第58話 世直し第1弾②
アルチェが酒のおかわりを持ってきて、ふたたび宴が盛り上がりを見せようとしたときだった。
ギルドホームの扉が開け放たれ、とある人物がひとり、ホーム内へと入ってきた。
6人中5人にとっての招かれざる客にメンバーたちはギョッとした。
「ベントちゃーん! 来たわよぉ!」
「待っていましたよ、カリナーリ」
入ってきたのはバーキングのギルドマスター、カリナーリ・アルテだった。
小型GESをくらって植物並みに動けなくなっていた彼だが、数時間ほど休んですっかり回復していた。
「すみません。彼と話をするので、ちょっと隣の席に移りますね」
ベントはそう言って席を立った。
カリナーリを呼んだのはベントだった。
残された5人は引き続き盛り上がれるはずもなく、静かにふたりの会話に聞き耳を立てているようだった。
「で、話って何なの? ボクちん、三大ギルド・バーキングのギルドマスターだから忙しいのよねぇ」
「私があなたに出した指示を覚えているかの確認です。あなたは小型GESをくらった状態でしたからね」
「ちゃんと覚えているわよ」
ベントがカリナーリに出した指示は、以下の4点について、バーキングの勇士にしっかり教育と監督をすること。
1. バーキングのなわばりを主張しないこと。
2. 勇士、領民を問わず、人に厄介な絡み方をしないこと。
3. 困っている人がいれば積極的に助けること。
4. 態度よく真面目にギルドの依頼をこなすこと。
ベントはカリナーリがそれらを覚えていることを確認した。
「必要に応じて項目は増やします」
「はいはい」
カリナーリはふて腐れた態度で聞いている。
態度が態度ではあるが、彼が他人の言うことをおとなしく聞いているその姿に、グイルたちが目を見開いて口をあんぐりと開けていた。
「それからカリナーリ、あなたに対する指示も出します」
「え、何かしら?」
カリナーリはほお杖をついているが、視線はちゃんとベントに向けている。
「バーキングに来たランク2ndから4th向けの依頼はプログレスに回してください。いらないやつは返すので。あと、プログレスのランク5th向けの依頼はバーキングに回すので、それらをきっちりとこなしてください」
「えーっ? ボクちんたちに雑用を押し付けるのぉ?」
カリナーリが拳を握ってテーブルを叩く。
彼の目は怒っている。
しかし、彼に向かい合うベントは目を冷たく細めた。
そして冷ややかにすごむ。
「そうですよ。やりなさい」
「はい、ボス……」
カリナーリは委縮した。
まるでアルチェとフォルマンの板挟みに遭ったクレムのように肩をしぼませている。
「もう帰っていいですよ。あなたには特別にエアバイク改を1台差し上げるので、呼んだらすぐ私の元に来るようにしてください」
「呼んだら?」
「メール機能を付けたエアバイク改を社員に届けさせます。メールは頻繁に確認するようにしてくださいね」
カリナーリは渋面を作り、しぼりカスのような声を返した。
「はい、ボス……。ボクちんだって忙しいのに……」
「暇な身分にしてあげましょうか?」
「……いえ、結構です」
カリナーリは帰っていった。
プログレス内を気まずい雰囲気が流れていたが、ベントがニコッとほほえみかけると、5人は半ば強引にテンションを上げて宴を盛り上げた。
その日、プログレスには勇士たちの楽しそうな声が絶えなかった。
(第1章 完)
読者の皆様、本作をお読みいただきありがとうございます。
これにて第1章は完結です。ここまでいかがだったでしょうか?
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第2章ではアルチェとホーリスが大活躍します。もちろんベントも大暴れ!
引き続き次章もお楽しみください(*ᴗˬᴗ)⁾⁾




