第6話:「カラオケは青春の音がする!?」
恋バナって、どうしてあんなに盛り上がるんでしょう。
経験がなくても、聞いてるだけでなんだかドキドキ。
今回は、ことはたちがカラオケで「恋の話」をしようと試みます……が、
そう簡単に乙女トークが展開されるわけもなく!?
恋より先にマイクを握ってしまう彼女たちの、
にぎやかでちょっと空回りな放課後、どうぞお楽しみください。
「いぇーい! 今日は歌いまくるぞーっ!」
ことはがテンションMAXで手を上げる。場所はカラオケボックスの一室。
メンバーはことは、しおん、みゆき、そしてりな先輩。まさかの学年を超えたカラオケ大会である。
「えっ、なにこのテンション……音程合わせられるのか心配なんだけど」
しおんが苦笑いしながらリモコンを握る。
「ことは、さっそく予約してるけど……この曲ってボーカル入ってるやつじゃん」
「いいのいいの! ボーカルと一緒に歌えば上手く聞こえる気がするでしょ?」
「気がするだけで、実際そうはならないんだよねえ」
みゆきが呆れたように言うが、もう遅い。曲が流れ始めた。
──♪恋のミラクル☆トルネード──
「やっほぉおぉぉいッ!!!」
ことは、叫ぶように歌い出す。マイクの性能が悲鳴を上げている。
「おぉい! ハモりじゃなくて、単に叫んでるだけじゃん!」
「こ、鼓膜がっ……!!」
しおんは耳を押さえ、りな先輩はドリンクバーに避難。
しかし、みゆきはまさかの手拍子でノリノリである。
「いいよいいよー! テンションだけで勝負してこー!」
「この人たち、ほんとに同じ学校の生徒か……?」
やがて一通り騒いだあと、しおんが真面目な顔で言った。
「ねえ、せっかくだし“あの話”してみる?」
「“あの話”って……恋バナか!」
ことはがぴょんと反応する。
「いや、もう“あの話”って言い方が完全に秘密結社みたいになってるから」
りな先輩が呆れたように座席に戻ってきた。
「で? みんな好きな人とかいるの?」
その瞬間、空気がビミョ〜に変わる。
「……ないです(即答)」
「ワタシも……特に(うつむき)」
「え、りな先輩は?!」
「なんで私に振るの!? まぁ、いないけどね! 今のところ!」
「おぉ、全滅!!」
みゆきが感動したように拍手した。
「これはこれで貴重な瞬間だよね。恋バナしたくても、そもそも材料がない会」
「恋バナ未遂2連続、開催!」
そんな感じで、女子4人は恋の話で盛り上がる(というか滑る)カラオケタイムを全力で楽しんだ。
恋の気配はまだ遠くて、歌声はちょっとズレてる。
でも、笑い声だけは完璧にハモっていた。
エピローグ:
「なんか、歌って、叫んで、結局恋バナ失敗だったけどさ」
「うん。楽しかったね」
カラオケを出た帰り道、ことはとしおんは並んで歩く。
街灯がふたりの影を並べて伸ばしていた。
「……なんかこういうのも、青春って感じするね」
「恋より先に友情があるって、わたしたちらしいけどね」
そう言って、ふたりはまた笑った。
読んでくださってありがとうございました!
今回もまた「恋バナ未遂」な展開となりました(笑)
でも、恋の話がうまくできなくたって、みんなで笑っていられる時間こそが、
今しかない“青春”なんじゃないかなと思って描きました。
叫ぶように歌い、叫ぶように笑い、そしてちょっとだけ恥ずかしがる。
そんな彼女たちのぎこちないけどキラキラした日常が、
少しでもあなたの心に残っていたら嬉しいです。
次回もどうぞお楽しみに!