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存在するとは?

七月は合宿もあった。

サマー部に相応しいマリンスポーツにサプライズの肝試し。

肝試しは部長たちの悪ノリで盛り上がったがやり過ぎの感も。

俺の記憶ではその後失踪した部長。現在も行方不明中のはず。

それなのに病院に来ていた不思議。

異世界に取り込まれたとばかり思っていたが現世に戻ってこられたらしい。

何てね…… 確か翌朝には姿を見せていたっけ。

部長は人騒がせなんだよな。


ビーチバレーを楽しんでいたはずなのにいつの間にか病院に担ぎ込まれていた。

その間中おかしな夢。特に幼い頃の夢を見ていた。

振り返ればこんな感じ。


もう夏休みも一か月を切った。

今日は何をしようかな?

いやそうじゃない。もう決まってるじゃないか。

母さんはもう忘れてると思ってホッとしてるようだがそうはいかない。

計画通りに行こう。


あれから五年。ミライが言っていた期限を迎える。

話によると祭りは八月末に行われる。

タイムリミットが過ぎればミライは無理やり結ばれてしまう。

それがそのおかしな村の風習であり村民が守るべき絶対的な掟。

詳しくは聞けなかったけれどお相手はどこぞの金持ちあるいは地元の支配者。

それか権力者。村長かもしれない。

そんな王にも近い存在がミライのお相手となる。

しかもそいつはミライだけでなく多くの女性と。

このまま行けばミライはその王のものになってしまう。

それだけは絶対に阻止。それがあの日あの場所にいた俺の運命であり役目だから。

俺は全力で彼女を守る。そして俺たち二人は結ばれるんだ。


このことを陸にぼかして相談した。完全に思い出したのは入院してる時。

それまでは断片的な記憶しかなかった。それが辛くて辛くて。

俺は一体なぜこんな大事なことを忘れていたのか? 情けなく思う。

夢と過去の記憶。

奴の理解力では難しいだろうが俺の妄想ではないとだけ理解してくれた。

奴も協力すると格好をつけていたが今のところ何一つ動きはない。

まあそこまで期待はしてない。ただ俺の味方してくれればそれでいい。


ふう…… いつの間にかボウっとしていた。

俺が怪我したことで父さんに会いに行く計画は振り出しに。

ダメだ。このままでは間に合わない。強引に進めなければ。

一度は許可を得たこと。決して危ない訳でもない。

遅くてもお盆までにはミライの元へ。

俺が行ってどうなるか分からないが何もせずには諦められない。


「なあそれってお前の夢じゃないのか? 」

最初は陸も半信半疑だった。

「そんなことない! これは夢なんかじゃない! 現実の話なんだ! 」

何度も何度も粘り強く説得する。

「悪い。信じてない訳じゃないんだぜ…… でも確証がないだろう? 」

陸の奴めこんな時に正論吐きやがって。

ただ確証がないって使ってみたかっただけじゃないのか?


「現実なんだ! 全部現実なんだ! 」

「でも…… お前親父さんと別れて落ち込んでいたろ?

そのせいでおかしな夢…… 幻を見るようになったんじゃないのか? 」

「そんなはずあるか! すべて現実なんだ! 」

「でも誰なんだその子は? 名前は? 場所は? いつの話なんだ? 」

奴に追及されても何一つ答えられない。どうして? 俺が間違ってるのか?


「俺は正しい! 夢なんかじゃない! 彼女は存在するんだ! 」

「おいおい落ち着けって! 大丈夫。本当に存在すれば問題ないからよ」

奴に励まされる。何だか情けないな。でも陸はいい奴だから。

そうこれが最初に相談した時の反応。でもほぼ理解せず適当に答えたんだろうな。

最初はまったく信じてくれない陸を恨みさえした。

でも冷静になってよく考えれば当然の反応だよな。


存在すれば問題ないか。

存在するって何だろう? 俺が存在すると信じればそれでいいのか?

存在って見えること? 聞こえること?

俺の中には父さんは存在する。でもあれから会ってない。

それでも一度も会ってない人間を存在してると言えるのか?

確かに父さんが存在するのは間違いないんだけれど。それでも何だかな。

俺には目の前にいて話せる人間こそが存在するだと思うんだけどね。

記憶の中にとか心の中にとかって表現もあるけれどそれはどうも違う気がする。


おっともうこんな時間か? 考えごとはお終い。

陸のところに行くとしよう。 

同じ町内でたまに遊びに行くこともある親友であり仲間。

それが陸だ。頭は俺よりも悪いのでいろいろと助かってる。

こんなこと言うとまるで俺は悪い人間のように思われるかもしれない。

それは分かってるんだ。でも助かってるのは事実でそう意味では感謝してる。

俺がどんなにミスしようと勉強ができなかろうと奴がそれを上回るからな。

下回ってくれると言った方が表現としては適切なのかな?


呼び鈴を鳴らす。

いつもだったら待ち切れずにすぐに飛んでくる。

カメラでもついてるのか? 見えないのにな。

一度確認してみたがどうやら俺の鳴らし方は独特だから一発で分かるのだそうだ。

嘘を吐けと言うが癖があるからそれを直さないと攻略されると真顔で言うからな。

いつもふざけたことしてるのに顔はなぜかふざけてない。

だから奴はいつも真面目。真面目にふざけてるんだろう。


高校からは多少大人にはなったがそれでもあれだから。

俺なんか部長から世話係を任されられた。

暴れさせるな。しっかり見ておけと。

猛獣じゃないんだからそこまで言わなくても……


あれ? 飛び出してこない。まだ寝てる?


                   続く

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