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会いたい!

鶴さんの家。

ミライの夢から覚め改めて鶴さんから話を聞く。


ミモリも鶴さんも有益な情報を与えてくれる尊敬に値する人物だと思っている。

それこそ救世主だと疑わない。仲間は去り味方と言えるのは彼らぐらいなもの。

だからと言って彼らがすべての真実を語るとは限らない。

集落のために自分たちのために動いてる。

だからすべてをそのまま真に受けては危険だ。


鶴さんには鶴さんのミモリにはミモリの思惑があるし事情もある。

俺だってそうだ。裏切るとかそう言う単純なものじゃない。

恐らく二人は俺によくしようとしてくれている。なるべく協力しようとしている。

ただ俺が真実に近づき過ぎるのをなぜか恐れている。

どうしてなのかは聞いてもきちんと答えはしないだろう。

推測するしかないがやはり何かある。隠す理由があるんだと思う。

それは大げさに言えばとんでもない真実が眠っているとも。


まさか二人は時間切れを狙ってないよな?

混乱させ悩ませ真実から遠ざける。そしてタイムアップで終了。

次回お越しくださいとなるがもちろん俺に…… ミライに次回はない。

そのことを二人は本気で理解してるのか?

今だってミライに近づくかと思いきや遠ざかっている気も。

たかがガキ相手では人生の大ベテランの鶴さんには到底太刀打ちできない。


「ほらミモリ教えてやりな」

鶴さんは面倒だとばかりにミモリをご指名。

本当にいい加減だな。


「いいか海。前にも言った通りミライはお前を探してる。

出会ったのは五年前だったよな? 」

「うんうん」

これ以上脱線されては理解が追いつかない。

ああもうイライラするな。何で二人とも俺にきちんと伝えようとしない?

奥歯にものが挟まったような言い方。まるでかわそうとしているかのよう。

それでは伝わるものも伝わらない。


「恐らくミライはずっとお前を探してるんだろう」

「そうかもしれないけど…… 」

「なぜ今なんだ? 五年もあればいくらでも会いに行けただろう? 」

ミモリは俺がここに来たのが五年ぶりだと断定した。

それは父さんから聞いたとかではなく来てないことを知っていた。

この集落に来て派手に動き回ればどうしたって皆に知られることに。

彼らはずっと監視していた。観光客も大人も子供さえも。

罪悪感などなくそれが普通のことだとして。

監視してたからこそ言えるんだ。


「それが…… 父さんとは離婚し出て行ってから疎遠になって五年…… 」

正直にありのままに伝える。

「お前の家庭の事情は大体分かっているつもりだ。

そこまでミライに会いたければ夏でなくても。

それこそ週末に出掛けることも長い休みに会いに行くことだってできたろう? 」

そう言われたら返す言葉もない。

確かにミモリの言う通りだ。俺はなぜ今まで動かなかった?

ミライが大事ならいくらでも動けた。それこそただ会うだけなら去年の夏だって。

 

「忘れていたんだ。でも夢を見るようになって。ミライの声が頭から離れない」

「いつ頃から? 」

「中学卒業ぐらいだから一年半前からかな。

中学では離婚の影響でどうしてもミライを考えてる余裕がなくて。

母さんも俺も落ち着いてようやくミライを考えられるようになったんだ」

あれ…… もしかすると本当はミライを求めてない? 

いやそんなはずはない。うん俺はずっと求めていた。


ミモリの言う通りだ。

離婚直前のまだ幸せだった夏休みの美しい思い出をただ求めてこの集落に。

俺の気まぐれでここまで来た。でもそれがどうしたと言うんだろう?

理由なんて関係ない。どうでもいいじゃないか。

俺はただミライに会いたい。会わなければならないと本気で思っている。


「海お前…… ずっと探していたんじゃないのか? 嘘だろう? 」

ミモリは驚いている。いやそんなに驚くところか。

五年前からずっと探し思い続けた。片時も忘れなかったと言えばいいのか?

そんなの無理だ。

どうも本気度を試されているらしい。


「そんなことはどっちでもいいよ。

でもあんたが探さなかった間にミライがどこかへ行ってしまったのかも。

だから会おうとしても会えない。原因はあんたに」

「でも俺…… 」


「いいかいもう一度聞くが本名を覚えてないのか? 」

「ミライしか…… 他は何も」

「住所も? 」

「覚えてたら言うって! 」

「手掛かりは何一つ? 」

「紅心中だけ」

大きなため息を吐きを掻く鶴さん。

「それでは探しようがない。どうして少しぐらい聞き出せないんだ? 」

「だってまたすぐ会えると思ったから…… 」


そこまで話を聞いて結論を述べる。


「彼女は恐らくあらゆるところを探し回った。

でも肝心のあんたがいないんじゃどうすることも。

そしてこの集落に戻ってきた。お前の心に呼びかけたのは彼女だ。

お前がちっとも動かないから会いに来てと無理やり夢の中に。

そして夏休みに入りようやく動きだした。

彼女はお前がもう忘れてると思って無理してまで夢に入り込んだ。

痺れを切らしたんだろうよ。

やはり出会いの場所。思い出の場所で待っている気がするね」


「それで話を戻すとどうして明日がタイムリミットなのでしょう? 」

なぜ明日までなのか具体的な理由が知りたい。

「過ぎると見えなくなる。声だけが聞こえるのさ。そういうもの」

見えなくなるのは明日まで。聞こえなくなるのは来月以降。

それだって不確かなものさ。なるべく早くミライを見つけてやるんだね」

どうやら鶴さんもミモリも正確な場所は分からないらしい。

困ったぞ。何一つ手掛かりがないじゃないか。ちっとも具体的でもないし。

もう明日だと言うのに俺はどうすれば?



               続く

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