第74話 ランク1stの戦い①(リベールSide)
ホーリスはウォルグの突然の要求に怯むことなくリベールのいる位置まで移動した。
そして元々そこにいたリベールをホーム側へと下がらせた。
「ボクと勝負? それは決闘の申し込みということか?」
「決闘というほどのものではない。何も賭けはしない。ただどちらが上かはっきりさせたいだけだ」
ウォルグはリベールからカゴをもらい、道具をすべてそこにしまった。
それから弟のギレスを呼んで自分の得物を取りに行かせた。
ウォルグが使う武器は大剣。2mある彼の背丈よりも長く、幅も肩幅ほどに広い。厚みも拳ひとつぶんくらいある。
ギレスから受け取ったそれを、ウォルグは片手で軽々と振り回してから肩にのせた。
「構わないよ。ただ、条件は決めておきたい」
「条件?」
「どこまでやっていいのかと、勝敗の条件だよ。ボクの戦闘スタイルは相手の腱や急所を狙うものだから、命を奪わないにしても、ボクはキミを再起不能にしてしまう。できれば攻撃がかすりでもすれば降伏してもらいたい」
ウォルグの表情が険しくなった。さっきリベールに見せたように、眉間から鼻にかけてしわを寄せている。
「命を奪わなければ何でもアリだ! 好きなだけ俺の腱を斬ればいい。俺はおまえの腕を斬るか潰して二度と戦えない体にしてやる。降参は認めるが、その場合は二度と口出ししないと誓ってもらう。それでいいな?」
「わかった。ただ、ひとつだけ確認させてくれ」
「何だ?」
ホーリスとウォルグは会話を交わしながら並行して歩き、ギルドホームや野次馬からじゅうぶんに離れた。
これなら周囲に被害は及ばないだろう。
「キミのボクに対する敵意はどこから来ているんだ? ボクの存在がキミの最強という自負の障害になっているのか?」
ウォルグは大剣を肩から降ろした。太い柄を握る右手が震えている。
「おまえ、本気で言ってんのか? おまえがいちいち口出ししてくるからに決まってんだろうが! ムカつくエルフには肩入れするし、あそこの腑抜けの腰抜けはかばうし、とことん俺をイラつかせる!」
「よくわかった。少し申し訳ないと思っていたが、それはボクの思い上がりだったようだ。ボクはキミの横暴に対して仲間を擁護しているだけだ。己の愚行を省みないキミには、ボクも容赦はしない」
ホーリスがかつて見せたことのない殺気を放った。
ランク1st同士の殺気がぶつかり合い、空気が重くなる。
その重圧は離れた位置にいてものしかかってくる。
ギルドホームの壁際で小さくなっていたリベールは、吐き気をもよおすほど気持ちが悪くなった。
状況を見物していた数名がギルドホームの中に避難するのを見て、それに続こうと腰を浮かせた。
だが、肩に手が置かれて妨害された。
リベールがその腕をたどって見上げると、手を置いたのはディーアだとわかった。
「あ、あの……」
「あなたは見届けるべきよ。師匠は私やあなたのためにウォルグと戦うことになったのだから」
ディーアの張り詰めた表情に、リベールは何も返すことができなかった。
あきらめて体の力を抜き、尻を地につける。
「わかりました……」
リベールたちが見守るなか、ホーリスが抜剣し、ウォルグも大剣を前方に構えた。
そして、ふたりの戦いが始まった。




