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アイミの正体

夜。

「だから在学生名簿にお前の名前がないんだ」

「ふふふ…… もう本当にバカなんだから。

あるはずないでしょう? だって私アイミじゃない」

衝撃発言が飛び出す。

やはり彼女には言えない事情があるようだ。

ついにアイミの正体が判明するか?


「だったら誰だって言うんだよ? 」

「アイム…… 」

「はあ? 何だって? 」

「だから私の名前はアイム。アイミは愛称。アイムは言い辛いみたいでさ。

自己紹介の時に話したでしょう? 」

アイミはアイムらしい。だから名前が載ってない。当たり前だ。

そう言えばあの大会でそんなやり取りしたような気もする。

それっきりアイミだったからな。完全に忘れていた。

もう一度確認すれば恐らくアイムの名前も載っているだろう。

あの時は陸と二人でZERO館の調査をして…… その時に見つけたんだよな。


「ははは…… だったらアイミはミライじゃないな? 」

真実が判明した以上もうアイミを疑う必要がない。

「ふふふ…… それはどうかな」

思わせぶりのアイミはきちんと否定してくれない。まだ余地を残そうとしている。

「あなたが求めるなら私は希にもミライにもなってあげる」

重い。重過ぎるよ。何て重い発言なのだろうか?

これでは疑いが完全に晴れたとは言えない。


「分かったよアイミ。お前の気持ちは充分に理解した。もういいから寝よう」

「うん。おやすみなさい」

「おやすみ」

こうして言われるまま手を繋いで横になる。

ぎっちり繋がれた手が離れるまでいつまでもいつまでも。


うん? ここはどこだ?

聞こえないよ? どうしたの? もっと大きな声でお願い!

うーん。ちっとも聞こえない。これはもう近づくしかないな。

「ダメ! これ以上近づいてはダメ! 」

少女の声。恐らくミライだろうが確証はない。

どうして? 君の声が届かないだろう? そっちに行くよう。

「いいから! それ以上は近寄ってはダメ! お願い従って! 」

懇願する正体不明の少女。


お前は! あの時のミライじゃないな?

一体誰なんだよ? いつも俺を悩ますお前は誰だ? 誰なんだ? 

「ごめんなさい。私もやっぱり私。でもあなたの言うミライじゃない。

これはあなたの記憶から作られてるんだと思う」

「はあ? 思うってどう言うことだよ? ミライと君はどう違うんだ? 」 

「分からない…… でも私は過去のあなたの記憶。だから過去のミライじゃない。

それだけは理解して欲しい」

うーんちっとも理解できない。これは過去ではなく俺の中で作られた現実?

だから過去に彼女はそんなことは言わなかった。

俺が勝手に想像してそう言わせている?


それくらい当然気づいていたさ。

いや本当はそうでもないのかもしれない。

もしかしたら俺はもう一つの真実にたどり着こうとしてるのかも。

それは…… 元からミライなどいなかった。俺が寂しくて作った妄想上の女の子。


あの当時両親の仲は決していいものではなかった。

俺を放置して難しい大人の話をしていた大人たち。

決して面白くないし何を言ってるのかも分からずに飽きてしまう。

だから俺は外へ。


昔は田舎で一人遊びをするのも不思議ではない。同世代の子はまずいなかった。

いたのは面倒見てくれる隣のおじさんかよく知らないお兄さん。

それでも付き合って一時間ですぐに用を思い出して行ってしまった。

そんな五年前の夏の日。


随分掛かったがようやく思い出してきた。

もしかするとミライは妄想やイマジナリーフレンドでなく別の誰かだったのかも。

この地に戻って三日。思い出しつつある。


さあ考えもまとまったことだし起きるか。どうやら朝食のようだし。

「海君おはよう」

笑顔の希ちゃんが起こしに来てくれた。

今日は自分で作ったのだとか。ははは…… これこそ夢に違いない。

「おいアイミ! 陸! さあ起きるぞ」

そう言ったものの二人の姿はどこにも見当たらない。

「あれ…… 二人は? 」

握った手の温もりはもう完全に失われている。

なぜかその瞬間とんでもない喪失感に襲われる。

なぜ陸もアイミもいないんだ?


「ごめんね。二人は朝早くに出て行ったよ」

「俺を起こさずに? 」

「アイミがそうしようって言うから。陸君はどっちでも構わないよって」

希ちゃんは明るい。どうしたのだろう? 仲間がいなくなって寂しくはないのか?

俺はすごく寂しい。騒がしい二人がいなくなればそれだけ辛いものだ。

それは希ちゃんだって同じ気持ちのはずなのに嬉しそう。


「どうしたの海君? 寂しい? 私はようやく二人っきりになれて嬉しい」

率直な感想を述べられても今は何て返せばいいのか?

「ありがとう。でも…… 」

「それにあなたは元々一人で行こうとしていたでしょう? だから問題ない」

希ちゃんはクールだ。この後のことを考えればとても心強いパートナー。

「ありがとう。そうだね。さあ朝食にしようか」

こうして二人っきりを楽しむことにした。


「二人っきりだと思ってるところ悪いがそろそろ飯にしようぜ」

ミモリが薄笑いを浮かべ遠慮する振りをして部屋へ。

二人を送り届けた後らしい。


そうか二人はもう行ったか。最後の挨拶ぐらいきちんとしておきたかったな。

おっと今は後悔してる場合じゃない。ミライの居所を見つけなくては。


                  続く

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