表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/150

学園七不思議 開かずの旧校舎

学園七不思議の一つ。開かずの旧校舎。

<ZERO館>の謎に迫る。


八月。間もなくお盆の時期。

俺は一人父さんの田舎に帰省するつもりだ。

閉鎖された集落だから十分気をつけなければ。

何が待ち構えてるか正直不安だがそれでも行くしかない。


それにしても眠いな。何で俺こんなところを歩いてるんだっけ?

まさか夢遊病? 夏の日差しにやられたか? いやそんなはずない。

確か陸に呼び出されたんだったよな。しかもなぜか現地集合。

一緒に行けばいいだけなのに。奴のことだから絶対何かある。


「おい! おせえぞ! 」

人を勝手に呼びつけて一体何の用があるって言うんだろう?

「陸…… 俺にはお前の考えてることがさっぱり分からないよ」

「はあ何を格好つけてるんだ? さあ入るぞ! 」

確かこいつは電動自転車で日本一周の旅に出たんだよな。三日で戻って来たか?

もう飽きたならそれは何より。だからって俺を巻き込まなくてもいいんじゃない?


それにしても陸の奴は日焼けしたな。ジロジロ見るのは悪いから見ないけどさ。

「ははは…… 凄えだろうこの肌」

見せつける。これって凄いことなの?

どうやら日焼け止めを塗らずに挑戦したらしい。

肌がただれてかなり痛そうだ。本当に大丈夫かよ? 心配になる。

まさかこれを自慢しに来ただけなのか?


「それより何でここに? そろそろ教えてくれよ」

目の前には立派な建物が。ただここはあまり近寄りたいようなところではない。

「また何か悪さしたな? 俺まで謝らせる気か? 」

「違う! ほら合宿で閃いたんだ」

「合宿? ああビーチバレー? 」

「違う! 肝試しに決まってるだろう? 」

決まってないけどな。奴の思考を読むのは簡単じゃない。

単純なんだけどそもそも何を考えてるか不明。

今日だって真夏の学校に呼び出されるしよ。


「俺さあ補習で苦手意識あるんだよね。そもそも何で夏休みに学校? 」

「俺だって苦手だって! でもチャンスは今しかないんだ」

そう言って何も教えることなく堂々と中へ。

クラブ活動もあるのでこれは至って普通のこと。何ら怪しいことではない。


「待てよ! 詳しく話せって! 」

これ以上はつき合いきれない。俺たちは今から一体何をしようとしてるんだ?

何であれ今はそんなことに構ってる時じゃない。準備に忙しいんだから。

「まさかまた希ちゃんと待ち合わせしてないよな? 」

「おい! これは危険なミッションだ。彼女は巻き込めない」

そんな風に格好をつけてるが嘘を吐いてそう。

「だったらアイミはどうだ? どうせ呼んでるんだろう? 」

奴がそれ以外の理由で俺を呼ぶはずがない。

「まったくお前はどこまで情けないんだ! 女の尻ばかり追いかけて! 」

自分のことを棚に上げてこいつめ。どうせそう言われて叱られたんだろう。

昨日電動自転車一周の件と共に。

それを俺にぶつけてストレス発散するとは何て野郎だ。

でも可哀想だからここは優しくしてやるか。


「おい待てって! 部室はあっちだし教室も違う。ここは立ち入り禁止の…… 」

<ZERO>館だ。誰がそう呼んだか知らないがそう呼ばれている。

今ある新館ができて古くなり使われなくなった旧一号館。

あの集団失踪事件が発生してから閉鎖され立ち入りを禁じられた。

そんな曰くつきの館が目の前に。


うん? 鍵が掛かってない。南京錠も見当たらない。

それどころかここを管理する爺さんの姿がない。

厳重に封鎖されていた開かずの館が俺たちを招き入れるかのように開かれている。

これは一体何が? まずい吸い込まれる。


例年新入生が悪ふざけで今回のように肝試しにと挑戦しようとする。

でも大体爺さんに一喝され逃げ帰るのがパターン。

その後停学または退学か反省文&近づかない約束を選択させられて騒動は収まる。

なぜここまで詳しいかと言うと俺も奴につき合って挑戦したことがあるから。


あれは俺が入学したての頃……

二人で南京錠と鍵に挑戦。ガチャガチャしてると爺さんが血相を変え走って来る。

奴は逃げようとしたが俺は諦めて逃走する奴を捕まえた。

さすがに逃げ切れないと踏んだから。これが功を奏して退学処分は免れた。

もしあそこで逃げてしまうと停学は免れなかった。最悪退学もあった。

俺の的確な判断で奴も救われたことになる。

あの後先生たちが駆けつけるまで正座させられていたっけ。

先生が来たからって正座はそのまま。

皆の笑いものに。あの日もう二度と近づくものかと誓った。

でも奴は懲りてなかったらしい。


超困った奴だからこれくらいは当然。トラブルメイカーは伊達じゃない。

だから俺も危なかった。まああの時は俺たち以外にもそんなのが何人も。

「よし行くぞ! 」

奴はまったく動じない。だがここで止めないと俺まで退学に。

そうすればあの時みたいに母さんにまで迷惑が掛る。

「馬鹿な真似は止せ! 退学したいのか? 」

「大丈夫だって。先生はほとんどいないんだから。それに…… 」

奴の話によると夏休みは管理人は不在だそう。

だとしてもなぜこの旧一号館が開いてるんだ?


「おい…… まさか二人で? 」

「ははは…… 怖いのかお前? チャンスじゃないか! 」

陸はとんでもないことを抜かす。確かにチャンスだが。

チャンスはチャンスでも異界に導かれるチャンスでは?

そんなチャンスは嫌だ!


                 続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ