表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/147

合宿当日

合宿当日。

うーん。暑いな。今日も朝から暑い。

当然だよな。夏休みなんだからさ。その暑さを凌ごうと俺たちは海に行く。


おかしな部活もあったものだ。

サマー部なんてふざけた部活。大会だってそう。トライアスロンも自由参加だし。

合宿はただのビーチボール大会だからな。

誰がこんな部活を作ったんだろう?

でも確か二年前まではまともだったって聞いたな。

あれから廃部の危機を乗り越えて部長たち先輩が受け継いできた。


「なあお前はどう思う? 」

前を行く陸に聞いてみる。

どうせ分からないだろうと思いつつもそれでも聞かないと気が済まない。

「今その話必要か? 」

大汗を掻いて前を走る陸はどうも焦ってる様子。

それもそうか。一度忘れ物をして戻ってくるヘマをした訳だからな。

後を追う俺も似たようなものだろうが余裕が違う。


合宿に遅刻は厳禁。

団体行動ができない奴はお呼びでない。

五分や十分の遅刻ならどうにかなるが二十分も三十分も遅れれば皆に迷惑が掛る。

予定していた電車に乗れないことだってある。

一人一人責任と自覚を持って行動する。

それが全メンバーに求められる最低限のこと。


「だから部長に頼んで迎えに来てもらえばよかったんだよ」

「うるさい! 同じことだろうが! 」

まったく余裕がないのが態度に表れている。

なぜ奴だけ焦ってるのかと言うと一つには奴の忘れものに付き合ってるから。

電車に間に合わせようと必死なのだ。だがどう頑張っても無理なのに急いで。

全力疾走しても次の電車には間に合わない。無理せずにゆっくり歩く方がいい。

駆け込み乗車は禁止されている。ほらもう発車のベルが鳴っている。

三分足りない。少なくても一分あれば間に合ったかもしれない。

だが残念ながら時間に正確な電車は一分遅れで最寄り駅を出発。

俺たちはそれを見送ってから次の電車に乗る。


「うわああ! どうしよう! どうしよう! 」

一人の遅刻が全員の遅刻に繋がるとなればいくら鈍感な奴でも罪の意識を感じる。

「大丈夫だって! 俺を信じろよな」

こうして待ち合わせの駅まで三駅を祈るように。


本来なら学校の最寄駅から待ち合わせするはずだった。

だが反対意見が出たため直接三つ先の乗り換え駅へ。

「一年がさあ我がまま言うから。迷惑なんだよな」

人によっては戻ることになるから嫌だとはっきり部長に。

それなら一人だけそこでと言うのだがそれは何だか嫌だとごねる。

俺たちにはどうでもいいことでも彼らにはどうしても譲れないことらしい。

本当にどうでもいいのにな。でも仕方ないか。

まるで自分たちが遅れてるように思われるのも嫌。

最初からいないと感じが掴めないとか何とか。

結局我がままなんだけども我が部は人が少ないから意見が通りやすい。

不参加も困るし退部されたらもっと困ると甘やかす部長。

それで乗り換えの駅で待ち合わせることに。


「クソ! どう頑張っても十分遅刻だ! 」

「だから大丈夫だって。俺を信じろっての」

何の根拠もないが胸を張る。荷物が重くて胸を張るのも大変ではあるが。

「でもよう…… 十分遅れたら乗り換えの電車が一本遅れるだろう。

そうしたら予定が狂う。違うか? 」

心配性。意外にもこう言うところは気が小さい。俺なんか余裕だぜ。

強心臓の持ち主だとよく言われる。でも今回はちょっと状況が違う。

「違いはしない。だがそれも旅行の醍醐味だろ? 」

らしくない奴が心配なのとかわいそうでもあるから励ます。

せっかくの合宿なのにそんな悲壮感を漂わせなくても。


待ち合わせの駅までの約十分魂が抜けたような陸。

いくら話しかけても励ましても聞いちゃいない。

俺を信じれば救われるのになぜか伸ばした手を払いのける。

仮に遅れたっていいじゃないか。もっとおおらかに生きよう。


「忘れ物はもうないんだろうな? 」

「うん…… たぶん」

ダメだこれは。もう耐えられない。でもこれも奴のためだしな。

複雑な気分でつき合ってるこっちまで沈みそう。


「さあ着いたぞ。降りよう」

「あああ…… 」

生気を感じられないほどの落ち込みぶり。どうしてこうなった?

「おお! お前らやっと来たか! 」

部長が笑顔で迎える。


「よし点呼だ! 」

人数を数えると一人多い。もちろん自分を入れては多くなるのは当然。

そう言う天然なところがある。俺たち側の人間と言える。

これで全員らしい。


「部長! 俺! 俺! 」

言葉にならない陸の気持ち。見ていて辛い。

やっぱり今日はついてないんだろうな。

「ああ悪いなお前たち。そろそろ乗り換えの時間が迫ってる。行くぞ! 」

そう言って行ってしまう。

ここで乗り遅れたら本当に遅刻。どうなるか分からないので皆必死について行く。

もちろん時間には余裕があって五分後に出発する。しかも早くてもだから安心だ。

電車はまだ来てないとなると数分は遅れるだろうな。


隣りのホームなのでただ階段を上り下りしてるイメージ。

その手間が面倒に感じる。急いでる時は特にそう感じるんだろうな。

ここで体力を使うと合宿にも影響を受けるがこの近くにはエスカレーターがない。

奥の方にあるのでそこまで歩くぐらいなら階段を選択する。

こうしてどうにか電車が到着前にホームへ。


電車は三分遅れで発車。思っていた以上に余裕だった。

一人訳が分からないと放心状態の陸。

そろそろ説明するかな。


                  続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ