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トラブル発生! 相性抜群の二人

電車は蛇行を繰り返すと徐々にスピードを上げた。

間もなく大きなトンネルに差し掛かるところ。

ここを抜けるとぐっと寂しくなる。

どんどん田舎へと変貌。

父さんの実家にはまだまだ遠いがもう都会の雰囲気は感じられない。

窓の外はただ田畑が広がりちらほらと家が見える程度。

当時と違うのは無数に広がる太陽光発電の残骸ぐらいだろうか。

五年や十年で劇的に変わることなどない。

のんびりと時が流れている。そんな風に外からは見える。

ただ見えるだけでそうとも限らないのが田舎のややっこしいところ。


そうもう戻れはしない。ここまで来れば成し遂げるしかない。

最大の目的であるミライとの再会。

そして運命に立ち向かいミライを呪縛から解放してやる。

たとえそれが不可能だとしても最後まで全力を尽くす。


決心し己を奮い立たせるが気になることが。

何となくだが嫌な予感がするんだよな。

一人になると不安が押し寄せて来る。

本当にミライに出会えるのか?

近づけば近づくほど不安は大きくなるばかり。

なあミライ。本当に俺を求めてるのか?

そもそも存在するのか? 

それさえもあやふや。


ミライについて俺はほとんど知らない。名前と置かれた状況ぐらい。

しかもすべて本人から聞いたもの。

疑う訳じゃないがすべて彼女の妄想とも考えられる。

集落の近くに住んでいるのは間違いないだろうが。それさえも確かではない。

会いたいが会いたくない。そんな状態。

俺自身が再会するのを無意識に恐れている。

認めたくはないがそうとしか思えない。


陸のお陰で希ちゃんが仲間になった。

桃太郎で言うところのキジ。

きれいな羽根を持った静かに鳴く賢いキジだ。

このままサルとイヌもお供にできたらなあと妄想する。


アイミは迷ってるらしい。どうやら俺の初恋相手探しが気に喰わないのだろう。

それはそうか。アイミにとってはメリットがないどころかライバルが増えるだけ。

ははは…… 俺が言ってどうするんだよな? 

これは大変デリケートな問題。

判断をそれぞれに委ねるしかない。


希ちゃんは一切気にすることなく協力してくれるらしい。

希ちゃんか…… クラスでは目立たない方で人気があるとは言えない。

ただクラブではそれなりに。女子一人の上に気配りもできよく見ると可愛いから。

サークルクラッシャー希の異名を持つと部長が冗談で言っていたっけ。

とは言え親しく話すのは俺と陸ぐらいなもの。

他の部員は希ちゃんを理解できずにずかずかと踏み込んでしまう。

陸だって思いっきり踏み越えるが俺が間に入ることでどうにか。

やってることは無茶苦茶でトラブルメイカーだけど馬鹿で純粋だから。

何度もやるうちに希ちゃんも慣れたらしい。


俺としても貴重な話し相手でとても大切な仲間だからな。

でもどうなんだろう? こんなことに協力させていいのか?

俺は愛も夢も希望も捨てただミライだけを。

二人に頼ろうとするのは許されるのか?


ミライ…… 今君はどうしてるんだ?

ああ会いたい。どこにいるんだミライ?

おっと冷静に冷静に。何を考えてるんだ俺は?


「アイミは陸の手伝いを頼む。とにかく誰にも迷惑を掛けないように」

さすがに陸を一人にしておけない。暴走する前に止める必要がある。

ただいつ暴走するかは誰にも分からない。突発的だからな。

電動自転車日本一周の旅も想定外のことがあり早々に切り上げた。

もしまだ続けていたらと思うとゾッとする。

やっぱり陸を一人にしておけない。

宇宙人捜索など何を仕出かすか分からないからな。

監視が必要。


「冗談でしょう? 何で私が? 」

保護者をつけるのは当然なのにごねてばかり。自分で誘いを断ったんだろうが。

「ホラ同じチームだろ? 仲良くしなくちゃ。ねえ希ちゃん」

「えっと…… もう海君。私まで巻き込まないでよ。

アイミも好きにすればいい」

どうにか俺たちが険悪にならないようにと気を遣う。さすがは希ちゃんだ。

「私…… 」


ドンドン

ドンドン

「ちょっとうるさいな! 」

アイミが陸の方を睨む。どうせこいつだろうと決めつけるがそっちじゃない。


ドンドン

ドンドン

後ろの酔っ払いが足をばたつかせている。何て足癖の悪い。

これはもう相当できあがってるな? 迷惑なんだよなあ。

帰りなのか? 昼間と言うか朝っぱらから飲んでる。

旅行と言うよりもビジネス? 

しっかりした紺のスーツ。冠婚葬祭の帰りかもしれない。

なぜ隣の人は止めない? 知り合いだろう?

こっちが迷惑するじゃないか。


「おいおっさん何をするんだよ! 」

陸はこういう時に怯まない。何も考えずに突っ込んで行く。

その結果トラブルを引き寄せてしまう。

この場合は大人しく嵐が過ぎ去るのを待つのが正解。

団体行動がとれないと一層困ったことになる。


「ああん何か言ったかガキ! 」

ほらやっぱりトラブルになった。

希ちゃんが震えてる。俺だって嫌だよこんな騒ぎに巻き込まれるのは。

アイミだって恐らく震えてる…… あれアイミは?


「おっさんふざけるな! そっちが悪いんだろ? 」

おっと好戦的なアイミはいつの間にか陸の応援に。

やっぱりこのコンビ相性いいじゃないか。俺が心配することもないだろう。

「いや済まない。きちんとするので許してくれや姉ちゃん」

サラリーマンはシラフに戻り謝罪の言葉を述べる。


強気のアイミの勝利。

こうして静かになった車内で再び話し合うことになった。


「私怖かった! 」

思いっきり嘘を吐いて胸に飛び込んでくるアイミ。

危ない奴め。陸にお似合いさ。お供は希ちゃんだけでいい。


                   続く

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