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鶴さんの推測 ミライの存在

鶴さんの推測またはいい加減な思いつきを披露。

なぜ会えないのか? なぜ姿を見せないのか? どこにいるのか?

それらを自信満々に語って見せる。


この深い森を行ったところに洞窟がある。

何でも難攻不落の洞窟らしく入った者は二度と戻って来ないとか。

それで集落では完全無欠洞窟と呼ばれることも。

ただ諸説あってその土地の支配者の名前から取ったとも。

とにかく集落の者もよそ者も決して近づいてはならないと。


洞窟研究してる地図の専門家の異能によれば洞窟を神聖化している民がいるそう。

それこそがミライたちではないかと鶴さんは考えている。

当然確証はない。民は夏の間は姿を見せるのではないかと。


あるいは夏以外を別のところで過ごして夏の間だけ戻って来てるのではないかと。

四季に合わせて移動してると推測。

遊牧民みたいな生活を繰り返している。

それはミライの一家だけでなく村単位でと言うことらしい。


ただこれは無理がある。

集落の者は誰も見てない。集落の者に気づかれずに行ったり戻ったりは不可能。

もしできるとすればまったく別の思いつきもしない隠された秘密のルート。

そんなものが存在するとは思えないが。


鶴さんとミモリは断言した。

明日になればミライの姿が見えなくなり声だけになる。

九月になればその声も聞こえなくなる。

どうもその辺が引っ掛かるんだよな。だったらこの集落にはいないことになる。

でも当然のように見えるし聞こえると言う。

そして思い出の場所で待っているとまで。もう訳が分からない。

こんなの頭の悪い俺に理解しろと言うのが無理な話。

無理だろうこんなの? 


「ははは! 慌てることはないさ。明日もまだ残されてる。

でも早い方がいい。気晴らしに集落の祭りを見学したらどうだい?

何か思い出せるかもしれないよ」

そう言うと鶴さんはミモリに耳打ち。どうやらまだ何か隠してるらしい。


愛も夢も捨て希望を失った今俺はどうすればいい? どうすれば……

ふふふ…… 悲観してる自分がいる。そんな自分が格好いいとさえ思ってくる。

まるで映画の主人公でいいと。自分に酔いだした。

当然映画なのだからハッピーエンドだ。俺は見事ミライに出会い奪い去る。

それがミライの望みでもあるのだから。

でもこれは紛れもない現実。そんな簡単に行くものか。


鶴さんと別れてミモリと無言で歩く。

鶴さんから聞くミモリの人間像ではそんなに悪そうには思えなかった。

彼は果たしてどっち側なのだろう? それは鶴さんも言えるが。

決して鶴さんは俺の行動を否定しない。ただ見守る…… 見守る……

何だこの違和感? 俺は今何かに気づいた。でもそれが何かもう覚えてない。


ミモリはいきなり足を止めると隠れるように指示する。

すぐに男がやって来た。

「おい! この辺にガキを見なかったか? 」

「いえ…… お祭りで何かありましたか? 」

ミモリは話を明後日の方向に持っていきどうにかごまかそうとする。

「いや違う…… 邪魔したな」

「ああそうだ。介郎さんが子供たちを山で見かけたと言ってたな」

介郎とはこの集落にたまに姿を見せる行商人らしい。

彼が仕入れて来る貴重な品々に奥様方が競って争うらしい。

「そうか。ありがとう。また何かあったら頼む」

こうして余計なトラブルを避けるために行動することに。

それからも無言でミモリは通す。


「どうして余計なことを? 」

まさか裏切るつもりでは? 

イマイチ信用できないミモリ。つい追及が激しくなる。

「ああお前たちがやって来たのをその介郎って奴から聞いたんだ。

だから正直に答えたまでさ。俺が助けたとは誰も思ってないからな」

あの時変装していた。

だからそれは何となく分かっていた。

ミモリ自身もこの集落に居ついたよそ者。

あたりはきついのだろう。


「おいそろそろ俺を信用しろって! 」

「あんた本当は俺を裏切る気じゃないのか? 」

ついかっとなってしまう。もし裏切る気なら逆にこの発言は危険。

その上もうこの集落には誰も味方がいなくなる。

鶴さんなら多少味方になってくれるだろうが。

しかしそれもミモリが紹介したとあれば難しい。

さあそろそろいい加減敵味方をはっきりさせたい。


「生意気言うんじゃない! だったら最初から助けてないだろう? 

一体何のためにお前らを助ける必要があるんだ? ふざけるな! 」

あまり感情を表に出さないミモリが怒りに震える。

「だって…… 例えば俺を泳がせて宝を探させるためとか…… 」

思いついただけで本気で言ってない。

何だか俺って最低な人間になってないか? 恩人を疑う?


「もうその話は後だ。さあ祭り会場の広場へ」

明日に再び行われる祭りの前にリハーサル。

昼に一回と夕方に一回。

現在演舞の中盤まで来たらしい。

「まずいよ。俺たち追われてるんだろうが」

つい弱音を吐くがこれって当然の判断。なぜ捕まるような真似を?

それともこれがミモリの最期の役目? ならばもう俺は完全に詰んだことになる。


「うるさい! 冷静にただ挨拶をすればいいんだ! 」

「でも…… 」

「いいか? 追っ手は異丹治の仲間だけ。ここの者はそこまで悪い人じゃない。

お前は人を信じる心を失ってる。それではミライも見つけられない。

会うことも不可能だ。ふふふ…… 元々無理だろうがな」

ミモリは俺を舐めてるらしい? どうせ無理だと決めつけた。

くそ! 何なんだこいつは? 協力してくれるんじゃないのか?

もう訳が分からない。


「済まん。今のは忘れてくれ。つい…言い過ぎた… 」

ミモリの表情が曇る。言ってはまずいことを言ったと後悔してるようだ。

しかし口に吐いた言葉は取り消せない。ミモリは俺を馬鹿にしたんだ。

 

                   続く

                   

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