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夏休み直前

七月。

眠いな。とんでもなく眠い。

どうしたんだろう? 最近の俺はどうもやる気がない。

本を読んでいても数ページがいいところだ。

それで飽きて寝てしまう。

だって先月買った本が物凄くつまらなかったから。

どうつまらないかと言うと荒唐無稽。

格好つけるだけ格好つけて中身は薄いもの。

うーん。買うんじゃなかった。でも買ってしまってはもう遅い。

まあどうでもいいかそんなこと。

それよりもこの眠気から解放してくれる者はいないのか?


「おい寝るんじゃない! 」

伏せていると担任の佐藤先生が飛んできた。

でもつまらないし俺にはどうも答えがよく分からないんだ。

もう充分。後は寝ていたい。だって涼しくて気持ちいい。

まるで草原にいるかのように。

当然外からのそよ風も気持ちいいものだよ。

でも今は七月。エアコンに頼るのがベスト。


席は一番後ろで窓側。ここがベストポジションなんだがそれは夏以外。

だから今は暑くて暑くて仕方がない。

湿気も高くとてもそよ風程度では対応できない。

ああ早く夏休みにならないかな?

そうしたらもっとゆっくり寝ていられるのに。

こうして夢の世界へ。


「探して…… 私を探してお願い」


また同じ夢を見る。最近いつもそうだ。

こんな時にまで夢に出て文句言われても困るんですが。


うわああ! 

顔が影で見えない。素顔の見えない者が迫って来る恐怖。

俺は知らない。知らないはずなんだ…… うわああ!


「起きろ馬鹿野郎! 寝てる奴があるか! 」

容赦ない罵詈雑言を浴びる。

通常ならこの後一時間ぐらいは説教を喰らうことになる。でも……


チャイムの音で覚醒。

「ハイ終了! 後ろから答案用紙を集めて来なさい」

有無を言わせない佐藤先生。こちらから見れば鬼でしかない。

「うわちょっと! 」

「ははは! お前何をやってるんだよ? 」

陸が笑いながらからかいにやって来た。

奴は酒井陸と言って中学からの付き合い。いい奴なんだけど欠点が何個か。


昨年度新記録を樹立した。

二学期に最下位になってしまったのだ。

それはこのクラスだけでなく学年でぶっち切りの最下位。

しかも前回も前々回のテストでも最下位。これで三連覇を達成した。

それほどの逸材と言ってもいい。奴は怒りもせずに豪快に笑い流す。

奴がいなければ俺もその指定席に座る恐怖に苛まれただろう。

それこそ悪夢でしかない。


このまま行けば奴は見事四連覇達成すること間違いなし。

たとえ俺が難しくて寝ていたとしても奴は軽々と上回ってしまう。

それほどビッグな存在。決して高くも太くもないがビックなのだ。

持つべきものは自分よりも劣る親友。

おっとこれでは俺は酷い人間に思えるだろう。でもそれは違う。


「おいお前どうせまた適当に選んだんだろ? 少しは勉強しろよな」

「ははは! 今更遅いって。それよりもさ明日からどうする? 」

もうすでに今日のテストは諦めてる様子。それでいいのか? 

親友として何とかしたいが物凄くポジティブだから聞きやしない。

あと二教科残ってるんだけどな…… まあいいやどうだって。

俺が言える立場でもないしな。


「国語も算数も俺の頭では無理だって。ははは…… 」

まったくどこまでポジティブなんだこいつは? 

だがさすがに国語と算数はないだろう?

確か現代文と数学だったはず。

奴の中ではまだ切り替わってないんだろうな。でももう中学でもなく高校だぜ?

俺たちはもう高2。そろそろ真面目にやらないとまずいって。

よく進級できたよなと不思議に思う。

それどころかどうやって受かったのか疑問でしかない。

当時は何かと問題があってレベルが下がってはいたが。


翌日午後。

すべての科目を終える。

無事に期末試験を終え夏休み前の浮かれた日々を送ることに。

今が一番幸せかもしれないな。まだ夏休みに入ってない今が堪らなく好きだ。

こんな日々がずっと続けばなと思う。

あと三日に迫った夏休みが待ち遠しくて待ち遠しくて。

来て欲しいような欲しくなようなそんな感じ。


「なあ夏休みの予定はどうする? 」

「いやまだ何も…… 」

実際はもうすでに決まているんだが恥ずかしくて言い出せずにいる。

あれから五年経ったんだな。あの時はずっと夏休みが続くものだと思っていた。


「ははは! まだ何も決めてないのかよ? だったら…… 」

「悪い! それには付き合えない」

誘われる前に断る。これが結局は一番傷つけずに断る最善の方法。

まだ何も言ってないだろうと怒るが奴が何をしたいかよく分かってるつもりだ。


自転車で日本一周するのが夢だと最近。初耳だがどうも今年からの夢らしい。

そんなもの夏休みだけではどうにかなるものではない。

当然夏休みがすべてそれに充てられる。

奴はそれでいいかもしれないが俺は御免だ。

海や山や遊園地にでも誘ってくれるならいくらだって付き合うさ。

でも自転車で日本一周は嫌に決まっている。

そもそも付き合ってくれる奴なんか存在するのかよ?

 

「何だよお前。付き合い悪いな。だったらまた弟にでも頼むか」

あっさり引いてくれて助かる。でもこれは物凄く無茶な願いだと分かって欲しい。

毎年のように変な趣味に誘われても困る。もう断り方が見つからない。

そもそも電動自転車で日本一周ってアリなのか? 

都内一周ぐらいなら嫌だけど何とかまだ付き合える。

うーん。でもやっぱり面倒臭いかな。


試験を終えるとそのまま部室へ。

「おいお前たち合宿には参加しろよ! 」

部長の機嫌が悪い。

サマー部と言う夏にしか活動しない楽な部活だと勘違いし入部。

入部したはいいが人が少ないのが欠点。

俺が副部長と書記を兼任する羽目に。


サマー部では現在夏合宿について話し合っている。

さあ今年の合宿地はどこになるのかな?

どうせまた同じなんだろうな。


                  続く

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