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紅心中 結ばれない二人  作者: グミさん
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夏休み一日目

月末の合宿場所がまだ決まってない。

遠すぎては時間も金もかかるのでどうしたって近場になってしまう。

でも選ぶのって思ってる以上に大変で情熱なしでは推せない。

どこでもいいが皆の正直なところだろう。勝手な推測ですが。


「賛成する者は挙手せよ! 」

こうしてどうにか夏合宿の中身が決まった。

後はどこで開催するか? どこに泊まるか?

細かいところを詰めて行かねばならない。

面倒臭いんだよな。でも大事だって分かってるから疎かにはできないし。

陸などつまらないともう伏せてしまっている。


もちろん今からでは宿は取れない。

そうするとまた部長の知り合いの民宿にお世話になることになる。

去年は陸が迷惑を一杯掛けた。いいよいいよと笑ってはいてくれたけど。

果たして今年も受け入れてくれるか不安でしかない。

成長した陸ならもう迷惑を掛けないと勝手に思ってるが不確か。

やはりそれは無謀と言うものだろうか。


「当日は駅集合だ。ああ酒井たちは迎えに行ってやるからな」

部長は冗談とも本気とも取れるトーンで続ける。

どうやら俺たちが逃げると踏んだようだ。まさかそんなことあり得ないのに。

ただ俺も奴も地理が苦手で方向音痴。すぐに迷ってしまう。

二人なら大丈夫だと安心していると悲惨な目に遭うこともしばしば。

これでも反省して改善しようとはしてるんだ。でもうまく行った試しがない。

振り返ってみるもため息しか出てこない。

いつも奴が大丈夫だと適当に方向を決め俺は後ろに付いて行くのみ。

迷ってどうしようもなくなってから俺が何とかするのがお決まりのパターン。

中学からの付き合いだからな。奴がどう動くか手に取るように分かる。

これでよく日本一周の旅などとほざいてられるよな。

しかも電動自転車でだからな。おめでたい奴もいたもんだ。


「よし今日はこれまで! 」

こうして合宿内容が決まり一安心。

ゆっくりと夏休みが迎えられると言うもの。

それにしてもどこがいいかな? まあ部長に任せておけばいいさ。


どうにか合宿が決まって今はほっとしている。

さあ最後の関門を突破したら夏休みだ。

最後の関門と言ったら当然あれのこと。

頭が良かったり勉強してる奴は問題ないだろうが俺にはやはり嫌な印象。

きちんと普段から取り組んでいればちょっとは改善されただろうが。

それでも憂鬱に違いはない。


夏休み一日目。

大会も合宿もまだまだ先。

と言う訳でワクワクの夏休みの始まり。

だが何をするという訳でもなくただ教室からぼんやり晴れ渡った空を見上げる。

いつものルーティン。何ら変わらない日常が繰り広げられていく。

ただ昨日までと違うのは人の数。俺を含めて三名。


外では運動部が大声を張り上げてご近所に迷惑行為を繰り返している。

夏休みの時ぐらい静かにしろよな。しかも団体だからタチが悪い。

喧嘩売ってるのかと思うほど。いくら子供が宝でもこれは見逃しはしないだろう。

悪気はないと思うが俺からしたってうるさい訳で。ああ気になって眠れない。


「何をぼうっとしている! お前のために来てるんだぞ! 」

怒り狂う教師。この人誰だっけ?  

「そこも何だ! やる気あるのか! 」

まっすぐ前を向く陸。いつもは俺同様寝てるのに今日は真面目に前を向いている。

どう言う心境の変化?

「すんません。つい…… 」

へらへら笑っているが何が面白いのか分からない。

大丈夫か? ただ奴の感覚ではこれでいいのだろうな。


「いいか三人とも! それではいつまで経っても補習は終わらないぞ! 」

真剣なのは先生だけ。俺たちはやる気など端からない。

「お前もだよ! この答案用紙は何だ! 」

落書きしてまともに埋めもしない女の子。良い度胸してる。


確か隣のクラスだったと思う。

かわいくて面白い子なんだけどどこか抜けてると言うかアホと言うか。

何だか俺いつも人の悪口を言ってるみたいになっている。

当然そんなことはない。立派な人がいればきちんと紹介できるのにな。

ただこの中では一番頭が良いのは間違いない。

ある意味彼女こそが救世主。


それにしても補習って聞いてないよな。

でも登校したからには理解してたんだろうな俺。

呼び出しを喰らわずに済んだのが唯一の救い。

しかし夏休み初日から俺たちは一体何をやってるんだ? やらされてるんだ?

現実を見ると自分が本当に情けなくなってくる。


「よしこれまで。明日もあるからきちんと来るんだぞ! 」

「はーい」

知らない先生の補習を受けてどうにか形は保てた。

「先生! 」

彼女は分からないところがあると積極的。

結局二人が取り残される羽目に。


「なあどこまで進んだんだ? 」

今奴は電動自転車で日本一周にチャレンジしている。

ただ夏だから危険は伴うはず。暑さだけでなく雷や台風に大雨。

親友としては勧められない。

三日で飽きたらいいがそれでは言った手前やめられはしないだろうな。

「何だよ心配してくれるのか? 大丈夫。町内は超えたよ」

「おいおいそれって…… 」

「うん。今は近いから行けるところまで行って次にそこから始める。

俺って頭いいだろう? 」

そんな風に言うが当然よくない。もうゲームの世界で日本一周を目指すべき。

いや奴のことだからもうその気になってたりして。


「重要なのは合宿の後。八月に入ってからだ」

意外にも考えている。だったら無茶な旅をやめるべき。

俺は関係ないけどさ。でも九月に戻って来れるかが心配。

「午後から行くのか? 」

「いや…… 今日はやめておくよ。昼過ぎに雨が降るって言ってたぞ」

「おいおいそれくらいで中止かよ? 」

「だから中止じゃないって! 撤退だ! 名誉ある撤退だ! 」

そんな風に戯言を抜かす。


モグモグ

モグモグ

うん。美味いな。

まさか昼飯を一緒するとは思いもしなかった。

駅前の牛丼屋さんで食事をすることに。


                 続く

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