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裏切り

ミコが消えたと思ったら今度は新手。

「何だこんなところにいたんですか。もう逃げだしたのかと。お仲間さんは? 」

異丹治の手下が三人で囲む。

まだ紳士に振る舞ってるが後ろ手に隠した光るものを突きつけないとは限らない。

大人しくついて来るように促す手下。

絶体絶命の大ピンチ。まさかまたあの地下牢に閉じ込められるのかよ?

しかも今度は一人っきりだぜ。絶対に嫌だ。遠慮したい。


「そこを退け! 俺は用があるんだ! 」

怯まずに叫ぶ。そうすれば誰かが異変を察知して駆けつけてくれるはず。

「バカな野郎だ。ここの者はな異丹治さんには逆らえないのさ。

あえて助けに来ることはない。こっちもお前が一人になるまで見張っていた。

さあ大人しくついて来てもらおうか」

まずい。今捕まればすべてが終わる。

ここはどんな手を使ってでも切り抜けなければ。


「やめろ! やめてくれ! 宝は見つけたらやるからそれでいいだろう? 」

どうにか交渉する。

チュウシンコウを求めて奴らは本格的に動き出した。

そんな奴ら相手にただのガキが一人でどう立ち向かえと言うんだ?

交渉が決裂したと思うとゾッとする。

「そんな話信じられるか! 俺たちはそんなに甘くないぞ!

どうせ見つけたらこことオサラバして独り占めする気だろう? 」

うん? 意外にもお宝に執着してる。これってまさかうまく交渉すれば……

 

「よし。お前たちも本当はお宝が欲しいんだろ? 喉から手が出るほど。

でも情けないから一人では裏切れない。そうだろ? 」

揺さぶりを掛ける。だが反応は薄い。これは動揺してない?

「なあ頼むって! 見逃してくれたら本当にすべてやる。何なら有益な情報も」


ついに一人が反応する。

「本当か? お宝の在り処も知ってるんだな? 」

やはりお宝の力は絶大だ。このままなら奴らをコントロールできるかもしれない。

「バカ! ガキの言うことを真に受けるな! 」

「そうだ。裏切るのか? 」

一人の裏切りによってギスギスしだした。


「いいかお前らよく考えろ! とんでもないお宝だ。それを三等分だぞ。

奴はそれでいいと言ってる。そうだよな坊や? 」

最初に反応した奴は異丹治の忠実な部下などではなく単にお宝に目が眩んだだけ。

簡単に裏切るだろう。

「何度も言うが宝に興味はない。おじさんたちで分けてくれ。俺には別の用事が」

もうはっきりそう言う。誰が宝などに興味を示すかよ。

そもそもあるとも限らない宝になど興味はない。


「よし…… 俺たちと…… 」

「待て! 旦那様が…… うわあ! 」

どうやら異丹治が痺れを切らし見に来たらしい。

「お前たち裏切りよったな! 」

そう言って刀を振り回す。


「うわ旦那様誤解です…… それよりもガキが…… 」

僅かな気の緩みで地獄を見ることになった三人。

彼らもまた哀れな金の亡者。やはり旦那様の忠実なしもべではなかったらしい。

「おいこっちだ! 」

混乱に乗じてミモリが引っ張って行ってくれた。

それに奴らは気づくも異丹治の怒りが収まっていない。

この後どうなるのか心配ではあるがここはひとまず退散と行こう。


「こっちだ! 急げ! 」

仲間割れしてるので急ぐ必要はないのだがミモリはそこまで気が回っていない。

「ふうここまで来れば大丈夫だろう」

「助かったよミモリさん。危うく捕まるところだった」

「よし戻るぞ! 」

「待ってくれ! 最後に父さんに一目会ってから」

祭りの会場では会えなかった。だから早くもう一度会ってすべて話したい。

「バカ抜かせ! もう奴らは死に物狂いだ。マークだってつけてるだろうさ。

会えばお前の父さんたちまで危険な目に遭う。それにもうタイムリミットだぞ」

もう明日まで。遅くても日が暮れる頃。

夕方には彼女の姿は見えなくなると会えなくなると。

そんな風に脅かす。


「でも一度…… 」

「我がままを言うな! すべてが片付いたら会えばいいだろう?

父さんだけでなく家族も友だちも」

ミモリは急ぐようにと。

こうして再びミモリと逃避行を始める。

目的地は鶴さんの家。

どうやらミモリもすべてを話す決心をしたらしい。

俺もつき合う必要がある。


真っ暗になってから慎重に鶴さんのお宅へ。

さあそろそろすべての謎が解き明かされる頃だろう。



演舞。

「ほらミライ。そろそろ時間ですよ。もう帰りますよ」

お母様が迎えに来た。

もう諦めてると思っているのでしょうか呑気なもの。

ですが私はまだ諦めた訳ではありません。

ミモリさんが言うには海はきっと迎えに来てくれると。

でも彼は何でそんなことを知っているんだろう?


海…… 私信じていいんだよね?

明日が恐らくタイムリミットだと。

明日海に会えなければもう逃れられない。

国王様のところに嫁ぐことになる。

しかしそれは正室などではなく側室でさえない。

国王様のために作った愛人の一人に成り下がる。

そうお父様は嘆いておられた。

お母様はそれでも名誉あることだと言って憚らない。

私が認められたのだから名誉なことであると。

だからもうその国王様に嫁ぐしかない。嫌ですが仕方ないですね。


あの日。五年前に選ばれてさえいなければこんな苦しい思いをせずに済んだのに。


               続く

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