サイン 選ばれし者
ZERO館一階。まずは階段探しから。
「なあスケルトンはやっぱり二階か? 」
「きっとそうだろう。いや…… 」
その時だった。足音が響き渡る。
階段をリズミカルに刻む音。
恐らくスケルトンのものだろう。そうでなければ相当まずいことになるが。
足音はどんどん大きくなりこちらへ。
ふう…… 安心したら気が抜けた。
「先生…… 」
「馬鹿! 俺たちは見つかったらダメなんだぞ」
陸に言われようやく己の立場を理解した。これは極秘ミッション。
でもこれで階段がどこか分かった。
ライトを消して足音が消えるのを辛抱強く待つ。
どうやらスケルトンは帰ったか一度休憩するかのどちらか。
だからしばらくは戻って来ない。
よしまだ気づかれてないな。さあこれで思いっきり探索できるぞ。
今がチャンス。急いで取り掛かるとしよう。
足音を立てずライトを頼りにゆっくりゆっくり階段の方へ。
さあそろそろ階段かな?
ライトを使って足元を確認。ゆっくり慎重に上っていく。
ギシギシ言う。まさか抜けないよな? 腐っていたらどうしよう?
暗いから見た目では分からないのが不安。
危なくて使わなくなったから封印したのではない。
古くなっていたところで事件が起きたので封鎖したはずだ。
どんなに足音を立てないように慎重に進んでもギシギシ言う。
「おい陸! 」
「静かに! 集中しないと踏み外すぞ」
「いや手すりに摑まればいいだけだって」
トラップでもあれば別だが階段には手すりがつきもの。
「ああそうか。だったら簡単だ」
「なあここにエスカレーターがあったらお前は乗るか? 」
随分と余裕ができたので他愛のないお喋りを。
「そんな訳あるか! 怖くて乗れねえよ! 」
「だろうな。ただ電気が通ってないからどのみち無理だけどね」
「ふん! だったらつまらない話をするな! 」
「おいおい怒るなって。それでも動くかもよ」
面白そうなので脅かしてみる。
やっぱり恐怖に打ち勝つには脅かすのが一番。
肝試しでは幽霊役になればいいと誰かが言っていたな。
「ははは…… 動くかよ」
「例えば非常用電源装置があれば。ほら病院みたいに」
「うわああ! やめてくれ! それ以上は頼む! 」
恐怖に支配される陸。これはやり過ぎたかな?
でもただの弱いオチだったと思うんだけど。
暴走の気配。その前に元に戻そう。
「さあ二階だ。ふざけてないで行こう」
「お前だろうが! 」
こうして二階へ。
うわああ!
二階に上るとすぐに光で目が眩みそうになる。
ずっと真っ暗だったところに急激に強い光が差し込む。
サングラスでもなければ耐えらえない。
アイミのサングラス借りて来ればよかったかな?
「うおおお! 眩しいぜ! 」
奴も光にやられてその場に倒れ込む。そのまま溶けてしまいそう。
どうやらスケルトンは二階を徹底的に掃除するつもりなのだろう。
窓が開かれ光が入って来る。
そうか。侵入した時は二階など見てなかったからな……
ありがたい。これで捜索がやり易くなる。
ただ肝試しの雰囲気ではなくなったが。
うん? 何だこの部屋?
元々部室らしい。字が書かれているのだが剝がれてしまっていて読めない。
どうもカタカタで書かれていたような。部だけははっきりと分かるが。
そう言えば失踪した生徒たちが所属していたクラブは確か……
ダメだ。思い出せない。まあいいか。
「では行くぞ! 」
こうして陸が新たな扉を開く。
勝手に中へ入るので仕方なく追いかける。
「おいまずいって! これ以上はいくらなんでもまずいよ」
「何を言ってるんだよ? ここからが大事なんだろうが! 」
どうも陸のお目当てのものがあるらしい。教えてくれなければ探しようがない。
「なあもういいだろう? これで調査終了にしよう。
これ以上は本当に取り込まれてしまう」
必死に止めるがそれでも前に進もうとする陸。
「実はよ…… 」
何と宇宙人に関する資料を探しているそう。もう滅茶苦茶だ。
「お前はそんなことのために俺を誘ったのか? 」
「まあな。凄いお宝だろ? 」
自分勝手に暴走。いつもと何一つ変わらない。
「呆れた。宇宙人なんているはずないだろう? 」
「でもそれに関連した資料があるはずなんだ」
そうは言うがこの部屋に置いてあるのはティーカップとお茶とその辺の資料だけ。
「おいこれ見てみろよ! 」
興奮する陸。手がかりを見つけようと勝手に資料を漁る困った奴。
「やめておけって! 呪われるぞ! 」
これ以上はまずい。シャレにならない。
強めに言うが陸は手を止めようとしない。
「あれおかしいな…… これは在校生名簿? しかも今年のだ」
「どれどれ」
机には山積みになった資料が。すべて名簿。
学年と氏名年齢に住所やその他が載っている。
これはマル秘資料だろうな。でも宇宙人にはまったく関係なさそうだが。
「何だつまらない」
「おいおい物凄いお宝じゃないか。へへへ…… 」
目の色を変える陸。
こんなものをここに放置してるのは…… 当然スケルトンしかいない。
スケルトンは一体何に使おうとしてるんだ? そして何をしようとしてるんだ?
「お前の住所も載ってるぞ」
「おいやめろって! 」
奪い合う。そして豪快に床に叩きつけてしまう。
うわ…… 気づかれた?
だがどうやらスケルトンは館内にはまだ戻ってないらしい。
「何だこれ? おいこれ見てみろよ? 」
陸は自分の名前に丸がついてることに気づいた。
「ああ本当だ。それに希ちゃんも」
クラスの中では陸と希ちゃんの二人だけに丸がついていた。
一体これはどう言うことだ?
続く