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湖で泳ぎたい!

集落の事情に詳しいお鶴さんに会いに湖を超えたところにある一軒家へ。

その道中でトラブル発生。

慣れない長旅で希ちゃんが足を悪くする。

どうやら靴擦れで腫れたらしい。ひとまず湖畔で休憩を取ることに。


「痛くない? 」

「応急処置してもらったから大丈夫」

ミモリの機転で悪化は免れた。

ただこれ以上歩かせる訳には行かないよな。

最悪俺が背負うことになりそう。


「あの時買った靴が…… 」

合宿前に四人で買い物した時に水着と一緒に靴も。

「そうだ。そう言えばこんな靴だったっけ…… それで水着は持ってきたの? 」

ついおかしな方向に話を進めてしまう。無意識だ。何の意図もない。

水着などどうでもいいと思ってるのが俺だ。


「もう海君! ふざけないで」

笑顔が見られる。どうやら本気で怒ってるのではないらしい。

だからってしつこく聞けば気分を害して嫌われてしまう。

もう俺には希ちゃんしかいないんだから。それだけは避けなければならない。


「いや決してそう言う意味じゃなくて…… ほら湖で泳げるかなって」

目の前に湖が広がれば誰だって入りたくもなる。

「おいおい下手な言い訳は情けないぞ海。お前は見たいだけだろ? 素直になれ」

ミモリに指摘され希ちゃんに追及されては認めるしかない。


「いや…… 俺も泳ぎたくってさ。希ちゃんも泳ごうよ? サマー部だろう? 」

どうにか言い繕う。これなら文句ないだろう?

「そうだけどこの足では無理」

そうだった。希ちゃんは足を痛めたんだった。

俺は自分のことだけを考えて希ちゃんの痛みを感じてやれなかった。

どうしてこう間抜けなのか? 興奮しておかしくなってるみたい。


「だったら俺だけでも…… 」

ここは自然に。一人で泳ぐのも空しいのでミモリを誘う。

「おい? お前は俺の話を聞いていたか? 気づかれたらまずいんだぞ。 

湖で泳いでみろ? 目立ってしょうがない。一発でバレちまう。

しかも湖には管理者がいる。我々はあくまで隠密に動く必要がある。

いくら平和そうに見えてもお前らだって経験したろう? 

それに結構深いぞ。ここはまだ足がつくが真ん中に近づくにつれ深くなっている。

あまり湖を舐めるな! 気をつけないと溺れるぞ。

お前だって一度ぐらい泳いだことが…… 」

ミモリの一言で閃く。

そうだ。俺は一度この海で泳いだことがある。五年前に少しだけ。


ミモリがまるで見て来たかのように指摘する。なぜだ?

確かに水深は深った。思ったよりも泳げなかった記憶が。

そしてミライもこの湖に興味を持っていた。

執拗に泳げるかどうか聞いていたっけ。

俺はその時も格好をつけて湖に入ったな。

これはミライが近いぞ。近づいて来た。目前に迫っている気がする。


「ちょっと何をしてるの海君? 」

「何って…… 」

いつの間にか脱いでいた。パンツにまで手を掛けたので希ちゃんに止められる。

その様子を堪え切れずに笑ってしまうミモリ。本当に困った人だな。

陸たちがいなくなってからミモリがはしゃいで仕方がない。

大人のくせにどうしようもないな。

希ちゃんに格好悪いところを見せてしまった。

これもすべてミモリがゴチャゴチャうるさいからだと他人のせいにする。


サマー部だからこの辺りのハプニングは日常的に見る光景。

大体が陸。脱ぎ散らかしたのを希ちゃんが回収することもある。

「悪い…… ついぼうっとして」

無意識に泳ごうとしていたらしい。

湖で泳げばミライについてもっと思い出せると思ったのに。

呆れる希ちゃん。


「お前変わってないな。女の子連れで来たからそこまでの未練がないかと。

俺はてっきり過去に囚われて…… おっと余計なことだったな」

ミモリは意味深なことを言うだけ言って黙ってしまった。

まさかミモリは本当に何か知ってるのか?

俺について? 俺の過去について?


「あのミモリさん俺…… 」

「さあこれ以上ここでノロノロしてたら危険だ。さあ行くぞ! 」

遮って勝手に行こうとする。

怪しいがどうもミモリが悪い奴には見えないんだよな。

俺たちを魔の手から救った救世主だから。

でも気を許してはいけない。まだ安全だとも味方だとも思ってない。

目的を果たすまでは少なくても気を許す訳にはいかない。


こうして希ちゃんに肩を貸し湖畔を歩くこと三十分。

「気持ちいいね? 」

「そう? 俺は泳ぎたくて仕方ないよ」

「もう陸君みたいなこと言って…… 」

希ちゃんにとって陸は手間と世話と迷惑が掛かる弟のような存在。

情けなくてうるさいけど放って置けない。

もちろんそれは部活での話。

だからか機嫌が悪い時にはあまりうるさい陸の話題をしたがらない。

要するに弟として見ていて恋愛対象にはなってないのだろ。

あるいは未知の生物。


あれ? そうすると俺はどんな風に思われている?

やはり恋人? 告白を受けたようなものだからな。

まあ一緒に旅をしてる仲間でいいか。

だって俺にはミライがいるし……

ここに来てまだはっきりしない。

ミモリがいてはどのみち希ちゃんとは楽しめないしな。


ミモリは保護者なのか? そう言えば前回来た時に彼と遊んだ記憶がある。

おかしいな。再会した時はまったくそんな気がしなかった。

この集落に来て徐々に思い出してきた。

そして記憶の中にも出て来た湖の影響でもっとはっきりと。

あの五年前の夏休みに俺は彼の後についてどこかへ……

そんな気がする。


「よし見えたぞ」

集落から逃れるようにひっそりと建つ一軒の家。

湖からほど近い立地。奥は森になっている。

まるで魔女のように隠れ住んでいるそう。


                   続く

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