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希ちゃん

駅前の牛丼屋さんで食事をすることに。

熱々のご飯と甘い香りの肉が融合して食欲をそそる。

紅ショウガかけ放題だから助かるんだよな。

牛丼に無料トッピングと調味料で味を調えたら完成。


「頂きます! 」

「今日は俺のおごりだ。どんどん食ってくれ」

「悪いなって…… お前何か企んでるだろう? 」

奴はケチではないがこう言うことになると頭が回る。

「まさか明日は俺がおごるのか? 」

明日も補習。親友と一緒に昼を取るのは当たり前。

「そうだな。今日は牛丼だから明日はファミレスかな」

遠慮がちに言うが俺が損するじゃないか。

そんなの認められない。却下に決まってる。


「おい待て! それだと不公平だろうが」

文句を言うが今更遅いと突っぱねる。

もう注文を済ませた。

「いや無理しておごらなくても…… 自分のぐらいは自分でさ…… 」

「不公平だと思うなら好きなだけ追加しろよな。

でも残すのは店の人に悪いからまず最初に食べてからな」

こいつうまいこと言いやがって。

最初に注文すれば無理にでも頼もうとするが一杯食べてからではその気力はない。


仕方なしにもう一杯追加して終了。

いくら腹が減ってると言ってもこれ以上は無理。

腹を膨らませて幸福な気持ちになる。

ただ明日本当に俺が奢るなら浸ってる時ではないよな。

何か手を打たないとまずいことに。


「まったくよく食うな。豚かよお前は」

奴に呆れられる。自分だって三杯食ってるくせに。これも作戦の一つだろう。

「そんなことより合宿の話だけどよ」

別に大食いを咎められて話題を変えたとかではない。

「ああ俺も参加するよ。前回断り切れなかったからな」

奴は腹を満たしたので機嫌がいい。

ただ牛丼屋ってなかなかゆっくりしていられない。

いくら混んでなくても何となく長居はできない感じ。

だが奴はお構いなし。俺も視線を感じつつも耳を傾ける。

牛丼の次はステーキかなと冗談を言う。

これだから奴のおごりは受けたくない。


「希ちゃんが来れないんだって。それでもお前行くか? 」

冗談のつもりで言ったのだが奴は動揺する。

「冗談じゃないよ。希ちゃんが行かなかったら意味ないだろう? 

やっぱりお前部長に断ってくれ。今からではとてもとても」

「ははは! 冗談だって。希ちゃんお前を嫌ってるだけで合宿には参加するって」

「ウソだろう? 俺嫌われてるのか? 」

「自覚無いのか? でも大丈夫。うまく行く方法があるからさ」

奴は俺に縋る。でもどうしようかな。

「そうだ。花を贈るといいよ。でもタイミングよくな。引かれたらお終いだから」

アドバイスをして奴をコントロール下に置く。


「それからそれから」

催促されても困るんだよな。今適当に思いついただけだから。

余計なことと皆の迷惑になるような行動を控えればたぶん大丈夫なはずだ。

でもそれを奴に言うのは酷。個性みたいなものだからな。

「前で引っ張ればいい。後ろから追いかけたら嫌われる。

当然横に着こうとするなよ。それは俺の役目だからな」

こうして適当に話を作る。


「お前ふざけてないか? 」

「いやそんなことはない。だからおごる件だけどさ…… 」

「やっぱりそっちかよ。でも希ちゃんに気に入られたらそれくらい構わない。

明日だっておごったって構わないぜ」

断言する。有り難い話だが失敗しても俺は一切責任を取らない。

そもそも希ちゃんについて知ってることと言ったら……

何かあったような。少しだけ気になっていたことが。でも思い出せない。


ああ! 忘れていた。今年の冬にチョコを貰ったんだった。

同じ部活だから義理だと思って軽くありがとうって。

でも後でよく考えたらこれって…… もう今更確かめる術はない。

確かにあの時何か言いたそうな顔をしていた。しかも言いかけていた。

でも奴が気になってありがとうって言っただけだった。

もしかして俺って最低なのか? 自分のことよりも奴が貰えない方が気になって。

だって俺には自信が…… 俺には絶対の自信が…… 

あれおかしいな? 自分の自信がどこから来るのか分からない。


どうして俺は自分は関係ないなどと考えていたんだろう?

俺には運命の人がいる。その人が待っていると。

待ち焦がれているなどと本気で思っていた。

それはただの妄想や夢ではなく裏付けされた何かがあったはずだ。

奴のことはからかうのだが実際自分は違うと思える根拠は実のところ何もない。

ただ希ちゃんから貰ったチョコがその種類のものなら俺にはあることになる。

何だか心許ない話だがそう言うこと。


あの後きちんとお返しをしたし一体どっちだったんだろう?

部長や部員にもそれとなく聞いてみたが知らなそうだった。

うーん。これってまずい状態? もう嫌われてないか?

奴に偉そうに言える立場ではない。


「おいどうしたんだよぼうっとして? お前そう言うところあるぞ」

「いや何でも…… 」

「ほら行くぞ」

奴に言われるまま店を後にする。


冬から五か月が経っている。これからどう振る舞えばいいか分からない。

受け入れたのに放置してるみたいで最低だ。

勘違いしていましたと素直に告白しても絶対に信じてもらえないよな。

どうすればいいんだ? 告白するのか? しない方がいいのか?

夏休みに入ったことだしまた次の機会にでも考えればいいか。


                 続く

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