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君の名は? ミライ

こうして二名の行方不明者を出し無事? に肝試しが終わった。

疲れからか夜更かしすることなく消灯時刻前に眠りにつく。


「ねえこっちに来てよ」

そう言って笑う小さな女の子。

俺には妹もいないしアイミも希ちゃんもこんなに幼くない。

とするとこれは過去だな。過去の思い出を夢で見てるんだろうな。


「ねえそこにどうやって行けばいいの? 」

なぜか俺だけ今の自分だから混乱する。

夢の世界とは何とも不気味で不可思議なのだろう?

俺だけが成長してあの子だけがそのまま。

実際は逆なんだろうな。俺が過去に戻れずにいるのだろう。

俺は少年の心を失ったただの男でしかない。何てね。


「ふふふ…… 知らない」

そう言って緑豊かな大地を走り回す。

辺りには花々が咲き誇り太陽は俺たちを平等に照らす。

それは夜になっても同じで月が照らすはずだ。

「意地悪言わないで教えてくれよ。ははは…… 」

なぜか気分よく駆け回る。彼女が円を描くように走り回ってる。

それに対し俺は左右を交互にジグザグに走る。

何か意味があるのかよく分からない。


「ふふふ…… 」

「ははは…… 」

本来だったら一直線に向かって丁度半分で抱き合うんだろうな。

でもこれは現実ではなく夢だから会うことができない。

会いたくても我慢するしかないんだ。そう言い聞かせる。

でもこれが夢でなく現実だったら?

そんな風につまらないことばかり考えてしまう。


いや現実と夢の違いなど実際どうでもいい。

夢だと言うなら障害を乗り越えて今すぐにでも会いたい。

でも夢は言ってみれば現実とは違う世界だもんな。それは異世界と言っていい。

どうしても二人は出会えない。だったらいいさ。出会える夢を見ればいいんだ。

今日は無理でも明日。それでも無理なら明後日に見ればいいさ。

それが夢と言うものの本質だろうから。


「ねえ行っちゃだめ? 」

まるで待てをしているよう。ご主人様に従う忠犬。

それも我慢の限界。早く飛び越えてご主人様の元へ飛び込みたい。

徐々にその衝動が抑えられなくなる。

「無理でしょう? あなただって分かってるくせに」

そう言われたらもう何も言えない。


「だったらせめて名前を教えてくれないか? 」

これだと子供っぽくはないよな? 違和感に気づかれたらどうしよう?

「それは…… 当ててみて」

そう来たか? 俺暇じゃないんだけどな。いや…… 夢だから暇なのか。


「アイミ…… アイミだろ? 」

「誰それ? 」

「ははは…… 親戚のお姉さんだよ」

夢の彼女にまで嘘を吐く。


「アイミじゃない! アイミなんかじゃない! 」

「分かった。分かったよ。だったら希ちゃん」

「その女誰よ? 」

嫉妬深い少女はまるで大人の女性であるかのような追及の仕方。

「ははは…… うちのペット」

完全な嘘を吐く。どんどん嘘を吐くのが上手くなっている気がする。

ちっとも嬉しくないレベルアップ。ただ空しいだけ。


「ペットは関係ない! 」

怒り出す。でもそんな顔もかわいい。

「ごめんごめん。だったら誰なんだ君は? 」

「私は過去」

「いや夢ってのは大体過去なんだけどさ。でも今はそう言うことじゃなくて」

「そう。私は過去じゃなくて現在でもない」

ヒントをくれるそう。太っ腹だな。


「過去でもなく現在でもないなら君は…… 」

「そう。私はミライ…… 」

ついに彼女の名前が明かされた。

過去の記憶の整理を終えついに隠された名前が明らかになったのだろう。


彼女の名前はミライ。ミライだ。


「俺は…… 誰だっけ? 」

「誰でもいい。名前なんてどうでもいい。私もミライだけどミライじゃない」

今度はミライじゃないと言い出した。おかしくなってるぞ?


おい起きろって! 朝だろうが! 」

「うん? 朝? お前は誰だ? 」

「はあ? 寝ぼけるなよ! 俺は陸だろうが! 」

俺は夢を見ていたのか? そう言えばこれが夢だと最初から気づいてた気がする。

どうやら覚醒までに時間が掛かったらしい。


三日目。

合宿もついに三日目を迎えた。

今日は朝からランニング。軽く泳いでからビーチバレー。

ただ楽しく過ごしたいんだけどな。なぜか目の前には部長の姿が。


「ぎゃああ! 部長! 呪わないで! 」

「おい何を言ってるんだよ? 誰が幽霊だって言うんだ? 」

「だって…… 昨夜行方不明になったでしょう? 」

「まあな。迷っていたところを先生に助けてもらったんだ」

細かいことは合宿が終わったら話すそう。それ以上はいくら質問しても無駄だと。


「それでどこで? 」

気にせずに続ける。

部長たちがいなくなったものだからパニック寸前。

「悪いな。俺たち順路を外れて迷ったんだ」

昨夜皿屋敷の真似事をしていたのは彼らじゃないらしい。

それはさすがに無理があるだろう?

正直に告白すればいいのに次の日までおかしな言い訳をするんだもんな。

そう言えばスケルトンはどこに? 見当たらないが。


「部長。それで先生はどうしました? 」

大会の時は忙しいからと引率しなかった。

今回の合宿でも行きの電車ぐらいで姿が見えない。

俺たちのこときちんと見てくれているのかな?

「それが…… 出掛けると」

本来だと引率の先生がいない時は活動できない決まり。

それがクラブ活動のルール。とは言え守ってるところなどほぼないだろう。


「ああスケルトンだったら写真撮ってたよ」

アイミが目撃したそう。

どうやら朝っぱらからお忙しいらしい。

風景画が趣味だとか。ただそれは本人が言ってるだけで怪しいものだ。

被写体を求めビーチを駆けずり回っているのでは?


疑惑のスケルトンはどこに?


                 続く           

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