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チュウシンコウの二つの意味

鶴さんの家。

始めは歓迎ムードだったが次第に鶴さんの表情が険しくなっていく。

チュウシンコウについて尋ねるとなぜかおかしな展開に。

いつの間にか希ちゃんとキスすることに。これが覚悟らしいのだが無理あるよな。

こうして自然とキスを済ます。


へへへ…… 夢心地。希ちゃんが俺に? ああ思ってもみないこと。

もうチュウシンコウなどどうでもよくなってしまうくらい。

おっと…… 俺は何を考えてる? 希ちゃんとキスして相当舞い上がってるな。


俺たちは五年前の約束を叶えるためミライに会おうとここまでやって来た。

それなのに現を抜かしてどうする? 自分を律しないでどうする?

ああでも凄くいい気分。自分ではどうすることもできない。

希ちゃんはどう感じてるんだろう? こんな風に雑にキスしたくなかったのでは?

希ちゃんには悪いことしたかな。恥ずかしくてもう直視できない。

いくらチュウシンコウのためとは言え悪魔に魂を捧げてどうする?


「どうだい? 温かいだろ? 」

「えへへへ…… 」

「ダメだ。刺激が強すぎたか? ホラしっかりおし! 

まったくどこまでだらしないんだよ」

頬を数回張られてようやく正気を取り戻す。

「あんた本気で探す気あるのかい? そうは見えないよ」

「本気だ! 俺は愛も夢も希望も捨ててただミライのために生きたいんだ! 」

忘れかけていた強い想いを取り戻す。


「はいはい。それどうだった? 温かっただろう? 」

「いえ…… 感じる暇もなかったので…… 」

もう一度はダメらしい。もったいない。

ただ恥ずかしいのは恥ずかしい。人のいる前でキスなんて初めて。

俺たちはまだ付き合ってさえいない。


「体はどうだい? 体温を感じたろ? 」

「へへへまあ…… 」

「匂いはどうだい? 」

「それはもう最高ですよ」

「うんうんそうだろそうだろ」

何だかおかしい。こんなことさせてどうする気だ?

アンケートを取ってるのでもないしな。感想を聞いてどうする? 

覚悟とはどうつながるんだ? 

まったく鶴さんの考えが読めない。

これだと恥ずかしがる俺たちを面白がってるようにしか見えない。


ミモリを一瞥するもすぐに俯いてしまう。

なぜミモリまで反応するんだ? まさか本気で希ちゃんを狙っていたのか?

謎が謎を呼ぶ展開。おいおい冗談だろう? ミモリは相当危険な存在。


「もうそれくらいでお鶴さんも人が悪いですよ」

キスはミモリも想定外だったらしい。不快に思ってるのは間違いない。

「はいはい。若い人を困らせてもいけないしね。

意図を誤解されたくもないしね」

ミモリの一言で鶴さんは話す気になったらしい。


「チュシンコウってのは要するに隠語さ」

鶴さんが踏み込む。ついに新情報?

しかし待ってくれ。隠語はおかしい。だって俺は見たんだ。

チュウシンコウってでかでかと幕が。

しかも紅心中だとミモリが。


「隠語ですか? 詳しくお願いします」

キスの混乱で大人しくしていた希ちゃん。

「だからあんたは関わっちゃダメ。ほら大人しく隣の部屋にいるんだよ」

希ちゃんは部外者でまだ子供とあって巻き込まないようにするつもりらしい。

「海君…… 」

「悪い希ちゃん。従って欲しい」

「分かった」

元々大人しく聞き分けのある希ちゃん。引き際を弁え隣の部屋へ。


「では改めて始めようか」

充分間を取ってから語りだした。

「チュウシンコウには二つの意味がある。

一つ目はあの異端児たちが密かに探し出そうとしてるお宝のこと」

薄茶を一口。喉が渇くからと手放せないそう。


「あれって存在するの? 」

「ああするよ。宇宙人の忘れ物ってホラを吹いといたのにまだ熱心に探して。

どれだけ欲の皮が突っ張ってるんだか」

嘆く鶴さん。異丹治の悪口が出てくるあたり信憑性がある。

「それがチュウシンコウ? 」

「実際はあの当時交流のあったものの遺物さ。

金銀財宝だと思えばいい。それほどの歴史的価値がある。

それだけでなく見たことも聞いたこともないものが存在する。

あれらは実際見つけ出した時にその価値を測ればいい。

問題は見つけるか見つけないか。その手掛かりがチュウシンコウって話だね」


「まさかこのことを」

「ああ異衛門に話した。異丹治の父親で現在集落を支配する男さ」

お茶を飲みせんべいを食べる。

バリバリとまだ歯は衰えてないらしい。

「つい酔ってね。気持ちよくなって秘密を洩らしたのさ。

異丹治が目の色を変えてるけど恐らく異衛門も同じだね。

親子揃ってとんでもない欲深い者たちさ。

こんな奴らに支配されてるんだから笑っちゃうよ」

どうやら親子に悪い印象があるらしい。


「それでどうやってその宝を探すか教えてくれって顔してるな」

ミモリが口を挟む。

「何だって! お前も財宝狙いかい? 」

鶴さんはすぐに興奮する。

「待ってくださいよ。その話はあの屋敷に閉じ込められた時に聞かされただけ」

「ああそうだったね。ミモリから話は聞いたよ」

どうやら二人は昨日も会っていたらしい。

ここに連れて来ることもあらかじめ決まっていた?


ただ俺たちはまだ高校生。財宝にまったく興味がない訳ではない。

だが欲丸出しの汚い大人とは違う。

今はあるかないか分からない財宝よりもミライだ。そのために来たのだから。


                  続く

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