ない危ない。どうにか陸が冷静さを取り戻した。

「希? 私ならここだけど」

希ちゃんは両手にペットボトルで武装している…… 訳ないよな?

そうするとここにいる偽希ちゃんの正体は…… 当然アイミだよね。


「あれ…… おかしいな」

「ごめんなさい…… 二人はもうそこまで行ってたんだ」

変な風に誤解されてしまう。

「いや違うんだ…… 俺はてっきり希ちゃんだと思って。信じてくれ! 」

事実だがどう考えても下手な言い訳。通じるはずがない。

重ねれば重ねるほど怪しく言い訳っぽく聞こえてしまう。

この状況に陥ったら諦めてすぐに認めるのをお勧めする。

ただ俺はまだ現実を受け入れられないのでもう少しだけでも粘ろうと思う。


「ウソを吐け! この変態野郎! 」

怒りと悲しみに燃える陸。これは暴走の予感。

しかしどう勘違いしたら俺が変態になるんだ?

ただの成り行きじゃないか。


「やっぱり希ちゃんが…… まさか君は偽物? 」

「はあ? 私は正真正銘の希。見れば分かるでしょう? 

どうしたの海君? おかしいよ」

アイミめ…… 下手な芝居しやがって。どうやら陸も協力してるらしい。

二対一ではさすがに分が悪い。


「正体を現せアイミ! 君が希ちゃんであるはずがないんだ! 」

事実はどうでもいい。ここはどうにかアイミと言い張って乗り切れたらな。

「本気で言ってる? 海君に何がいいか聞いたでしょう? だからほらおしるこ」

うーん。やっぱり怒ってるな。誰がこんな真夏におしるこを飲む奴が居るんだよ?

しかも甘ったるいじゃないか。真冬に飲むのがいいんであって真夏は遠慮したい。

「いや悪い! 何買うか忘れたって言うからおしるこが好きって教えたんだよね」

これは奴のいたずらだったらしい。モテる俺に嫉妬したな?

一体いつ俺がおしるこが好きだって言った? そもそも真夏に何であるんだ?

それとも本気なのか? 二人ともそう言うところあるんだよな。


「だったらこいつは何でここに? 確か隣は希ちゃんでは? 」

紛らわしく隣で寝て…… 顔が見えないから間違えたじゃないか。

「知るか! 本人に聞いてみろ」

確かに。俺に分からないことが奴に分かるはずない。

奴が分からないことでも俺には分かる。でも逆はない。


「どうして隣にお前が? 起きろってアイミ! アイミ! 」

気持ちよく寝ているところを無理やり起こす。

「もうせっかく恋人気分だったのに邪魔するんだから。へへへ…… 」

まだ半分夢の中らしい。早く戻ってこい。


「何でお前が隣に座ってるんだよ? 」

「ははは…… 窓の外を見てたからつい…… 自由席だからいいでしょう? 」

悪びれることなく笑うどこかおかしい元ストーカー。

よく確認もせずに希ちゃんだと勘違いした俺も悪いんだ。

これ以上追及するのはよそう。でも文句ぐらい言ってもいいよな?

「よくない! 誤解されただろうが! 」

「誤解? 私たち付き合ってるんだからこれくらい当然でしょう! 」

とんでもないほらを吹く困った元ストーカー。そんな事実はない。

俺は希ちゃんだと思って…… そんな言い訳通用しないんだろうな。

情けないことに希ちゃんとアイミの区別がつかなかったらしい。


「どおりで変な臭いすると思ったんだよな…… 」

負け惜しみを言いつつどうにか取り繕うがまったくの無駄に終わりそう。

「いや! もう最低! これキンモクセイの香り。お気に入りなんだからね! 」

そう言って思いっきりビンタをする。

「痛えな! 何をするんだよ? 信じられねえなこいつ! 」

ショックでつい声を荒げる。

勝手に勘違いしたのは俺だから文句は言えないけどさ。

調子に乗せると陸と同様何するか分からない。


「なあ陸…… 俺がやっぱり悪いのかな? 」

「知るか! 臭いぐらいで文句言うからだろう? 

俺だって嗅ぎたいさ。でも我慢してるんだからよ」

上級者向けの危ない発言が出たところで電車は目的地へ。


「さあ行きましょうあなた」

アイミが腕を取って引っ張っていく。

「待ってくれ…… 荷物が重いんだ。急がないでくれ! 」

何も俺だけじゃない。奴の荷物はパンパン。

宇宙人捕獲には余念がない。ただ重すぎて倒れそうなのは間違いない。

最後の乗り換えをどうにか終える。


「もう限界! 」

苦しそうにゼイゼイ言う陸。まったくこれくらいでへばるんじゃない。

宇宙人探しはこんなものじゃないだろう。

「なああれ見てみろよ。おかしな格好した挙動不審者だぜ」

ただの不審者ではなさそう。たぶん彼も宇宙人探索に来たのだろう。

陸の仲間と言う訳だ。


「おい仲間だぞ! そろそろ別れようぜ」

「待ってくれよ! 本気か? 本気なのか? 」

うろたえ始める陸。どうしたんだ? 一体何が問題なんだ?

アイミもつけるんだから文句ないだろう? あのおっさんと仲良くしたらいい。


たぶん俺たちと同じ電車に乗ってたんだろうな?

あっちにもこっちにも似たような男が見える。

「なあ陸。ここ本当に有名なんだな? 」

恐らく皆宇宙人捕獲に来てるんだろう。

「言ったろ? 今年雑誌やテレビで取り上げられてから人気に火がついたんだ」

通称・エイリアンタウンは本当だったらしい。

その辺のことには疎いから。

「まさかネイチャーにでも載ったのか? 」

「知るかよ。それより俺泊るところないんだ」


引き続きボックス席で陸の説得をしつつのんびり終点まで。

どうやら陸は現実を目の当たりにして怖気づいたのだろう。


                 続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ