「夜の捜査状況。この世界も雨」
その日の夜。気分転換に一度、タブレットで仮想空間にログインしました。
そこは、もう中世のヨーロッパで石畳の上を馬車が走りタキシードを着た紳士と煌びやかなドレス姿の女性が歩く世界。どうやら、仕様変更がされた様子でした。
私はマップを確認して、レストランへ向ました。
「あの、こんにちは。」
「あれ?今日も来たのかい。今日は休みかと思ったよ。」
レストランのマスターは平然とした顔で、作業を進めます。
「こちらも雨ですね。」
「あぁ、ログインした時に季節が変わっていると気分が悪くなるプレイヤーがいるからね。管理者が調整しているんだ。」
「一応、捜査の進捗や、犯罪情報の確認に来ました。」
「じゃぁ、お願いするかな。コンソールを開いてごらん。ここにメニューが出るから、色々この街の人たちと話してみるといい。リアルな世界とは違うので店の方が暇だったら外を出歩いてもいいよ。建前上はウエイトレスだが、自由に行動していいから。」
「ここにずっといなくていいんですね。」
「まぁ、大抵の事は夏美ひとりでカバーできるんだよ。この仕事は人目につくといろいろと厄介だから。」
「少しほっとしました。でもお仕事なので『営業』みたいな感じで街で聴き込みしてきます。」
「その調子で頑張ってくれればいいよ。もし危険な目に遭いそうになったら、逃げて『応援を呼ぶ』を選択するといいから。」
「わかりました。慎重に行動します、マスター。行ってきます。」
雨足が強くなりましたが、私は仕事用のスーツに着替えてレインコートを着て街へ出かけました。
その日は近くを巡回。何事もなくそのままログアウトして眠りました。