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夏合宿前日

夏合宿前日。

暑い…… 今日はどことなく暑い。

昨日は曇りがちな天気でジメジメして蒸し暑かった。

一昨日はからっとしていたものの今年の最高気温を更新した。

一日ごとに暑さの質が違うもののどのみち暑いのには変わりない。

何をするでもなくだらだら毎日を過ごす。

夏休みだからな。これくらい当然。


コンビニでアイスを一本。

一分と持たずに溶けて行くので出てすぐに舐めることになる。

それでもドロドロ。地面に流れ落ちて行く。

あーあもうやってられない。もったいないなあ。もう一本!


うん? そう言えば希ちゃんの前でおかしな癖を披露したような……

今思い返すだけでも恥ずかしさが蘇る。顔が真っ赤に。いや青ざめる。

当然自分が食ってる姿には興奮しない。

夏本番では溶ける速度は飛躍的に。

舐めてるとそこから落ちて行くのでもう舐めていられない。かじるのだ。


ふう…… それにしても暑いな。五時を過ぎないと暑くて動けやしない。

五時を過ぎても変わらない時もたまにある。

そうなれば何てことない平凡な一日のできあがり。

嬉しいかと聞かれたらそんなことはないと答える。

長い夏休みの一日だから気にしない。

ただ別にと余裕をこいてるとすぐに夏は終わってしまう。

サマー部だけに夏特有のイベントが多いので思い出には残りやすいのだが。

それでもだらけていてはだめだよな。分かってるんだけどどうしてもつい……


「おお! 偶然だな? 」

陸の奴が偶然を装って近づいてくる。これは警戒しなければ。

一体何の用だよと口では言わない。嫌そうにしてると伝わりそうで怖い。

「どうしたシケた面してよ? 俺か? 」

そんなこと言ってないのに自分のことを話しだそうとする。

自分語りに強烈な憧れでもあるのか?

大体自信過剰。ただ人に迷惑を掛けてるだけに過ぎないのに自覚がまるでない。

変なところでスイッチが入るんだよな。要するにナルシストなんだろう。


「誰もお前のことに興味はないって」

随分酷い言い草だがこれも奴の為。放って置くと何するか分からない。

「そんなこと言うなよ! 俺たちの仲だろ? 」

うっとうしく絡んでくるのでそこだけでも改善してもらえたらなと思う。

まあ無理だろうな。これを個性と見るしかなさそう。

別に今日も暇だからつき合ってもいいがどうも何かあると勘ぐってしまう。

中学時代からの関係。同じ駅を利用するだけでなくご近所だからな。

しかもお互い家族ぐるみでつき合いが。


高校が一緒なのも驚いたが同じクラスになったのが一番驚いている。

いや…… こいつが二年に進学できた方が驚きか。俺も人のこと言えないが。

それを言うなうちの高校に入学できたのも不思議。

まあ全入だけどね。ちょっと前まではそれはレベルが高かった。

一昨年の夏にあんなことが起きなければ今でも人気の進学校だったはず。

あの失踪事件が影を落としている。


「それで何の用だ? 」

こんな暑い中どんな目的があるやら。楽しみだな。ははは……

「何だか明日が待ち遠しいんだよね」

子供じゃないんだからよ。それくらい自分で解決しろよな。

「そうそう。お前さ宿題どこまでやってる? 」

意味不明なことを言う。一体どうしたのだろう? 暑さで頭がイカレちまったか?

「はあ何を言ってるんだ? 宿題って? 」

「ほら夏休みの自由研究があるだろ? それと日記。絵日記だっけ」

まだ自分がいくつなのか分かってないらしい。

奴だけ違う世界を生きてるのだろうか?


「えっと…… そうだね。俺も全然手をつけてないんだ。

このままだと九月には間に合わないかな」

からかってみる。奴は恐らく中学と高校を間違えている。

宿題があっても読書感想文ぐらいだろう? いやこれも違うよな?

何かはあっただろうがそれは終盤の勉強会でやればいいさ。

「そうかそうか。やっぱりお前も似たようなもんだよな」

納得して帰ろうとするので引き留める。

冗談を真に受けても困る。


「そんなことより明日からの合宿の準備は終わったのか? 」

「ああ当然だろ? 合宿が終わったら自転車で日本一周を手伝ってもらうからな」

強引に仲間に加えようとする。一人だけ忙しそうで何より。

まだ諦めてなかったらしい。


自転車で日本一周。

しかも電動自転車だからな。これってありなのか?

ずっと思ってる疑問だがさすがに本人に聞くのは忍びない。

全否定してるよう。しかもそれを聞いたことでやめてしまうかもしれない。

そうなったら嫌だよな。まるで俺のせいみたいになる。


「それよりもお前あのことを告げたのか? 」

陸は馬鹿だけど意外にもしっかりしたところがある。

俺がずっと父さんのところに行きたがってるのを知っている。

ただそれも少々誤解があるんだけどね。

俺が行きたい理由は父さんと久しぶりに会いたいとかそう言うものじゃない。

父さんには悪いんでそんなこと口が裂けても言えないが。

実際は父さんの近くに住んでいるであろう女の子に会いに行こうとしてるだけ。

こんなこと言ったらまた女の尻を追いかけてと言うんだろうな。


ここまで深い話は奴にはしてない。

単純に父さんと会いたいとだけ。愚痴を零していたのを推測して。

俺が父さんの実家に行こうとしてると単純に思ってるんだろうな。

その辺のことは前から話してるからな。

奴だけだよな。うちの事情をよく知る者は。

中学時代からの仲良しだからな俺の何かを感じ取ったのかもしれないな。


                  続く

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