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出発前日のゴタゴタ

夜。

予定よりも遅れたがようやく三日後に父さんのところへ。

母さんからの許しを得て準備を進めるつもりが…… まだしつこく説得。

俺の心変わりを期待してるらしい。


「ねえ足は大丈夫なの? 」

母さんだけでなく婆ちゃんを含めた三人で話し合う。

「うーん。私しゃあ反対だよ」

そう言ってせんべいを頬張り濃い茶をすする。

「何でだよ婆ちゃん! 応援するって言っただろう? 」

酷過ぎる。そこまで簡単に変わり身できるなんて呆れを通り越し感心してしまう。

「そんなこと言ったかい? でも行けばきっと後悔するよ」

せっかく許しが出たのに婆ちゃんがブツブツと。


「どうして? 何かあるの? 」

「いや特にないね。でもあんただって分かるだろう? 一人異物が混じるんだよ」

どうやら酷い扱いされるのではないかと心配してくれるらしい。

だがあり得ない。少なくても五年前に離婚するまで良好な関係だったはず。

まさか孫や息子の俺を邪魔者扱いするはずがない。

大歓迎してくれる。そうに違いない。俺は信じる。人はそこまで変わらないさ。


「婆ちゃんは何でそこまで言うのさ? 」

「あんたの父さんはどうでもいい。だけどその兄弟も親戚も気に入らないんだよ」

正直な婆ちゃん。でもそれは心配ない。俺にはいい印象しかない。

離婚したことでいつの間にか嫌な思い出に塗り替えられてしまったんだろうな。

残念で悲しいが仕方ないこと。

母さんから許可を得るもどうも婆ちゃんの方が心配と言うよりごねる。

話し合いは結局平行線のまま。翌日もその翌日でも結論が出ないまま。

こうしてすっきりしないまま無為に日々が過ぎて行く。


「仕方ないね。あんたも本当にそっちでいいんだね? 」

「だから何度もそう言ってるだろう? 聞いてなかったのかよ! 」

つい喧嘩腰になる。

でも口下手で頭もよくないので勝てない。


「分かったよ。行っておいで。でも必ずお土産を買って来るんだよ」

婆ちゃんはまかさ俺の心を読んで反対してたのか?

どうしても行かなくてはと言う強い思いが伝わって警戒された?

やはり隠しごとはできないな。

本心を隠し嘘を通そうとしても必ず見破られてしまう。

「ごめん…… ありがとう」


「ほら海人。行くんでしょう? 」

「うん」

最後の確認。それでもぶれない。すべてはミライのために。

こうして出発日を明日に控えそわそわ。何だか落ち着かない。

一人寂しく…… と言ってもそれを望んだのは俺。

行くことは父さんたちにも当然話が通ってる。


母さんたちがゆっくり三泊するので俺も合わせて三泊四日にすることに。

長ければ長いほどチャンスはあるがそれ以上は迷惑になるだろうし。

でもミライ探しはそう簡単ではないだろうな。

だから行ってみてから判断するしかない。


ただ一つ秘密にしていることが。

もしミライと出会えたらそのまま戻らないつもりだ。

それだけ今回の旅は俺にとって重要で人生のターニングポイントになるだろう。

もう俺は決めている。すべてはミライのために。

愛も夢も希も友も家さえも捨ててただミライのために生きようと思う。

悪いなとは思うけどこれはもう決めたこと。


「足はもう痛くない? 」

引きずるような動きが気になったらしい。

でも俺からしたら完全回復してるからな。

「大丈夫。足も痛くないし計画もしっかり立ててるから心配しないで」

これ以上余計な引き留めをされたくない。少し不安だけど何の問題もないさ。


ピンポーン! 

こんな時に誰だよ……

「悪い。ちょっと話があるんだ」

自転車で日本一周の旅に出かけたはずの陸がなぜか姿を見せる。

てっきり九月を過ぎても戻って来れずに説教を喰らうと予想していたのに。


「どうしたんだよ? 日本一周の途中だろ? 」

なぜか夏休み真っ最中に戻って来る珍事。

「ああ覚えてたのか? でもそれは一旦中断することにした」

笑うがどうも奴の考えてることが分からない。

「どう言うことか説明しろ! 俺に一体何の用がある? 」

こういう時に厄介ごとを持ち込んでくるのが奴だ。

どうせ今回もまた何かあるんだろう?


「俺は明日の支度で忙しんだ。悪いけど…… 」

断ろうとするがちょうどいいと乗り気。もはや意味不明。

面倒だな。奴を通すんじゃなかったな。

我が家の平穏のためにももう少し慎重にすべきだった。

分かってるんだけどどうしても放っては置けない。


「それで用件は何だ? 」

ため息を一つ。分かりやすく吐く。ただこれで察するほど奴は甘くない。

「実はさ…… 明日から俺たち宇宙船を探そうと思うんだ」

うわ…… 訳が分からない奴だな。どうして日本一周が宇宙船探しになるんだ。

「きちんと分かるように順序立てて説明してくれ」

難しいお願いではないはずなのに悩む陸。


「それが…… 急に宇宙人探しがしたくなったから」

意味不明。まさかこれで順序立てて説明してるつもりか?

このままでは明日の準備の時間がどんどん削られていくことになる。

それでは困る。どうにかしてこの誘いを断らなければ。

どうせロクなことじゃないさ。奴の考えることは世間では非常識なのだから。


「今から宇宙人と宇宙船を探しに旅に出ようと思う」

ダメだ。陸の奴はもう訳が分からない。

「説明してくれって言ってるだろ! どうしてこうなった? 」

いきなりの急展開。なぜこうも奴に振り回される?

もう明日なんだぞ。


                  続く

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