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別れの夜に 超積極的なアイミ

四人仲良く最後の晩を過ごす。

明日になれば陸とアイミは集落の外へ。安全圏へ逃れる。

俺たちはここに残ってミライ探しを続行する。

突然の別れとは言えこれはもう決めたこと。

ミモリもその方がいいと同意してくれた。

それで単純な陸はどうにでもなった。

だがまだアイミは納得してない様子。


二人がすぐ隣で寝てるのにお構いなし。何て大胆なんだろうか?

いびきを掻いてる陸は別として大人しい希ちゃんは絶対起きてるって。

「ほら触って。私を触って。気持ちいいでしょう? 」

おかしい。アイミの心が乱れている。どうしたんだろう?

「ほら遠慮しないで。もう我慢できない! 」

もうこいつは何を言ってるんだ? 訳が分からない。

「気持ちいいはずあるか! 早く離れろって! 」

侵入者を押し返す。


「もう強情なんだから。だったらこうしようよ。まずは私から。続けて希が」

そんなこと言ってどうせ交代するつもりはないんだろう?

そもそも希ちゃんがそんなおかしな会に参加するかよ。

「いい加減にしろ! これ以上困らせるなって」

何を考えてるんだろう? 普通立場が逆だろう? 俺が触ってアイミが嫌がる。

それが一般的なはずなのに。もちろん俺にはそんな度胸も気持ちもない。

ただ非日常世界に身を置き続けて心が弱ってるのは事実。

それを肌の温もりで満たそうとしている。でもそれがアイミ? 

できるなら希ちゃんがいいなとはさすがに口が裂けても言えない。

 

「だったら手だけでも…… ねえお願い! 」

手を握って寝たいらしいがその言い方だとどうもな……

まあここまで言われては断れない。俺だって男だ。あれ…… これも変か?

どうもアイミにペースを乱されてるんだよな。

「分かったよ。いいよ。それぐらい」

「ふふふ…… やっぱり私の体を求めていた。もう仕方ないんだからダーリンは」


どうもいつものアイミとは違う。何かが決定的に違う。凄く甘えて来る。

しかも何だか余裕がないんだよな。

いつもならふざけつつ隙を突いて悪さしようとするのに。

我がままと言うか一途と言うか。


そんな彼女に甘えられるとどんな男だって。しかも今夜はかなりしつこい。

最後の夜に俺たちは結ばれるってか? ははは…… それもいいかもね。


「俺は最低な人間だぜ。たぶんお前と手を繋ぎながら他の女の夢を見るだろう。

もう俺のことは忘れた方がいい。それがアイミ自身のためだ」

格好つける。そうしないとおかしな感情が湧きそうだから。止まらなくなりそう。

俺は一体何を考えてるんだろう? 最低な男ではないか?

「ううん。それでもいい」

構わないならいいか。それじゃそろそろ手を繋いで寝るとしよう。


当然だがこんな経験初めて。一度だってしたことは……

ああ幼稚園の時に一度だけお泊り会で。俺は覚えてないがその子が話してくれた。

それ以来の手を繋いでの就寝だ。


贅沢な悩みだがそもそもアイミは俺のストーカーだった。

と言ってもそこまで重症ではない。俺が希ちゃんと話していても睨むだけ。

それよりも俺との関係を強引に結ぼうとするとんでもない女。

積極性は認めようと思う。俺はどちらかと言うと何においても消極的だからな。

陸にしろアイミにしろその点だけは優れている。だから少しだけ憧れる。

俺にないものを持ってる者は尊敬の対象だ。


「それでアイミはどう思う? 」

切り替える。せっかくだからアイミにも意見を聞くことに。

「どうって…… 来年以降かな。まだ付き合って間もないし。現実的には…… 」

どうやらもう彼女の中では俺たちは付き合ってることになってるそうだ。

恐ろしい…… 本当に危険な女だ。少しでも隙を見せると既成事実化してしまう。


「何の話だ? 」

「だから結婚でしょう? それ以外ないのに照れちゃって」

「違う! 俺が聞いたのはミモリのことだって。あの人信用できるかな? 」

「ああミモリさんね。大丈夫でしょう。助けてくれたんだから悪い人じゃない」

「そう思うか? でも何かとんでもないことを隠してる気がするんだよな」

「気のせいでしょう? たぶんそうだとしてもあなたを守ろうとしてだと思うよ」

「俺を守る? どう言うことだ? 」

「知らない。何となくそう思っただけ。ミモリってそう言う意味でしょう? 」

はっきり断定した割にはその根拠が乏しい。そして信じすぎ。

ミモリの偽名が俺たちを守るところから来てるのはどう考えても嘘くさい。

そもそも偽名を名乗る必要がない。だからこの場合本名の可能性が高い。


「確かにそうだな…… ありがとう。お陰でミモリを信じる決心がついたよ」

「何を言ってるの? そんなつまらないことよりもどこで暮らすか考えよう」

「誰の何の話? 」

「私たちの新生活に決まってるでしょう? もうはぐらかすんだから! 」

「ははは…… そろそろお喋りをやめて寝るか。二人が起きちまう」

おかしな方向に話が進む前に話を終える。

たぶん希ちゃんは起きてるだろうな。


「そうだね。私も明日遅いし。おやすみ」

「おやすみ…… 待ってくれアイミ! 最後に一つだけ教えてくれ」

出発前までは行きの電車で聞こうと思っていたこと。

でもつい聞きそびれてしまい今に至る。


「変態…… 」

「はあ? どう言うこと? 」

「思ってるほど大きくない」

ダメだ。アイミの考えてることがまったく分からない。イカレちまったか?

そもそも初めからどこか壊れていたような気もするが。


「大きさはいい。それよりも君自身を知っておきたいんだ」

あれ…… 何だか大げさになってるような気も。ただあのことが気になっただけ。

それは希ちゃんもアイミ本人も知らないこと。陸との秘密の話だ。

「嘘でしょう? ここで始めちゃう? 」

そう言って頬を赤らめると寝ている二人を確認する。


「うん。行けるかも」

「いや…… 冗談はそれくらいで。実はお前に聞いておきたいことが」

「どうぞ」

「お前は人間か? 」

「ううん。違う」

「やっぱり…… 」

「今まで黙っていたけど女神様なの」

ダメだ。ふざけてやがる。誰が女神様だよ。

あまりの悪ふざけについ怒りが。


「もう冗談でしょう? それで何が聞きたいの? 」

「アイミ。実は…… お前の名前がないんだ! 」

「はあ? 何を言ってるの? 」

「だから在学生名簿にお前の名前がないんだよ! 」

「ふふふ…… バカなんだから。あるはずないでしょう?

だって私はアイミじゃない。アイミじゃ…… 」


ついにアイミの正体が明かされる?


                続く

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