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告白! 五年前の真実

スケルトンか…… 例の失踪事件が尾を引いてるんだろうな。

あれからもう二年が経とうとしてる。どうしてるのかな?


「スケルトンはいい。それより俺が倒れた時に何か言ってなかったか? 」

不自然なほどにその話題に触れようとしない面々。

まるで隠しごとをしてるようでどうも気持ちが悪い。

「なあ陸! 」

「倒れた時は誰だっておかしなことを叫んじまうものさ。だから気にするなって」

らしくなく励ます陸。こう言う時は絶対に何かある。

嘘がつけないのが奴のいいところ。追及すれば耐えきれずに吐く。

おっと…… ご飯中にマナー違反だよな。


「気にし過ぎだって。ホラもっと楽しく。せっかくの旅行気分が台無しでしょう」

「なあアイミだって聞いたんだろう? 」

「その…… 愛してるって。好きだって私に何度も」

元ストーカーのアイミは都合のいいように話を作る。

本当に信用ならない。

希ちゃんと陸はこれ以上追及されないように口を閉ざす。

納得できない。何でもないならなぜここまで頑ななのか?

二人が口を閉ざした以上アイミから聞くしか手はない。


「アイミ? アイミ? アイミちゃん? 」

「ごめん冗談。ミライって絶叫してた…… 」

言いにくそうに俯くアイミの頭を撫でる天使のような希ちゃん。

「まさか陸も知ってたのか? 」

「いや知ってるも何も…… 」

「そうだよ。皆聞いてたに決まってるじゃん! あの時は心配したんだから」

救急車が来るまでの間ずっと見守っていたと。

アイミの表情が曇る。まずい最悪な雰囲気。


「ミライって誰? 」

一番真面目で興味なさげな希ちゃんが無遠慮に聞く。それだけ気に掛けてる証拠。

誰って…… それは五年前の彼女。でもそんなこと言えない。

せっかくついて来てもらった彼女たちを裏切ることになる。

ただそれでも俺はいいと思っている。ただ言い辛いのは確か。


愛も夢も希望も友も家族さえも捨ててミライの元へ。

それくらいの覚悟がなくてはミライは救えない。

そんな風に考えて一人で帰省。

でもどうする? すべてを告白すべきか?

ただの帰省だと言ってるのに余計な心配させることないよな。

うーん。どうしよう?


「ミライ…… それは明日のこと」

「ふざけないで! 希は真面目に聞いてるんだよ? 」

アイミが熱くなる。

「おいまさかこのことを母さんに? 」

絶対に誰にも。家族にさえも。俺の本当の狙いを知られてはならない。

仮に俺が姿を消してもこのことだけは隠し通さなければ。

「ああそれはまずいかもと思ってよ」

こんな時だけまともに戻る陸。あるいはまともを演じてるのか?


「陸…… お前には話しただろう? 」

「まさか…… 実在したのかあの夢の女の子? 」

「どう言うこと? きちんと話して! 」

「いや…… これは本人から直接聞いた方がいいと思うぜ」

うわ…… 俺に振りやがった。

まあいいか。どうせ今回の旅の目的が彼女なのだから。

しかし改めて説明するのは相当恥ずかしい気がする。


「実は…… 五年前俺と彼女は付き合ってたんだ」

「ええ? 嘘でしょう? 」

アイミが大声を出す。

うわ…… 注目される前に逃げるように下を向く。


おいおいあんな恥ずかしい話を不特定多数の者に披露するのか? 冗談じゃない。

でも俺は信じてる訳で。陸に代わりに説明させてもかえって混乱するだけ。

これは困ったぞ。覚悟を決めるか。


咳払いを一つして喉の確認に時間をかけてから話し始める。

アイミに希ちゃんは興味津々。陸はなぜか狂ったように笑っている。

その他大勢が耳を傾けている。


おお女神様よ! どうぞお許しください! 

もはや妄想としか思えないような話を告白するこの哀れな子羊をお許しください!

ついいるかも定かではない女神様に許しを乞う。


弁当を片付けてお茶を流し込んでから改めて話をする。

「あれは五年前。俺が小学生の頃。今みたいに父さんの実家に帰省していた。

時期から行くとお盆が過ぎた頃だから後一週間後ぐらいかな」

うわ話し始めてしまった。もう後戻りできない。

大体のことは陸に話してるからな。奴にも心配をかけた。

「時期はいいから核心に触れないさいよ! 」

元ストーカーの分際で生意気なんだよな。何だソフトストーカーってのは?

重いっての。いい加減俺の気持ちに気づけよな。


「一人で遊んでいるといつの間にか丘の上の草原らしきところに出たんだ。

そこに一人の女の子がいたって話。その子とは結局二日三日しか会ってない。

でも彼女も俺も本気だった。だってかわいかったから」

もうこれぐらいでいいよな? 充分恥ずかしいんですけど。

それこそ立っていられないくらい。ただ今は座ってるんだけど。


「その初恋の子が忘れらないって話ね。よくあるよね? 」

「うん。私も似たような経験してる」

アイミも希ちゃんも普通だと言ってくれた。ならば恥ずかしがることはないか。

「そのかわいい女の子がミライだ」

ついに重大発言をしてしまう。今まで過去の思い出だったものがベールを脱ぐ。

名前を思い出したのはつい最近。顔をだってあやふやだから。


「最低! 私と言う者がありながら他の女に行くなんて信じられない! 」

嘘だろ? いきなり怒り出したアイミ。さっきまで頷いていたじゃないか?

「落ち着けよ! その子がミライなのは予想がつくだろう? 」

「もう知らない! 私帰る! 」

拗ねてしまうアイミ。気持ちは分かるけどさ。でも堪えて欲しいな。

聞いてきたのはそっちじゃないか。それで怒るなんて反則だろう?


「アイミちゃんもそんなに怒るなよ。奴だって辛いんだからさ」

陸が助け舟を出す。

「あの…… まさかその子を探しに行くのでは? 」

希ちゃんが口を開く。

「いや…… その…… 何て言うか…… 」

「はっきりしなさいよ! もう今更隠してどうするの? 」

アイミが冷静さを取り戻した。もう戻るなどと我がまま言わない。

言ってもどうせ実現できない。もう戻れないところまで来ている。

引き返すことは不可能だ。後は協力するしかない。

ミライのためにも俺自身のためにも探し出すしかない。

そのために今回来たんだから。


「それくらいで許してやってくれ。それより先に進もうぜ」

一旦ミライの話は置いておくことに。

聞き分けのいい希ちゃんだけでなくアイミもいるのだから。

気分を変える意味でも陸の妄想話に付き合うことに。

いい暇つぶしになるし追及をかわせるから大人しく聞くとしよう。


                 続く

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