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陸の世界

図書館を追われ逃げるようにファストフード店へ。

うーんいい匂い。コーヒーは苦いに限る。

何てね。実際はどこが美味しいのかよく分かってない。

お酒よりはまだマシな飲み物さ。ポテトで中和させれば苦くない。

「おい聞いてるのかよ? それでな…… 」


俺ももうガキじゃない。ただのテレビの宇宙人ネタは飽きている。

おっとこれだと興味があるように見えるがそうでもない。

単純に奴につき合って知識を得てるだけ。


うーん。宇宙人っているのかな? 

でも待てよ。これはどうだろう?

人類が気軽に月に行ける時代に何年後かに月旅行すればそこの者は宇宙人では?

厳密には違うだろうが人工的宇宙人は存在するのでは?

でもその場合は未確認ではないよな。

宇宙好きの有名な大金持ちのおじさんについていけばそれもはっきりするかな。

ははは…… さすがに俺では無理か。

つまらないことを考える今日この頃でした。


陸の世界へと誘われていく。

宇宙談議で盛り上がってるが信じてるかと言えばそんなことはない。

うんうんと適当に話を合わせてるうちに俺まで興味があると思われた。

とは言え中学の頃はこんなおかしな話に随分と救われた気がする。


いつかは発見したいと真剣そのもの。笑ってもふざけてもいけない。

ただ奴には宇宙人を発見するスペシャリストのイメージはない。

どちらかと言うと見つかって捕らえられる間抜けな宇宙人かな。

もう中学からの仲だから親友と言っていい。

だがその親友でも奴の思考は果てしない宇宙のようで何だか掴みどころがない。

宇宙人探しなんて子供っぽいな。ガキっぽいなと思う。


そんな俺だけど小さい頃は秘密基地を作ったりもした。

もちろん一人では無理なので手伝ってもらった。

当然秘密基地だから親には秘密。婆ちゃんにだって漏らしてない。

誰にも彼にも教えていたら秘密基地とは呼べないからな。

でも変なんだよな。作った記憶はあるのにどこでかが思い出せない。

ちっとも記憶にない。

たぶんいつかの夏休みに手伝ってもらって作ったはず。

でも完成する前に飽きてそれっきり。他のことに関心が移った。


当時は何にでも興味を示す子で手当たり次第挑戦した。

今ではそんな気力がない。成長したんだろうな俺も。もしかして退化?

いつの間にか秘密基地作りを卒業していた。

そのスピードと言ったらどれだけ早いか。

興味を示すのも早かったけれど飽きるのも早かった。


当時の日記も家の中を探れば出てくるだろう。

去年の大掃除で一冊の日記を発見。そのまま放置して今に至る。

そこに『チュウシンコウ』の記述があるか今月改めて探すも発見には至らず。


陸の宇宙人話を聞きながら幼い頃の記憶をぼんやりと思い浮かべる。

悪いとは思いながら戯言を聞くよりは有益だろうと思って。

もちろん気づかれないように頷くのは忘れない。


「おい! おいってば! 聞いてるのか? 」

「残念。今度宇宙人がいたら教えてくれ」

そうやってからかってみる。

「お前信じてないな? 絶対にいるんだよ宇宙人は! そして宇宙船も! 」

奴は興奮すると周りが見えなくなるタイプ。

たまに暴走する時が。学校でもいきなりタガが外れたように走り出してしまう。

でも当然そこには宇宙人はいない。


コーヒーでポテトを流し込んで話に集中する。

「そうだ。先月のことなんだけどさ…… 何と宇宙人が歩いてたんだよね。

それでどこに行ったと思う? 」

「お前よ…… 俺が食いつくとでも思ってるのか? バカにするな! 」

おっと…… 想像よりもキレてる。これは機嫌が悪いのかな?

興味を示すと思ったのにそこまで単純でもないか。

「ウソじゃないって! ただ見失ったけどな。ほら写真もあるんだけどな」

疑ってかかる奴も証拠を示せば大人しくなる。

いつか見せようと念のために用意しておいたそれっぽい写真。


「これが…… 」

「ああ悪い。逆光だったね。この謎の光はたぶん宇宙人の仕業に違いない」

食いついた陸。写真を食い入るように見る。

「それで追い駆けると宇宙人が民家に入って行ったんだ」

「おいおい本当かよ? どうして知らせてくれない! 飛んで行ったのに! 」

陸の奴が乗って来たぞ。この後どう続けるか考えてない。どうしよう?


「まあまあ興奮するなって。それで会いたいか? 」

「会いたいに決まってるだろう! 」

「実は宇宙船が壊れて不時着していたらしいんだ」

こうやって陸を動揺させる。

ただ奴はかなりのマニアックで宇宙人よりも宇宙船。

宇宙船があるとより興奮する。相当危険な奴だ。


「おい本当か! 」

奴の目の色が変わる。これはまずいな。

「ただ宇宙人は発見したが肝心の宇宙船が見当たらない。

あれだけ目立つから追跡も可能ではあったんだけどさ俺買い物があったから」

宇宙船よりも買い物を優先されて意味が分からないと嘆く陸。

「そんな! 」

痛恨のミスを想像して残念がってくれる単純だがいい奴だ。

宇宙人の話で盛り上がる。


「行ってみるぜ! そこはどこだ? 」

手応えありと見た。でもこれ以上からかうのはよそう。

後で恨まれても困るからな。

「今からかよ? 無理だって。明日から合宿が始まるだろうが! 」

上手くかわす。実際に会ったことがないのでいい加減な感じに。

少しは暇つぶしになっただろう。


「そうだ代わりに月の石をやろう」

「そんなものと一緒にするな! 」

大変貴重なもののはず。それなのにやせ我慢しちゃって。

「月の石もいいと思うよ。宇宙船に拘るのはみっともないぞ! 」

「どうせレプリカに決まってる! 俺は騙されない! 」

月の石には興味を示さない。


「そうだ。明日の宿にも宇宙に関連するものがあるかもよ」

「おいおい本当かよ? 」

いつの間にか怒りが消える。

 

「また明日。遅れるなよ」

これ以上はボロが出る。解散するとしよう。

宇宙か? どうなってるんだろう?

奴ではないが少しだけでも興味が湧いてきた。

さあとにかく合宿だ。合宿。


                 続く

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