第49話「さくらと、黒歴史ノートの逆襲」
さくらの机の奥底に眠っていたのは、誰も知らなかった――いや、誰にも知られたくなかった**「黒歴史ノート」**だった!?
封印された中二病時代のポエムと設定資料集。
しかし、それがひょんなことから、まさかの「全校公開危機」へと発展!?
さくら vs ことは・くるみ・みゆきの“暴露防止大作戦”、今こそ発動!
果たして黒歴史は守れるのか、それとも全てがバレてしまうのか――!
昼休み、教室の隅で静かに震えているさくらを、ことはが見つけた。
「さくら? どうしたの? 顔が“テスト返却されたとき”みたいになってるよ?」
「……終わった。私の、人生が、終わった」
ことはとくるみとみゆきの3人はすぐさま集結。こういうときの団結力はやたら強い。
「何があったの? まさか、ラーメンにアイス落としたとか?」
「それ私の悲劇と混ざってるからね!? 違うよ!!」
さくらは机に突っ伏したまま、声を絞り出す。
「……黒歴史ノート、見つかったの」
一同、凍りつく。
「中学入ってすぐに書いてた、自作小説とポエムと中二設定……それをまとめた“真・漆黒ノート”が……机の奥にあったの……」
「うわぁ、それは……すごい爆弾だね」
「タイトルからしてもう痛々しいね……」
さくらは、目を閉じた。
「しかもさ、それを……掃除当番の後輩男子が、拾ったの……“これ、先輩のですか?”って言って……!」
静まりかえる4人。
「で、どうしたの!?」とくるみが震えながら聞くと、さくらは机に頭を打ちつける。
「思わず“それ、違うよ! 私、そんな黒い趣味ないし!!”って叫んじゃった……!!」
「余計あやしい!!」
「そっちのほうが深みにハマってるよ!!」
その後、後輩男子は「でも“桜華の剣姫・サクラ=ミスティア”って書いてあったんですけど……」と真顔で返してきたという。
「うぅぅぅぅ……! どうすればいいのぉぉぉ……!!」
「……よし。作戦会議を開こう」
ことはが真剣な目をする。
それを見て、くるみとみゆきも立ち上がる。
「これまで何度バカな事件を乗り越えてきたと思ってるのよ、私たち」
「中二ノートくらい、逆に武器にしちゃえばいいのよ!」
「でも……どうやって?」
3人は顔を見合わせ、そして同時にニヤリと笑った。
――放課後、校庭の片隅。
なぜか学ラン姿のくるみが、後輩男子の前に立つ。
「我が名は“漆黒の守護者”クロミ=ナイトメア。貴様が拾ったノートは、禁断の封印書。サクラ=ミスティアの魂を封じし伝説の書だ……」
「え……ええっ!?」
そこへ現れたさくら、今度は自分から堂々と。
「そう、わたしこそが……剣と詩の記憶を持つ者、“サクラ=ミスティア”。でもそれは……封印された運命なの」
後輩男子、ぽかーん。
「そのノートを読んだということは、あなたも選ばれし者……!」
「うわっ、なんか変なの始まった!?」
その場は騒然としたが、最後は笑いに包まれた。
後輩男子も「なんかすごいですね、先輩……」と苦笑しながらも、ノートをそっと返してくれた。
「あぁ……助かった……」
「っていうか、あれで火に油を注いでない?」
「いや、もう開き直ったほうが勝ちだよ」
さくらはノートを胸に抱きながら、照れ笑いを浮かべた。
「でも……中学の最後に、こんな伝説残すとは思わなかった……」
「バカの伝説、じゃなくて?」
「そっちのほうが私たちらしいかもね」
夕暮れの教室。
4人はまたひとつ、忘れられないバカ騒ぎを記録に刻んだのだった。
エピローグ:
放課後の教室。
机の中に再び封印された「黒歴史ノート」を、さくらはそっと見つめる。
「……やっぱ、燃やしとけばよかったかも」
「ダメだよ、あれは伝説なんだから!」
くるみが満面の笑みで言う。
「ていうか、タイトルが“漆黒の断罪詩”って何よ?」
ことはが笑いながら突っ込むと、みゆきも頷いた。
「“我が魂は深淵に囚われし刻より解き放たれん”……これはもう永久保存版でしょ?」
「お願い、やめてぇええええ!!」
笑い声が響く教室。
さくらの頬はほんのり赤くなっているけど、どこか楽しそうだった。
それは――過去の自分を笑い飛ばせるようになった証。
そして、バカなことを全力で楽しんでくれる仲間がいるという証。
今日も平和で、ちょっとバカで、最高に幸せな放課後だった。
今回のお話は、さくらの過去にちょっとだけ触れてみました。
青春には誰にも「黒歴史」ってあるものですが、それを笑って語れるようになるのが、きっと成長なんだろうな、と思います。
それにしても、くるみたちが絶妙に容赦ない(笑)。
友情って、遠慮がないからこそ心地よいのかもしれませんね。
次回はいよいよ最終話。最後まで笑って見届けてください!




