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皆で楽しくお食事タイム

ガタンと音がすると最初の乗り換え駅。

「なあ陸。お前たちも本当につき合うんだよな? 」

詳細を一切語らないから不安で仕方がない。

近くまでとは言ったがどこまでなのか? そろそろ教えてくれてもいいのに。

その辺がいい加減だから困るんだよな。大丈夫とだけ。


「ああそうだ! 希ちゃんと俺がつき合うんだ! 」

どうやら本気らしい。冗談だよな? いやそれよりも質問内容と合ってないぞ。

陸が赤くなるから希ちゃんまで赤くなる。いや青くなった気もする。

この手の話が嫌なんだろう。特にふざけて勢いで告白。俺も人のこと言えないが。

そう言う無神経なところが奴にはある。積極的と言ってもいいが。

話のどさくさに紛れて本当に何を言ってるんだろう? 呆れる。

こう言うことするから嫌われるんだろうな。


おっと呑気に話してる場合じゃない。乗り換えだ!

「ほら皆行こう! 」

そう言って俺の腕を無理やり引っ張っていくアイミ。

「待て! 俺はいいがあの二人が固まって動きそうにない」

二人の時間が止まってるよう。

「ホラ! 希も! 」

生意気にも呼び捨て。思いっきり後輩のくせに。

俺たちは同学年だけどクラブではまるっきり違う。

彼女は新入部員。こっちは一年からだからな。アイミの位は現一年よりも下だ。

先輩を敬うべきだと教えたのに聞いちゃいない。

まあアイミがそんなタイプでないのはよく分かってる。

何て言っても俺のストーカーで謎めく隣のクラスの女の子。


その存在は謎のベールに包まれていて未だに何も分かっていない。

陸はアイミこそがミライではないかと適当なこと言うがあり得ない。

そろそろ真相を直接彼女の口から聞く必要がありそうだ。

謎を謎のままも悪くないががどう接していいか迷うからな。

「うん分かった。ほら陸君も」

どうやら希ちゃんは気にせずに切り替えたよう。

まあこの程度のことで神経使っていたら奴の世話はできないか。


問題はアイミの方だよな。

もちろん気持ちの問題でそれは彼女たちのことだからいいんだけど。

せめて呼び捨てはやめるべきだ。

せめて俺にだけでもさん付けしてよね。頼みます。

ただそんな風に頼むとおかしな呼び方をするだろうから言えない。


「よし乗り換えだ! 」

ちょっとしたハプニングで降り損なうところだった。

危ない危ない。いくら余裕でも限度がある。

そもそも電車は約十分遅れてる訳で。

もしあのまま降り損なうか乗り換えに失敗すれば到着が大幅に遅れただろう。

計算では二時間の遅れとなる。

だから到着ギリギリのトラブルは回避しなければならない。

集団になればなるほど起こり得るハプニング。

元々一人での予定だったからな。

楽しくわいわいやれるのはいいがその分だけ集中力が落ちる。


「そう言えばあの後どうなったんだっけ? 」

「あの後? 」

もう箸をつけている。まだ頂きますと言ってないのに。

がっついてる奴だな。元からこうだから今更文句は言わないけどさ。

「そう。俺が倒れた後の話」


乗り換えを済ませどうにか予定通りに進んでいる。

結局夏休みと言うこともあり急だったのも重なって指定席は取れなかった。

残念だが結果的に良かったと。まさか陸たちがついて来るとは。

自由席に座れたから何の問題もない。


ボックス席を回転させて四人でまずは腹ごしらえ。

やはり旅と言えば駅弁でしょう。

「あれからどうなった? 」

「俺たちのチームが勝ったぜ」

「そうじゃなくて…… 例えばおかしな行動してなかったか? 」

ビーチバレーの結果などどうでもいい。

記憶のなかった時のことがどうしても気になってしまう。


「そんなことより食べようぜ! 」

陸はもう待てないと弁当に手をつける。

いやさっきから食べてるじゃないか。待ってる気などないくせに。

「あの日のことなら…… 」

一口食べると隠すように横を向く。食べてるところを見られたくないんだろうな。

分かる気もする。そう言うところが希ちゃんらしい。

アイミもそう言うところあるけど俺がじっと見なければ気にしない。


「何か覚えてる? 」

「泡を吹いたから人工呼吸してあげたの」

「嘘だろ? 」

「本当だって! ねえ二人とも」

「そうだっけか? 確か救急車を呼んだ後に先生がパニックを起こしてたぜ」

こんなおかしな嘘を吐くはずない。だったら事実か? 

でも何だか求めてたものとは違ったな。

「そうそう」

いきなり訂正しだすアイミ。まったく信用できない。

「何だか可哀想なほどショックを受けていたみたい」

希ちゃんが言うのなら間違いない。


「どんな感じ? 」

「どんなって言われてもねえ」

「そうそう。またかって頭を抱えていたぜ」

アイミも陸も顧問のスケルトンの異常までのうろたえ方に衝撃を受けたらしい。

「スケ先生があそこまで取り乱すなんてどうしてだろうって話してた」


スケルトンはサマー部の顧問で大会には引率せずに合宿に参加する変わった人だ。

その先生が取り乱すとはね。ちなみにスケルトンは生徒からの愛称。

いつの間にか生徒から教師に至るまでそう呼ばれるようになった。

ちなみに希ちゃんだけはスケ先生と呼んでいる。失礼に当たるからだそう。

でもスケ先生には別の意味。軽蔑が含まれてないかと深読みしてしまう。

ただ誰も本名を知らないので愛称で。調べれば分かることだが。


「まあスケルトンのことはもういい。いろいろあったんだろうぜきっと」

自分で先に話しといて格好つけやがって。食いながらは似合わない。

「そうそう。放っておきましょう。今回のこととは関係ないからさ」

アイミはサンドイッチのレタスを避けた。

急いで買ったからな。間違えたか?

「いらないならくれ」

「もう…… しょうがないな…… 」

俯いて恥ずかしそうにする。

うん。悪くない。

俺はどちらかと言うときゅうりの方が合わない気がするな。


スケルトンか…… 未だに例の失踪事件が尾を引いてるんだろうな。

もう二年が経とうとしてる。どうしてるのかな?

戻って来ることはあるんだろうか?


                  続く

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