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異能の地図

四日目早朝。

「二人っきりのところ悪いがそろそろ飯にしようぜ」

ミモリが姿を見せる。

陸たちを送り届け一仕事済ませたらしい。

その間俺は不覚にも夢の世界で彷徨っていた。


「ほら食うぞ海」

二人の仲を邪魔する困ったミモリ。本当に大人げないな。

どうも希ちゃんにちょっかい出してるみたい。油断も隙もない。

さあ切り替えて飯を食うか。


「いや…… 希ちゃんだっけ。料理が上手いんだね。この味噌汁最高だよ」

「それインスタントですから…… 」

照れつつも指摘する冷静な希ちゃん。

「でも美味いよ。本当に」

「もうミモリさんったら…… 」

ミモリの下手くそなお世辞に満更でもない希ちゃん。

やっぱり白々しくても褒めると嬉しいのかな? 女の子ってよく分からない。

それとミモリは何を考えてるんだろう? 危ない奴。

いくら救世主で恩人でも黙ってられない。


「いやいや。ははは! 」

「どうしたの海君? 」

「ううん。何でもない…… 」

いつの間にかミモリと希ちゃんが楽しそうに会話している。

自然な感じが何だかむかつくな。希ちゃんは俺のものなのに。

いや違うか。パートナーだ。今回の捜索の協力者。

希ちゃんは希ちゃん。俺が追い求めてるのはミライただ一人。

だからミモリとどうなろうが関係ない。

関係ないがやっぱり我慢できない。くそ! これ以上希ちゃんに手を出すな!


「どうしたぼうっとして? 飯が冷めちまうぞ海? 」

「二人は…… 」

「大丈夫だって。きちんと送り届けたから心配するな。ただ隣村までだけどよ。

それからは奴らの運次第。どうにか今日中にはお家に帰れるだろうさ。

追われる身でもない。集落から逃れたら追いかけてまでは来ない。

連中だって暇じゃない。それよりも残ったお前たちの方が危険だ。

警戒は怠るなよ海。絶対に単独行動をするんじゃないぞ。

明日には希ちゃんも送り届けるんだからさ」

そう言えば希ちゃんも帰るんだっけ。でも心配だ。俺一人でやっていけるか?


朝食を済まし情報交換を終えると行動開始。

今日の目標はチュウシンコウを知る人物から話を聞くこと。

「父さんたちはどうしよう? 」

「ああその件だけど…… 気分屋のアイミちゃんの我がままってことにした。

こんな田舎に嫁ぎたくないって逃げ帰ったのでお前が追い駆けたことになってる」

ミモリの作り話には相当無理があるがあの異丹治が文句を言わせない。

自分が監禁して脱走されたとは口が裂けても言えないからな。

これで父さんたちにも怪しまれずに済む。詳細は後で報告すればいいさ。

まず一つ解決。問題はその異丹治が俺たちをどう見てるかだな。

もう追い駆け回さないなら楽なんだが果たしてどうだろう?


「いいかこの地図を見ろ! 」

さすがはコテージの管理人…… ではなく不法占拠者。

この集落の大体の地図が載っている。

「いいか? 今俺たちはこの登山道入り口付近にいる。

この地図では森だが今はコテージだ。

十年以上前の地図だということが分かる。

これを作ったとされてるのは異丹治のいとこに当たる異能さんって人だ。

彼から話を聞くのも一つの手だがやはりここはまずお鶴さんに会いに行こう。

集落の歴史もチュウシンコウも恐らく秘宝についても詳しい。何でも聞くといい」

異能さんか…… 地図に精通してそうな名前だが何だか恐ろしい気もする。

異丹治のいとこでもある以上油断はできない。会うのはリスクが伴う。

ここは従うとしよう。


「お鶴さんの家はここから湖を超えたらすぐだ」

急げば三十分で。ゆっくりでも一時間あれば何とかなると。

「ねえお鶴さんとの関係は? 」

「よくしてもらってる。おすそ分けもらったり相談したり。

それ以上は聞くな。会った時のお楽しみだ」


ミモリに誘われるまま人の来ない森を抜けて湖へ。

湖を超えるには三キロは掛かるそう。地図にはその辺のことは詳しくない。

すべてはミモリの言葉。果たしてどこまで信じていいか分かったものじゃない。


大体五キロ弱の行程。一キロ十分で計算しても一時間も歩けば到着するだろうと。

生憎の曇り空。いつ雨が降ってもおかしくない。

ただ雲間から太陽の光が差し込んでいるので午後には晴れるかな?

単なる願望だが捜索には天候も左右されるので晴れると助かる。


ここは山奥なので一見涼しいように感じるが地形の関係から暑い。

特にお盆前後になるとムシムシ。だから避暑に来るような場所ではない。

まあこんな山奥では観光客も来やしないさ。

排他的な地域でもあり積極的によそ者を受け入れるようなことはしない。

よそからの移住者もミモリぐらいで彼も仕事の関係でここに来て居ついた。

イレギュラーな移住者。

その経緯を詳しく語らずに濁すところを見ると何かあったんだろうな。


「いいか。人が来たらとにかく隠れろ」

ミモリは慎重に進めとアドバイスするが人の気配などまったくない。

今この辺りに人は住んでないし皆祭りの準備に忙しくて構ってられない。

ある意味余裕とも言える。危険はないと見ていいだろう。


「痛い! 」

どうやら歩き過ぎで希ちゃんが足を痛めたらしい。

「大丈夫? 」

「気にしないで。大したことないから」

そう言って頻りに足をさする。

「ホラ見せてみろ」

ミモリが強引に靴を脱がす。

「ちょっと…… 」

「腫れてるじゃないか! ほらそこの泉で休もう」

ミモリは甲斐甲斐しく世話する。意外にも頼りになる。

伊達に田舎で何年も暮らしてきてない。


まずは泉でよく足を洗って様子を見る。

これ以上腫れるようなら医者に見せるしかないそう。

希ちゃんの話によると靴擦れで腫れたらしい。なら問題ないか。


                続く

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