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真夏のサンセット

夕暮れのビーチ。

「ふう疲れたね」

希ちゃんが横に。

二人で肩を並べ空を見る。

ビーチバレーが終わると夕食までは自由行動。

宿に戻るもいいしそのままビーチに残るでもいい。

俺たちは合宿に来た。まだ体力だって残ってる。宿に戻るようなヤワではない。

もっと己を鍛えるためにビーチで特訓だ。


何てね…… 真夏のサンセットを眺めるために残ってるだけ。

つまんねえ! 興味ないと陸の奴はさっさと宿へ。

もう少しと引き留めたが面倒臭がって行ってしまった。

こう言うところも陸の個性と言えなくもないがとにかく団体行動ができない。

人に合わせられずにせっかくのチャンスを台無しにしてしまう。

どうせまだ夕食の準備中で宿に戻っても邪魔になるだけ。

大人しく残ってれば幻想的なサンセットが拝めたのに。

残念だよ。実に残念だよ。まだまだ子供だから仕方ないか。


ただ寄り添って一緒に夕日を見る。

「一緒に見れるなんて思わなかった」

どんどん近づきもう肩を預けんばかりの勢い。

ビーチに来たことでより大胆になった希ちゃん。

うん。これって危険な展開では? もはや俺にはどうすることもできない。

あの希ちゃんだぜ? こうなったのはトライアスロン大会以来だよな。

以来って言っても十日も経っていないけど。

「ああ俺もだよ」

もしかしたら希ちゃんの中ではもう俺たちはつき合ってるのかもしれないな。

大喜びでチョコを受け取ったからな。勘違いされても何らおかしくない。

ははは…… 何だか不器用と言うか抜けてるところがあるんだよな。

部室で渡すからつい皆にあげたと思ってしまう。

いや…… もしかしたら俺は希ちゃんの心を弄んでるだけなのかもしれないな。

今だって気づいてるのに気づいてない振り。ただの偶然だと思おうとしてる。

そうかと思うと急に自分が情けなくなってくる。


「希ちゃん。きれいだよ…… 夕日が」

慣れない誉め言葉に緊張して酷い奴になってしまった。

アイミなら笑って許してくれるだろうが希ちゃんでは本気に捉えかねない。

もちろん夕日など見てない。ただの照れだから。

「ありがとう」

そう言って体を預ける希ちゃん。

伝わった? 本当に気持ちが伝わったのかな?

ああ何て幸せなんだろう? こんな日がずっと続けばな。

でもこれで満足できないのが男。希ちゃんとあんなこともこんなことも。

もちろん冗談だけど。実際希ちゃんはどうなんだろう?

いつも控えめで恥ずかしがり屋の希ちゃんだからな本心がどこにあるのか?

俺と同じなのかな? だったらこっちも恥ずかしがらずに堂々と。


まずい。どんどん妄想が膨らんでいく。爆発しかねないほどに。

これは危険だ。まずは冷静に。深呼吸。俺が興奮してどうするんだよ?

へへへ…… サンセットを泳ぐ人魚のように裸で手を振ってくれないかな。

当然妄想であって現実ではない。これくらい妄想するのは許して欲しい。

ただ幻想的だなとふと思っただけで他意はない。


気温も下がり風も吹いて来た。

「寒くないか? 」

「ううん。大丈夫」

このままずっと。真っ暗になるまで二人で寄り添えたらな。

でもそれが叶わないのは理解してるつもりだ。

ホラ聞こえて来たぞ。幸せを壊そうと近づく悪魔の使者の足音が聞こえる。

俺たちの仲を切り裂き不幸のどん底に突き落とそうとする者。その正体は?

「ああ! 私も仲間に入れてよ! 」

ついに発見されてしまったか? 二人の間を図々しく割って入る空気読めない奴。

アイミが無理やり二人の間に。


「おいアイミ! 」

「どうしたの? 」

これはわざとやってるな? まあいいかこれくらいで。

俺を無視して二人で喋りだした。一体何なんだよ?

仕方ない。ぼんやりと夕暮れでも眺めてるかな。

夕日が沈むまでの時間をただぼんやりと空を見上げる。


スコールがあってきれいな夕焼けになるか不安だったが問題なし。

昨日も雨が降ったが雲が深く夕方にまでは晴れ渡らず今日まで我慢。

一日我慢してのサンセットだからな感慨深いものがあるよ。

こんな素敵な空なら奴もいていいのにと思うが雰囲気をぶち壊すからな。

誘っても無駄だったな。奴にはロマンのかけらもない。

そのおかげで二人きりになれた。二人で素敵なサンセットを眺めた。

そう信じている。アイミはいわばおまけだ。

すべてを終え二人の幻想的な雰囲気を最後に壊しに来たに過ぎない。


途中までうまく行っていたのに。余計なのが合流したため俺が除け者扱い。

何か違いませんか? お前は俺のストーカーであって希ちゃんのじゃない。

どう言うわけか二人は仲良くなるんだよね。

性格も見た目もまったく違う両者だがいつの間にか親しくなった。

考えれば考えるほど意味不明。確かにサマー部には女子が二人っきりだからな。

主に俺たちと仲良くしていた希ちゃん。それを取られた気分。

話し相手をなぜか俺のストーカーが?

それはさ確かに仲良くなってくれた方が部としてはいいんだけどさ。

喧嘩されたら雰囲気最悪だからな。

何だか複雑。しかもその割を食う。

もう近づきづらくなってしまっている。


楽しそうにお喋りする横で俺は寝そべって沈みゆく夕日を目に焼きつける。

ただ太陽を直視してはいけないのでなるべく周りを視線を逸らしながら。

まるで初恋をするように。恥ずかしくも苦しくも気持ちいい何とも言えない感覚。


                  続く

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