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準備完了 後は陸をどうにかするだけ

陸の説得は難しそうだ。

ここは仕方ない。攻め方を変えるか。

奴が今すぐにでも帰るように仕向けるとしよう。


「お前そんなこと言ってていいのか? 自由研究は終わったのかよ? 」

どうせすぐ分かる嘘だがそれでも奴には有効。

それに時間を稼げればいい。どうせ明日は出発するんだから。

その後のことは知ったことではない。

さあどんな風に反応してくれるのかな?


「待ってくれ…… あったっけそんなの? 」

ほら動揺している。確か前も似たようなことがあったよな。

「ふふふ…… バカだな。登校日に絵日記と一緒に提出だろうが?

聞いてなかったのかよ? また叱られるぞ」

無理があると分かってる。でも奴のことだから騙せるのではと仕掛けてみた。

これで奴が無謀で間抜けでとんでもなくバカな挑戦をせずに済む。

親友としておかしな道に進む者を見逃すことはできない。


「聞いてないよ! 酷いよ! 」

混乱する陸。やはり数学と算数を間違えるくらいだから信じてしまう。

昔からそうだったな。ちょっと目を離すと訳の分からない勧誘に引っ掛かって。

いつの間にか高価な教材を買わされそうになる。ツボも怪しげなグッズも。

その度に俺がどうにかしようとするが逃げるんだよね。

逃げ足がとんでもなく早いから。

一度本当に買ってしまったことがあったな。

その時は結局奴の親に言ってどうにかしてもらった。

その後のことはあえて聞かないようにしてる。それが優しさだ。


「絵日記はありきたりだと先生に気づかれるぞ。天気も忘れるな。

いいか。きちんとその日にあったことを書き記すんだ」

あれ…… これでいいんだよな? どうもいまいち覚えてない。

どうせ嘘だから適当にアドバイスしてしまう。

「でも俺…… ちょっと写させてくれよ」

「おいおいそれではお前のためにならないだろう?

いいか一か月分の記録を適当に埋めろ。俺は一切協力しないからな! 」

厳しく突き放す。これで少しは奴も反省するだろう。


ふう危ない危ない。もう少し気づかれるところだった。俺だってまだやってない。

だって高校生だからやる必要がない。やるとしたら兄弟の手伝いぐらいだろう。

そもそも夏休み初めにあれだけ勉強したんだからもう充分だろうよ。

補習は俺たちだけだぜ。そう言えばもう一人いたような気もするが。

そのもう一人の存在があやふやなんだよな。だからあまり思い出したくない。


こうして奴は慌てて帰って行った。すぐに自由研究に取り掛かるんだろうな。

何を作るつもりだろう? ちょっとだけ興味がある。

宇宙船探しはまたいつかやればいいさ。

気が向いた超ヒマな時にでも。それまで宇宙船のことは忘れてろ。

さあこれで明日の支度ができる。余計なのに時間を取られえた。

珍しく手をつけてない菓子を平らげる。

栄養補給完了。さあ急いで準備に取り掛かろう。


明日は早いからな。九時には寝るか。遅刻したらシャレにならないからな。

絶対必要なものは着替えと金ぐらい。

学生証に保険証は財布にあるからいいとしてお薬手帳も持っていくか。

それから旅には必需品の本。どうせ読まないだろうけど雰囲気で。

ああでもこれは無駄かな? かさばるから最後に判断しよう。

後は水着? 一応は持っていく? あっちで泳ぐこともあるかもな。

それから手紙が二通。母さんからと婆ちゃんから。

これを渡さないと叱られる。絶対忘れないようにしないと。

念のために胃薬と下痢止めに酔い止め。

それから救急セット。

バランス栄養食に予備の水。

今までの調査資料も。

チュウシンコウについての資料は僅か。

今回のメインはあくまでミライに会うこと。

それから先のことはその時次第。出たとこ勝負でいい。


ピンポーン!

計五回も。相当焦ってる証拠だな。

どうせ陸の奴が文句を言いに来たんだろうな。

少しからかい過ぎた? もしかして相当怒ってる?

だったら居留守を使っちまおうかな。

もう夕方だ。支度はほぼ完了。後は確認するだけ。

仮に忘れものがあっても絶対に必要なものを忘れなければそれでいい。

ライトと笛を入れて後は防寒具だけだな。

これも必要なんだかどうなのか分かったものではないが。それでも念のためさ。


「おい嘘つきやがって! それに何で出ないんだよ! 」

怒り心頭で駆けてくる困った奴。これは食い殺されるか?

「どうした? 自由研究選びに難航してるのか? だったらアドバイスするぞ」

とにかく落ち着かせる。


「落ち着いたか? それで何の用だ? 明日から出掛けるんだから早く頼む」

怒ってる時はそのまま聞こうとしては危険だ。

ここは違う話に持って行き逸らすのがプロ。

「この野郎噓言いやがって! 俺たち高校生だから自由研究はないと言ってたぞ」

どうやら確認を取ったらしい。意外にも頭が回る。これは想定外。

「ああ知ってるよ」

「この野郎! 絵日記も! 」

「だから知ってるっって! 用はそれだけか? 」

適当にあしらう。これが怒り狂った奴の対処法。


「からかったんだろう? これで計画は台無しだ! 」

奴はそう言うけれど宇宙船探しする方がよっぽど無駄なこと。

「まあまあ。それで誰に確認したんだ? 弟か? 」

この間抜けに親切に教えてくれる者は限られている。

ただ弟も似たような者だから。無理そうだが。

「希ちゃんが大丈夫だって。自分もやってないからって」

やってないから大丈夫? それは無理がないか?

やってないから急いでやるべきなのでは?


「バレたか。そうだ。高校生には自由研究もなければ絵日記もない。

大体絵日記は小学生だろうが! 」

騙される方が悪いと言う空気を作る。

これで責め立てられることはないだろう。


                続く

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