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初恋

沈みゆく夕日をぼーっと眺め過去を探る。

初恋っていつだったのかな? ふと気になる。 

好きだから結婚してと小さい頃は意味もよく分からずに。

言ったり言われたり。近所の女の子やクラスの子に。

小さい頃はそれはモテた気がする。

それがいつの間にか学年が上がるにつれてそんな気配さえなくなった。

もう気軽に言えるような雰囲気じゃない。

意識し合って恥ずかしくなるんだろうな。分かるよ。

それからはもう異性の対象として見られなくなった。

要するに俺たちは遊びだったのさ。そんな風に格好つけられたらいいのだが。


中学に上がると益々女の子との距離も離れ奴と知り合ってからはもっとだ。

奴が行き過ぎるからどんどん離れて行ってしまう。

だが意外にも奴が積極的にと言うか強引にと言うか。

激しくチャレンジするものだから俺がおこぼれをもらう。

そんな状況が続いた。何だか嬉しいような嬉しくないような複雑な気持ち。


奴のターゲットは大体が大人しくていつも勉強か読書してる女の子。

それ以外には相手にされないからな。

今思えば断らなそうな大人しい女の子を選んでいたような気も。

無理やり近づく陸をコントロールしていたらいつの間にかと言うパターンが確立。

もちろんつき合うまでは至らない。だってそもそもそんな発想ない。

それは俺が弱気なのもあるけれどあっちが求めないので。

タイプ的に無理なんだろうな。親がうるさいとか。周りに嫌われるとか。

自分がどう思われるか怖いんだろうな。だから良好な関係が続く。


それは高校になっても変わらず。希ちゃんとだって良好な関係を築いた。

冬に彼女に告白されるも俺は鈍感だからそれに気づかなかった。

それから数か月が経ち振り返ってようやく。血の気が引く思い。

まあ実際そこまで深刻じゃないが。

恐らく告白が失敗したのに気づき彼女なりにこのまま受け入れようとした。

要するにただの仲のいいお友だち。奴と三人で楽しくやって行こうと。


それを破ったのは陸の方だ。と言うか初めから奴は狙っていた。

そして今年の夏に告白しようと。俺は止めることができずにつき合う羽目に。

そこに来てアイミだからな。なぜか希ちゃんまで積極的になるし。

もう対処のしようがない。


二人が仲良くなるのはとてもいいことだがどうにもこうにも複雑。

俺もそろそろ新しい恋を始める時が来たのかな?

そもそもアイミは俺にこだわる理由がない。

希ちゃんだってかわいいんだから拒絶しなければモテる。

別に俺でなくても……


常に拒絶しようとする希ちゃん。

男はいつだって別のことを考えてるからな。妄想してるとも言えるが。

汚らわしい男どもを近づかせないのも一つの手だとは思うけどね。

それで寂しければ意味がない。

その拒絶に負けないのが奴だった。何も考えず突っ込んでいく。

それも清々しいほどに。

だからその辺の男どもよりまだマシだと判断したんだろう。でも奴は奴だから。


おっと…… 初恋のことを考えていたんだった。一体どこから逸れたんだろう?

初恋と言えば当然あの時だろうな。夏休みの数日間だったはず。

なぜか今の今まではっきり思い出せなかった。

ただぼんやりとした記憶があるのみ。

だからそれをはっきりさせようとするけど思い出せない。

いつの間にか違うことを考えそのうち現実かどうかもあやふやに。

そしてどんどん忘れどんどん記憶が上書きされていく。

もうぐちゃぐちゃな記憶でどこから手をつけていいか分からないほど。


でも本当は知っている。必ずその思い出に繋がる記憶があるはずなんだ。

俺が無理ならそれをサポートする者がいればいい。でもそれが難しい。

幼い頃の記憶も思い出も決して共有できない事情がある。

思い出せば…… 話せばあの当時の離婚の辛い思い出が蘇ってしまう。


楽しい時にそんなことを思い出させたくない。

苦しい時に思い出させるのはもっと辛いだろう。

ふと食事中に自然に思い出すぐらいがちょうどいい。でもその言葉を吐けば最後。

一度や二度じゃない。何度も何度も失敗してついには封印した。

知ってるのに。それでも届かない。届かないからもう知らない。


それが最近になって夢を見るように。これも勝手に俺が作り上げたものだろうか?

でもかなり具体的で徐々にあの頃の記憶が蘇えりつつある。

夢を見たのは俺の意思だろうか? それとも彼女の強い思いがそうさせた?


彼女が言う五年後が目前に迫っている。

急がなければ。夏休み中に彼女に会わなければならない。

そしてどうにか救ってやらなければ。

そう焦れば焦るほど手がつけられない。誰にも相談できない現実がある。


ちょっとだけ奴に相談したことがある。奴は最後まで真剣に聞いてくれた。

面白いねと最後に感想まで言ってくれた。ただの作り話だと思ってる節もあるが。

それでも協力するよと言ってくれた。


夢がどんどん鮮明になっていく。過去がどんどん近づいていく。

過去は離れて行くものだが実際は過去に向かって行くこともある。

別に哲学的な意味で言ってる訳ではない。


ふと彼女を思いながら眠ってしまう。

五分もしないで眠りから覚めなぜか涙が止まらなくなる。

「どうしたの? 飽きた? 」

アイミが心配する。らしくない奴だな。

「いやミライが…… ミライが見えたんだ」

「はあ大丈夫? それとも私たちの未来を夢見たの? 」

そう言って強引に引っ張っていく。


                続く

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