表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/147

他の方法

誰が何と言おうと俺たちは結ばれる。それが運命。もし結ばれないと言うなら……

でもまだだ。ミライの気持ちを確かめてから。ここは慎重に。

タイミングを見計らってあのことを提案しようと思う。

ただ二人の気持ちが揃わなければ提案しづらい。ミライがいいと言わないと。

仮にうまく行ったとしても決して楽しいものではないが。

たとえそれで不幸な最期を遂げようと構わない。

さあ選択の時だ。


「ミライカンデ? ああミライカンデって言うんだ。悪くない名前だ。

要するにミライは短縮形だ。だったら俺も本名を言うよ」

理解を示す。ずっとこのままミライのペースではいけない。

こっちから仕掛けないとどんどん時間が無くなるぞ。


「はいはい海人でしょう」

「何だ覚えていてくれたのか。そう俺の本名は海人。海はあくまであだ名さ」

「海はいいの。それよりも私の本当の名前はミライカンデだから。

覚えておいて。もし何かあった時には本名の方で。

海にだけはどうしても伝えたかった。ミモリさんにも秘密にしていたことだから」

そうかミライも俺の方が大切だと。ミモリは結局のところ相手にされてなかった。

ただの相談相手。何の感情もなく俺の言うところのお兄ちゃんでしかなかった。

残念だったねミモリさん。どうせ彼のことだからミライを狙っていたんだろうが。

どうもその気があったような。ただどこまで本気かは直接本人に聞くしかない。

まあ単なる考え過ぎのような気もする。


おいおい何だこれ?

せっかく二人きりなってもなぜかミモリのことばかりで気に喰わない。

時間がないんだぞ。余計な奴は無視無視。いくら恩人でも今は脇に置く。

それが正しい選択。俺たちだけの掛け替えのない貴重な時間。

最後の時を大切にしないでどうする? 今は余計なことを考えてはいけない。


「もう今日でお別れ。祭りが始まればもう逃げられない。嫁ぐしかない。

だから最後の最後に海に会えてよかったと思ってる。感謝してるの」

らしくなく神妙だ。笑ってくれよ。こっちまで暗くなってしまうだろ。

「何を言ってるんミライ? 俺はまだ諦めてない! 」

どうやらミライはきれいに終わらせようとしているよう。でもそうはいかない。

どこまでも粘ってやる。最後の最後まで粘ってやる。


「ありがとう海。気持ちだけでもそう言ってもらえるのは嬉しい。

でも…… もう私のことは諦めて。あなたが苦しくなるだけ

それにこれ以上関わるとあなたの命を脅かすことになるの」

どうやらまだ信用してないらしい。大丈夫そこまでバカじゃないさ。

崖を乗り越えたりしない。大体崖に近づきたいはずないだろう?

勢いで乗り越えられるならもうやってるよ。でもそれが無理なのは百も承知。


声が聞こえて姿が見えて会話もできるならきっと会える。俺たちは会えるんだ。

ただ祭りまでに会えるかと言うと難しい。ならばやはり実行するしかないか?


「ミライ…… 俺はやっぱりお前を諦めたくない。

なあ俺たちが会える方法はないのか? 」

我がままを言うつもりはない。

しかし方法がありながら可能性がありながら諦めるのは嫌だ。

「ごめんなさい。二人が出会えないかもと思ったのは最近なの。

五年間あなたのことをずっと探し続けた。

アーバンに嫁いだお姉様にもお友だちにも探すように頼んだ。

でもあなたの存在は確認できなかった。当然あなたも私を探してくれたと思う。

そう五年前は三日間だったから気にならなかった。また来年には会えるって。

でも都会に行ってもアーバンに行ってもどこに行ってもあなたの影一つなかった。

隣村で話を聞いたり時間のある限りあなたを探し回った。

でもどこにもいなかった。どこにも。誰も見てないって。

でも変でしょう? あなたは都会から来た。

都会から来て田舎者の私たちを馬鹿にしてた生意気な子だった」


おっと悪口が含まれてるぞ。当時は生意気だったガキだったから仕方ない。

それはミモリからも指摘された。うわ…… またミモリかよ。やってられない。

どうしてもミモリが俺たちの間に割って入ろうとする。

恩人とは言えまったく何て迷惑な奴だ。


俺もここには五年ぶりだがそう言えばミライが会いに来てもおかしくない訳か。

でも俺を見つけられなかった。互いに見つけられなかった。

棲む世界が違うのだから当然だよな。

お互いが近くに見えるからそんな風に錯覚する。

でもよく考えると途轍もない距離がある。


「私たちはここでしか会えない」

「待ってくれ! 森の奥の奥にある秘境に君たちの国があるんじゃないのか?

そんな風に言ってたような気がする。だから決して出会えないとは思えない。

ここでしか会えないのはただ交流がないだけ。

大体言葉が通じるのもそう言うことだろう? 昔は交流があったんじゃないの?」

噂や鶴さんやミモリに異能さんの話を総合すればそうなる。

だから無理やりにでも侵入してしまえば俺たちは出会える。きっとそうだよ。

まだ確かめてないけど。俺は異能さんと探索に行きたいと思っている。


鶴さんやミモリにしろミライにしろ確定事項ではない。

すべて憶測でモノを言っている。誰も確かめてないはずだ。

分かってるのは二つの世界が繋がっている。ただそれだけ。やはり推測。

それは俺も同じだがだからこそすべてを真に受けてはいけない。

再会の可能性が本当にまったくないのか? 仮に世界が違っても方法があれば……

洞窟を抜ける以外のもっと簡単な方法でもあれば俺たちは出会えるんだ。

世界が違っただけで諦めるのは早過ぎる。希望を捨ててはいけない。


ダメだ。もはや妄想の類だ。あと僅かでそんなことが思いつくはずがないんだ。

「それは…… あなたの聞いた噂はまったく違う! それはただのまやかし! 」

ミライが断定する。まやかし? 一体どう言うことだ?

一体ミライは何を知っているのか?


もしすべての策が不発に終わったらもう迷わずにミライに話し実行してしまおう。

今更もったいつけても仕方がないからな。


                 続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ