表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第1章 狂科学者ベントとギルド・プログレスの躍進

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/178

第39話 ジオスの対策、ベントの備え②

 ベントが取り出したのは黒いスプレー缶だった。

 それは催涙隷属スプレー。通称、催隷スプレーである。


 先に思い出したらしいグイルが慌ててギルドホームの扉を閉めた。


「それは……」


 ベントの見立てでは、ジオスはここのところずっと妙な渇望感にさいなまれてイライラしていたはずである。


 もしかしたらジオスはベントへの恨みがその原因だと思っていたかもしれないが、いまのベントの言葉で渇望感の正体、その真実を知っただろう。自分を襲う渇望感は中毒症状だったのだと。


「ベント……。テメェ、テメェ、テメェエエエエエッ!」


 ジオスの怒りのボルテージが振りきれているが、そんなことはおかまいなしに、ベントはスプレーを噴射した。


 上空から赤い粒子が広範囲に降り注ぐ。


 ジオスもほかのバーキングの勇士も上空を見上げるしかない。

 しかし、彼らは静かだった。苦しみだす様子はない。


 しだいに笑い声が聞こえてくる。バーキングの勇士たちが笑っている。ベントを嘲笑している。


 ジオスが上空のベントに向かって声を張りあげた。


「その赤いやつも効かねーぞ! ヘルムの下にマスクを着けているからな! おまえの小細工なんかすべて対策済みだ。もうおまえに打つ手はねぇ。さっさと降りてこい。どうせそのうちエネルギーが切れて降りてくるんだろ。だったらいますぐ降りてこい! ぶち殺してやるからよぉ!」


 ベントはスプレー缶を持つ手とは反対側の手をポケットに突っ込んで何かを取り出した。


 それもジオスには見覚えがあるはずのもの。撃音波銃である。


 フルヘルムで対策しているので彼にとっては脅威ではない。

 無警戒に叫び散らす様からして、ベントが打つ手がなくてヤケクソになっているとでも思っているのだろう。


「ジオス、原理も知らずに対策だなんで滑稽(こっけい)ですよ。この赤い粒子は空気中に長く滞留せず早く落下するように凝集させています。だからこの凝集体を超音波で崩してやると、より小さな粒子となって大気中に拡散します。その小さい粒子はよほど精密なフィルターでなければ防げませんよ」


 ベントが波銃のトリガーを引いた。


 その瞬間、赤い粒子の雨は赤い霧となってバーキングの勇士がいる一帯を包み込んだ。


「ぐわああああああっ!」


 バーキングの勇士たちが地面に転げてもがき苦しみだした。


 ジオスも例外ではない。フルヘルムを脱ぎ捨て、両手で顔を押さえてのたうち回っている。


 ベントはひたすら上空からスプレーを噴射しては超音波を発射する。


 光の粉をふりまく天使のように、緑色の勇士たちの頭上を飛び回っている。


 だがその実態は赤い薬物を散布するマッドサイエンティストである。


 もっとも、ベント本人はいまの自分をマッドサイエンティストなどとは思っていない。

 ベントは粛々と目の前の問題に対処しているだけであり、自分の科学的興味で人体実験をしているわけではない。


「ぎゃあああああっ!」


「やめろぉおおお! やめてくれぇえええええ!」


「ああああああああああ!」


 赤い霧雨(きりさめ)が無慈悲に降り注ぎ、地上は阿鼻叫喚の地獄絵図になっている。


 バーキングの勇士はもう誰も立っていない。

 うめき声をあげてもがいている者もいれば、地面に丸くなって固まっている者もいる。いずれも両手で顔を覆っている。


 ベントは風圧で赤い霧を押しのけながら地上に降りると、倒れているジオスの横まできて屈んだ。


 ジオスが手を開いてベントを見上げた瞬間、ベントがジオスのあごをつかみ、開いた口に白い錠剤を入れた。


「さあ、これを飲んでください」


 ほんのり甘い香りがするそれを、ジオスは解毒薬のたぐいと思ったか、素直に飲み込んだ。


 なぜ敵に塩を送るような真似をしているのか。もう決着がついたと思って敵に情けをかけているのか。

 そんなことを考えていそうなマヌケ面に、ベントは顔を寄せておごそかに言った。


「今後、私のことは社長と呼びなさい」


「はい……」


 いまのジオスにはバーキングのギルドマスターという絶対服従のボスがいる。


 その服従すべきボスが、たったいま増えた。

 父親みたいな絶対的存在がジオスの目の前にいる。


「何を……飲ませた……?」


「なんであなたひとりに説明しなければいけないんですか。あとで全員に説明するので黙って待っていなさい」


「はい……」


 ベントはジオスにしたのと同じように、地面に転がるバーキングの勇士たちに白い錠剤を飲ませて回った。


 ひとり残らず、きっちり数えて全員に飲ませた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ