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ミライの秘密と隠された真実

空腹の俺にお恵みを。

サンドイッチ? ミライの手作りだと。うまそうだな。

「ありがとう。さっそく一つ…… 」

「ダメだと言ってるだろう? 何度言えば分るんだこのガキが! 」

大事なところで邪魔が入る。

まずい。言いつけを守らずに近づいてしまった。

でもミライのパパは出掛けたはずなんだけど。


あれ…… パパではなくどうやらその部下らしい。

娘に近づく者をパパに代わって成敗するそう。

うわ…… 俺成敗されちゃうのかな?

「ただサンドウィッチを一つ貰おうと思っただけなんだ…… 」

情けないけど事実なんだよな。もうお腹が空いて。弁当を持って来なかったから。

確かに用意してなかった自分が悪い。でもサンドウィッチの一つぐらい……


「それ以上近づけばどうなっても知らないぞ。さあ下がれ! 」

男に脅されてはもう引き下がるしかない。

「分かったよ。これでいいんだろ? 」

「まったく世話ばっかり焼かせやがって。大人しくしてろ! 」

頭には来るけどこれは仕方ないこと。言ってることは間違ってない。


ミライは皆に守られてるんだな。

羨ましい気もする。俺なんか放っておかれて飯だって……

それにしても腹減ったな。

「ごめんなさい。もう練習の時間だから」

そう言って演舞再開。

仕方ないか。俺は結局はただうるさくしてるだけのガキだからな。


肝心な話を聞きそびれた。まあいいか後で。今日が無理なら明日だっていい。

とりあえずミライの演舞が終わるまで大人しくしてよう。

こうして二日目も大して話せずに終わるのかな。

まずい。俺もそろそろ帰らないと。今日まで遅くなったらただでは済まない。


一通り舞ったところで強引に割り込む。

「ごめん帰るわ。楽しかったよ。踊りもばっちりだった」

本当はこのまま一緒にいたいけれど監視の目が厳しい。

俺だって昨日の今日だからな。さすがにまずい。


「待って…… あなたに伝えておきたいことがあるの」

真剣な表情のミライ。もう少し笑っていいんだぞ。

「ミライ? でも俺…… 」

「今伝えないともう会えないと思うから。きちんとあなたに伝えなくちゃ。

ほらもう少し近くに」

「ははは…… 大丈夫だって。明日帰るまでは時間あるし」

「たぶんそれは無理。さあお願い」

我がままだなミライも。こんなに強引な子だったっけ?

「でも怖いおじさんが…… 」

「大丈夫。今はいないから。でも近づき過ぎないでね。危険だから」

いつでも俺のことを心配してくれるミライ。確かにあいつらは危険だ。

俺だってバカじゃない。痛い目には遭いたくないから言いつけは守るさ。


こうしてようやくアイミの秘密を知ることになる。

ただ秘密と呼ぶにはあまりにもスケールが大き過ぎる。

それだけじゃない。もしかしたらもっととんでもない真実に気がついてるのかも。

きっと薄々気づいていたんだろうな。それを無理やり気づかない振りして。


当時を振り返ればミライの言動はおかしかった。

それによく分かってない俺に紅心中伝説の話まで。

ミライ…… 俺は君と再会するのが怖くなってきたよ。

五年前の約束を果たさずこのまま思い出のままきれいに。

そんな風に考えるのは無責任なのだろうか?


ここで記憶が途切れる。

どうやら退院の準備が整ったらしい。

今は思い出に浸ってる時ではない。

母さんに迷惑を掛けるつもりはなかったのにまた余計なことをさせてしまう。

「大丈夫? 歩ける? 」

ビーチバレーでぶつかって頭を打った。検査はじっくりゆっくり。

その上で問題ないと。足も捻った程度。

一週間もすれば違和感なくなるそう。


退院する前に仲間が集う。

「あれ陸は? 」

親友で近所。同じ町内に住む陸の姿が見当たらない。

代わりに希ちゃんとアイミと部長の三人が姿を見せる。

さすがに全員は無理。第一迷惑なので人数を絞ることに。


「部長。大変ご迷惑をお掛けしました。あの後どうなったんですか? 」

俺がいなくなりビーチバレーとは言えすぐに再開は難しいのでは?

最悪そのまま合宿を終えた?

「大丈夫。お前を病院に運んだあと休憩を挟んで再開したよ」

今回の合宿のテーマはビーチバレーで楽しむではなく己と向き合うだったはず。

怪我人が発生しては向き合うも何もない。ただ空しいだけ。


「残念だな…… 」

「そう言うなよ。来年にはお前たちが合宿も大会も引っ張るんだからな」

「はい。サマー部が存続してればね」

それに俺が無事に戻って来れたら。

「おお言うな。よし部長はお前だ! 」

「勘弁して下さいよ部長! 」

「ははは…… 冗談冗談」

とにかく退院したらもう一度しっかりお礼を言おうとしよう。


八月。

足の傷も癒え頭も検査の結果問題ないと。

これで晴れて俺は自由の身。

それにしても七月は色々あったな。

テストは思い出したくないぐらいボロボロで陸がいたからまだ自分が保たれたが。

散々だった思い出がある…… あれ薄れてるな? 

まさか頭を打った影響が多少ある?

いやいやそれはないか。随分昔の気がする。

その補習で夏の貴重な数日が潰れた。来年は絶対に避けなければな。

これ以上婆ちゃんも母さんも悲しませられない。

でもそのおかげでアイミとも出会えたけどね。

決して嬉しいと言う訳ではないがストーカーでもサマー部の仲間だからな。


あれは大会でのこと。希ちゃんといたところを怖いお姉さんに邪魔されて……

何とその正体は俺を追いかけてきたアイミだった。今振り返っても恐怖を覚える。

絶対にアイミとは二人きりにならないように気をつけなくちゃ。

合宿のための買い物にまで着いてくる筋金入りのストーカーアイミ。

果たして俺は彼女の追跡から逃れるか?


こうして日常パートはほのぼのと進む。


                  続く

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